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第四章
心の治療
しおりを挟む歪みを抜けて、会場前まで戻る。
パーティーをしていた者達にも、オークション会場での討伐が知れ渡っており、会場前は人だかりでいっぱいだった。
国からも兵士がやって来て、『闇夜の明星』の組員達を連行して行っている。
冒険者達に助け出された人達が泣きながら皆でかたまっていた。
恐怖で泣いている子供の側まで行って、
「大丈夫だよ。」
そう言って頭を撫でると、涙が止まっていく。
体の傷は治っても、心の傷はなかなか治らない。
その心の傷を取り去る事ができるのは、今知る限りでは俺だけだ。
これは、聖女にも出来ない事だ。
拐われて日が浅い子には、闇魔法で記憶を消す事でトラウマにならない様にも出来るが、長く囚われていた人の場合、俺の闇魔法では対応できない。
一人一人、そうやって心に出来た傷を癒すように、恐怖を取り除いていく。
冒険者達は、俺が手助けしたのを見ていた事もあり、何をしているのか不思議がっていたが、何も言わずにただ見ているだけだった。
何故なら、俺と接触した人達は元気を取り戻して行くのだから、口を出す必要がなかったのだ。
やっと最後の一人の恐怖を取り除いたところで、意識を失いかける。
「リドディルク様!」
すかさずゾランが支えに来て、倒れずにすんだ。
「なぜいつもそんな無理ばかり!」
心配そうな顔をしながら、ゾランが俺を怒っている。
「恐怖の経験は下手をすれば一生残る……だが……俺なら数日で治まる…比べるまでもない……」
言ってるうちに、グラグラと視界が揺れる……
すぐに宿屋の部屋まで帰ると、ベッドに倒れる様に突っ伏した。
恐怖の感情が俺の中で渦を巻いて、体を蝕む様に広がっていく。
「リドディルク様!大丈夫ですか?!しっかりして下さい!」
呼吸も絶え絶えに、
「大丈夫……だ…」
と答えるが、恐怖の感情は全身に行き渡り、それが痛みとなって返ってくる。
流れ出る冷や汗が止まらないが、暫く耐えれば良くなる筈だ。
ゾランの声が遠くなる。
タメだ、まだ倒れられない。
俺はアシュリーを助けに行かないといけないんだ。
暫く、身体中に広がった激痛に耐えて行くと、少しその痛みがひいてきた。
やっと少し、体が動かせる様になった。
「ゾラン……心配させたな……もう平気だ…」
「まだ全然大丈夫じゃありませんよ!凄く体が熱いです!お願いですからそのまま休んで下さい!」
「ゾランは…リーザの様に怒るんだ……な。」
ゾランを見て微笑む。
「そうです!母の代わりに怒ります!」
「ハハ……怖いな…」
そう言いながらも、考える事はアシュリーの事だ。
無理を言って、ゾランに支えて貰いながら体を起こし、紫の石を取り出し、それを握りしめる。
すると、紫の石が光りだした。
それを見たゾランが、俺の腕を掴む。
目の前全てが歪みだして、真っ暗になった。
その部屋から、俺とゾランの姿は消えた。
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