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第四章
救いの手
しおりを挟む次の日、ゾランと一緒にインタラス国の王都へ行く事にする。
しかし、空間魔法は俺以外でも移動する事ができるのか?
それを試す為にも、ゾランが必要だ。
インタラス国の王都コブラル。
城壁が10m程あり、城の周りには水路がある。
城に入るのは架け橋を渡るのだが、夜になるとこの架け橋は上げられ、出入りが出来ないようになっている。
入るのも、身分証明書が必要なので、俺はギルドカードを見せていたな。
そこまで思い浮かべると、目の前が歪みだした。
それにはゾランが驚いた。
俺の後に続くように言うと、何も言わずに頷いてついてきた。
気づくとそこは、王都コブラルの城壁の外だった。
俺とゾランは空間移動ができたのだ。
門の前には、長い行列が出来ていた。
入るのに暫くかかりそうだな、と思っていた時、目の前が突然光りだす。
この現象には覚えがある。
光が消えると、そこにはルキスがいた。
「ルキス、どうした?」
ルキスが俺の前に現れるのは、アシュリーの時以外では、幼かった頃以来だった。
ルキスが困った顔をして、俺に助けを求めに来たのだ。
「アシュリーが大変なの!お願い!あの娘を助けて!」
「アシュリーはどこにいる?!」
そう言うと、ルキスは俺の頭を両手で抱える様にして、それから自分の額を俺の額にそっとつけてきた。
ルキスの頭の中から、街道の映像が俺の頭の中に流れてくる。
その街道を思い浮かべていると、空間が歪みだした。
すぐにその歪みに入っていく。
それにゾランも続いた。
歪みを抜けると、街道があった。
そこにはアシュリーが肩から大量の血を流し倒れていた。
「アシュリー!!」
すぐに駆け寄って彼女を抱える。
「ディルク!何でいるんだ!?」
「そんな事はどうでもいい!アシュリーは何故こうなった?!」
「盗賊に襲われてた馬車を助けに行ったんだ!でも、一人凄い強いヤツがいてさ、アッシュに氷の矢をあてたんだ!」
「分かった!」
俺はアシュリーを抱え上げ、森の方へと移動した。
それから、左肩の出血を抑えるべく、手を当てる。
少しずつ、少しずつ、アシュリーの出血は止まっていく。
「アッシュは、自分にも回復魔法が発動してるから、そのうち良くなるって言ってたぞ?!」
「そうか!しかし、この出血量では、回復が追い付かないかも知れない!」
続けて手を当てる。
視界が揺れてグラグラしてきた。
それでも構わずに手を当てる。
血が失われて行く感覚がして、異常に体が寒く感じる。
「リドディルク様、もう止めて下さい!」
「まだ大丈夫だ。」
「ディルク!なんか血がでてるぞ?!」
「リドディルク様!もうダメです!」
気付くと俺はゾランに離されていた。
俺の口と目から、血が流れていたのを見て、レクスも慌てた表情をしていた。
「まだ……大丈夫だ………」
「ディルク!ディルクの方が危なくなってるぞ!もうやめろよ!」
「リドディルク様!もう大丈夫な筈です!やめて下さい!」
でも、アシュリーはまだ目覚めないんだ。
アシュリーがこのまま目覚めなかったら……
そう思うと、俺はアシュリーから離れる事が出来なかった。
ゾランの手を払い、再びアシュリーの元に行く。
それからそっと抱き締めて、アシュリーの頬を撫でる。
静かにアシュリーの優しい気持ちが流れてきた。
良かった……
「ディナ!」
ルキスがディナを呼ぶ。
ディナが空間に歪みを作ってやって来た。
「どうしたのかしら?」
「ディルクが大変よ!彼を家まで返してあげて!」
「大丈夫なのかしら?!こんなになって!」
「リドディルク様!しっかりして下さい!」
「…ゾラン………」
「リドディルク様!私が分かりますか?!」
「アシュリーを……たの………」
「ディナ!お願い!」
「分かったわ。」
薄れて行く意識の中で……
俺はアシュリーの無事をただ祈っていた……
そう思って そのまま
俺の意識は暗闇に落ちて行った………
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