慟哭の時

レクフル

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第六章

そうであっても

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「あ、子供達と女の人、助けないとっ!」

繋がれている首輪と手枷を魔法で壊し、着ていた外套を脱いで女性に掛けた。
ディルクとエリアスも同じようにして、女性が恥ずかしくならないようにしていた。

子供達も自由にすると、皆泣き出した。


「ディルク、エリアス、子供達が泣いてる!抱き締めて安心させてあげてっ!」

「え?……あぁ。そうだな。」


ディルクは子供達の頭を優しく撫でて、抱き締めてあげていた。

エリアスは頭をワシャワシャして、背中をポンポンしていた。

その様子を見ていた私を見て、ディルクが子供達にするように私の頭を撫でて抱き締めた。


「あ、ディルク、私は大丈夫だからっ!」

「そうか?悲しそうな顔をしていたから……」

「アシュレイは触れねぇからな。なんでアシュレイには腕輪を着けなかったのかな。」

「着ける事によって起こる負担がどう出るか、怖かったからだろう。」

「え……?」

「なんだ?それ?!」

「あ、いや……」

「おい!何か知ってるのか?!」

「…………」

「知ってるんだろ?!何隠してんだよっ!この腕輪を着けた奴が誰か、知ってんじゃねぇのかよ?!」

「それは……」

「ディルクっ!いい!言わなくていいっ!」

「アシュレイ?!」


思わず私はその場から走り去ってしまった。
階段を上がって、部屋に出た所で、座り込んでしまう。
耳を手で押さえて、何も聞こえないように、何も考えないようにする……



違う……


違う……


そんなんじゃない……


私とディルクは違う……


絶対に……違うっ!


呪文の様に、何度も自分の心の中で呟く……



暫くして、階段を上がってくる音が聞こえた。

それはエリアスだった。


「アシュレイ、すまねぇ……」

「エリアス……ディルクは……?」

「兵を呼んでくるって、空間移動で行っちまった。」

「そう……」


エリアスが座り込んでる私を、包み込む様に抱き締める……


「ごめん、また泣かしちまったな……」

「泣いてない……」

「そうか?」


エリアスは私の頬を指で撫でて、それから頭をポンポンする。


「また私を子供みたいに扱う……」

「んな事ねぇよ?……立てるか?」

「うん……」

「子供達が不安がってるからさ、傍にいてやりてぇんだ。一緒に行こう?」

「うん……」


エリアスが手を繋いできて、一緒に地下へ戻る。
子供達と女の人は片寄って身を寄せて泣いていた。

エリアスが壁に拘束されていた男の人を下ろして、そっと床に寝かせる。
一人の女性がその人の側に行って、抱きつきながら泣いていた。

ふと見ると、微かに男の人の指先が動いていた。

まだ生きているっ!

慌てて回復魔法をかけた。
すると、男の人はゆっくりと目を開けて、すがって泣いている女性を見る。
それに驚いた女性は、でも嬉しそうに泣きながら二人で抱き合った……

良かった……

それでもこんな目にあわされて、子供達もそうだけど、女性達の心の傷はどんなだろう……と考えると、悲しくて涙が出そうになる……

浄化魔法で、子供達と女性達、男の人の汚れを取り除き、手枷や首輪で傷付いた所を治癒させる。

そうしていると、ディルクが歪みを抜けて帰ってきた。


「この事を報告してきた。今、兵達がこちらまで向かって来ている。」

「ディルク……」

「どうした?アシュリー?」

「ううん……なんでもない……」


ディルクが私を抱き寄せる……


「そんな不安そうな顔をして……」

「だって……」


程なくして、兵達がやって来た。
倒れている男達を拘束して連れ出して行く。
それをエリアスも手伝っていた。
老化した男を見て、兵達は驚愕の表情を浮かべながら、その男も拘束して連れ出す。

女性と子供達の元までディルクが行って、一人一人、触れていく。
不安そうな表情をしていた子達が、少し元気になっていく。


「ディルク……っ!」


急いでディルクの元まで行って、腕を掴む。


「ダメだ!また倒れちゃうっ!!」

「アシュリー……大丈夫だ……少しずつ恐怖を取り除いているだけだから……」

「でも……っ!」


私が止めても、ディルクは止めなかった。
女性の恐怖も取り除いて行って、立ち上がろうとした途端、ディルクが崩れ落ちそうになった。
それを即座に支える。


「リドディルク様っ!!」


ゾランが急いで駆けつけた。
二人でディルクを支えて、空間移動で王城に戻る事にする。
エリアスはその様子を見ていて、私にゆっくり頷いた。

王城の、貸し出されたディルクの部屋に空間移動でやって来て、すぐにベッドに横たわらせる。
息も荒くなって、痛みに耐えている様だった。
ゾランが着替えさせようとしたが、ディルクは私を離さない。


「アシュリー……どこにも行くな……アシュリー……」

「分かったから……傍にいるから……っ!」


そう言うと、やっと私を離した。
ゾランと従者が着替えさせて、医師を呼んだ。
ディルクはうわ言の様に、何度も私を呼ぶ。
処置が終わると、ゾランは私に頭を下げて、医師と共に部屋から出て行った。

装備しているものを全て外して、ディルクの傍に行く。
そっと手を握ると、ゆっくり目を開けて、私を見て微笑んだ。


「ディルク……」


思わず抱き締めてしまう……

私を見て微笑むディルクを、とても愛しく想ってしまう……

熱くなった体を、氷魔法で少しずつ冷やしていく。
抱き合う様に横になって、ディルクの頭を抱き締めて、熱が上がらないように冷やしていくと、少し落ち着いたのか私の胸で眠った様だった……


いい……


ディルクが誰であっても……


そんなこと


もうどうでも良い……


そんなこと


関係ない……


たとえ私達が


兄妹であったとしても……



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