慟哭の時

レクフル

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第六章

とめられない想い

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夜、身体中の痛みに襲われる……

怪我をすると、完治したと思っても、暫くはこの痛みに毎夜うなされてしまう。

今日はアシュレイが一緒の部屋で眠ってるんだ。
俺のこんな姿を見たら、またアシュレイは同情してしまう……

身体中が熱を持ち、切り刻まれた痕や鞭で打たれた跡が疼き出す……
それから光の矢で貫かれた痛み……
脇腹に当たった矢の痕の……
鞭で打たれたのは怪我したばっかだから、痛みが強ぇ……


「は……あっ……ぐ………ぅっ……!」


あの時に感じた痛みが、また同じ様に襲って来て、つい声が漏れてしまう。

これは俺への戒めなんだ。

俺が殺してしまった母親の……

いくら小さくて分からなかったとは言え、自分の母親を焼き殺すなんて事……

俺を禍の子と父親は言っていたが、そう思われても、憎まれても仕方がない。
それだけの事を俺はしたんだから。

だからこんな風に苦しめられるのは、ある意味納得できる。
これは俺がした事の代償なんだ。
そう思えばこんな痛みくれぇ、いくらでも我慢してやる。

痛みに耐えていると、アシュレイが俺の傍にやって来た。
痛みに震えてしまう俺の事を心配している。

アシュレイは俺に回復魔法を施してくれる。
でも傷は既に完治してるんだ。
けれど痛みは消えない。
何故ならこれは戒めだから……

流れ出る冷や汗を拭って、熱くなった俺の身体を冷やしてくれる。
アシュレイの優しさが、俺の身体に染み渡るようにして、身体が少しずつ癒されていく……

アシュレイの手を握って

俺は安心した様に眠りについて行った……


朝方目が覚めると、俺の手を握ったまま、アシュレイはベッドに頭だけを置いて、座って眠っていた。

アシュレイを抱き抱えて、ベッドに寝かせに行く。


アシュレイが愛しい……

愛しくてたまらない……

抱き抱えたアシュレイをベッドに置いて

顔にかかった髪を手で整えて

それからそっと口づけをした……



不意に物音に気づく。

部屋の外に誰かの気配……

こんな朝早くから何だ?

ゆっくり近づいて、警戒しながら扉を開ける。

そこには誰もいなかったが、足元に俺とアシュレイの、ガルディアーノ邸にあるはずの装備類が置いてあった。

誰が何故ここに……?!

ここにある、と言うことは、ここに俺達がいることを知っている訳で、ガルディアーノ邸からこの装備類を持って来る事が出来る奴で……

俺は急いで辺りを探してみた。

まだ日が登り始めた頃だから人気も少ない。
だから人がいればすぐに気づく。
筈なのに、見渡しても誰もいなかった。

暫く様子を伺ったけれど、周りには怪しい気配はなかった。

部屋の前に置かれていた装備類を持って部屋に入ると、アシュレイは起きていた。

誰が置いたのか……

もしかすると、それはオルギアン帝国の……アイツがそうさせたかも知んねぇ。
そんな可能性があると思ったのか、アシュレイはピンクの石の首飾りを握って、幸せそうに微笑んだ。

アイツの事で……

そんな嬉しそうな……幸せそうな顔すんじゃねーよ……!

思わず俺は、アシュレイが気にしているであろうことを言っちまった。

色んな事を重ね合わせて考えれば考える程、アシュレイとアイツは兄妹なんだ……
その可能性がすげぇ高いって事は俺にだって分かる。
アシュレイが気づかない筈はない。

でもそれは、アシュレイに言っちゃいけなかったんだ……

慰めようと……抱き寄せようとしたらアシュレイが俺を突き飛ばして、部屋から走って出ていってしまった。

俺もアシュレイの後を追おうとしたけれど、アシュレイは空間移動で歪みに消えて行った。

こうなっては俺に追い付く事はできねぇ……

一人ベッドに座って、自分の発言に苛立ちを覚える。

アシュレイの事を想うあまりに、アシュレイが一番聞きたくない事を言ってしまうなんて……
好きな子に嫌な思いをさせるなんて、男として失格だ。

アシュレイが持ち出した物はピンクの石の首飾りだけだ。
起きたばっかだから自分に装備もしてねぇし、他の物は全て俺が持っている。
なんかあった時に対応できないかも知んねぇ。


アシュレイ……


早く帰って来てくれ……


アシュレイになんかあったら


俺はどうしたら良いか分かんねぇよ……


傍にいてくれてるだけで良い


今はそれだけで良かったんだ……


頼むから


俺の元まで帰って来てくれ……









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