慟哭の時

レクフル

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第四章

憂患

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朝食が済むと、ゾランが片付けを手早く済ませる。

「もう大丈夫そうですね。では、私は帰らせて頂きます。」

「ありがとう。本当に助かった。貴方の御主人にはどうお礼をすれば良いのか……」

「貴方が元気になられる事が、あの方へのお礼となる筈です。」

「でもそれでは……」

「大丈夫です。あとは私が何とか致しますので。では。」

言うなり、彼は素早く去って行った。

急いでたんだろうか?


暫くすると、レクスが姿を現した。


「レクス!どこに行ってたんだ?」

「アッシュ!大丈夫なのか?!」

「あぁ、大丈夫だ。まだ肩は動かし辛いが、歩くのには支障がない。」

「でも、いっぱい血が流れていたから、今日はゆっくりした方がいいと思うぞ!」

「ありがとう、レクス。でも、王都でディルクが待ってるんだ。早く行かないと……」

「ディルクはっ!……王都にはいないと…思う……」

「え?なぜ?」

「え?あ、その、そう、思っただけだ……」

レクスが下を向いて、言いにくそうに唇を噛んでいる。

「何か…あったのか?ディルクに…?」

バッと顔を上げて

「な、なにもないぞ!ディルクは大丈夫だ!」

「レクス…何を隠している……?」

「な、何も隠してないぞ!ほら、アッシュはもう少し休んでろよ!」

「レクスっ!」

思わず怒鳴ってしまった。

その声にビクッとして、レクスの体がとまる。

「頼む…何があったか、教えてくれないか?」

「ディルクが……アッシュを助けてくれたんだ……でもっ、アッシュの傷が治っていったらっ、ディルクが血をいっぱい出して!た、倒れちゃったんだっ!」

涙を流しながら、レクスは言った。

「何?それはどういう事なんだ?!」

「分かんないっ!俺も、何でこうなるのかっ!」

「何でディルクはここに来れた?!」

「ルキスが!つ、連れてきたっ!」

「……っ!ルキス!」


辺りが光輝いて、ルキスが姿を現した。


「アシュリー、体は大丈夫ですか?」

「レクスから話を聞いた。どうなったんだ?!」

「…レクス、話してしまったんですね。全く……!」

「ディルクはどうなったんだ!?」

「アシュリー、大丈夫です。彼は今、眠っています。」

「ディルクは、助かるの?!」

「恐らく、大丈夫かと……」

「何でこうなった?!」


それから、私が気を失っている間の事をルキスから聞いた。


「あの子は昔からそうなんです。他の人の悪い部分を自分の体に受け入れて、その人の体を治癒させる事が出来るんです。でも、その負担がディルクの体に重くのし掛かるんです。なのに、ディルクは傷付いた人を放っておけないんですよ。」

聞いてて涙が溢れて来た。

「ディルクに助けを求めた私ですが、まさかあんなに貴女から離れないなんて……」

「私の傷が…ディルクに……私は回復していけるのに…!」

「それでも、貴女も危険な状態だったんですよ?回復魔法では追い付かない位に…自分の体には、直接回復魔法は使えませんからね……」

「ディルクを……回復させたい。」

「それは無理でしょうね。」

「なぜだ?!私はかなり高度の回復魔法を使えるぞ!」

「ディルクに回復魔法は効かないんです。何故かは分かりませんが…」

「なんで!?」

「ディルクがそう言った理由で意識不明になった時、ディルクの父親が聖女に回復させようと試みたのですが、効かなかったんです。」

「じゃあ!どうすればっ…!」

「アシュリー、大丈夫です。ずっとそうやって、ディルクはまた元気になってきたんです。ディルクの回復力を信じましょう?」


ディルクを想うと、涙が止めどなく溢れてくる。


助けて貰ってばかりいるのに、私が助けてあげることが出来ないなんて…!


私はただひたすら、ディルクに貰った首飾りの石を握りしめる事しか出来なかった……








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