慟哭の先に

レクフル

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翻弄される

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 オルギアン帝国から来る使者を待ってる間に、俺はロヴァダ国の官僚やら貴族やらを集めて、全員を俺の魔眼で操り支配下に置いた。

 こんな事は本当ならしたくはなかった。いや、マジで。操るのは簡単だ。何でも言うことを聞いてくれる。けどそれに慣れてしまうと、俺自身が可笑しくなりそうな感じがする。
 今は誰も俺に苦言を呈する事もない。誰に怒られる事もない。だから自分でしっかり善悪を判断しねぇといけないんだ。

 けど、これって結構厄介なんだぞ? 分かりやすい事ならすぐに判断できっけど、どっちにしても問題が残るような場合は判断が難しい。誰かに相談したい時もあるし、相談とかじゃなくても、ただ聞いて欲しい時もある。
 けど俺が皆から距離をおいて来たのに、今更って感じなんだよな。だからこれは自業自得でしかない。

 官僚やら、ソイツ等の側近やらに書類とか帳簿を提出させる。これまでの財政がどうなっているのか、ちゃんと確認しなくちゃいけねぇからな。けど、俺がこれを見てもよく分かんねぇから、あとで来るオルギアン帝国の使者に見て貰おう。
 それまでに隠されたり改竄されたりしねぇように、俺はコイツ等を支配下に置く必要があったって訳だ。

 とにかく、今までどうやって国を管理してたかを知る必要があるからな。

 集めた書類やらは、誰にも手出し出来ねぇように結界を張っておく。王城にいる奴等はこれで問題ないけど、各地にいる貴族やらはまだ支配下に置けてねぇ。ソイツ等をバルタザールに徴集させているところだけど、王都の様子が可笑しいって感じたのか、それに承諾しねぇ奴等もいるみたいだ。

 そんなのを放っておけば内乱が起きる場合がある。だからオルギアン帝国の使者が王都に到着するまでの間に、出来る限り各地を統治している貴族を支配下に置くように動かなくちゃいけない。

 マジでやる事がいっぱいだ。けどこうやってやる事が多い方が、余計な事を考えなくて済む。

 アシュリーの事を考えると止まらなくなる。他に何も考えられなくなる。冷静な判断が出来なくなりそうになる。

 いや、そればっかじゃねぇな。アシュリーの幸せそうな顔を見た途端に俺も幸せを感じたのは事実で、その時苛立ってた感情なんかはどっかへいって落ち着く事が出来たんだ。

 翻弄されまくってるよな。でもそれが有難い。俺の心に動揺を与える存在なんて、ここ400年程そうそう無かったからな。

 また考え込んでしまうのを頭を振って無理矢理止めて、透明化して上空を飛んで、各地へと行き様子を伺う。貴族が住んでそうな家に行って、そこで管理している奴を見付けて感情を読み取る。マトモな奴なら現状を話して、このまま統治して貰おうと思ったけど、やっぱそんな奴はいなかった。皆自分の事しか考えてねぇ。

 そんな奴等を魔眼で操って、支配下に置く。で、そこに保管してある帳簿やら書類やら金やらを徴収する。明らかに不正金と思われる金がタンマリ金庫にあったから、それは何の金か聞いて賄賂だと分かった時点で徴収していった。

 ここまで全部が悪しき感情に巣食われている奴等がいる事に驚いちまう。よく国として成り立ってたな。これは建て直すのにすげぇ労力が必要になるだろうな。

 一頻りそうやってあちこちへ行って、腐敗した思考の奴等を支配下に置いていく。建て直してる途中で内乱でも起こされたら厄介この上ないからな。

 そんな感じで飛び回り、統治している貴族やらを支配下に置いていってから、その後いつものアスターとしての事をして家に帰る。
 
 あぁ、疲れた。体力的にも魔力的にも問題はねぇけど、やっぱ人を操るってのはいい気がしねぇな。罪悪感が残るって言うか、そうされても仕方のない奴等なんだけど、申し訳ない気持ちが胸に残る。

 ソファーにドカッて座って、そのまま横にゴロンって横たわる。今日もなんやかんやしてたら遅くなって、気づけば夜も更けてしまってた。


「あー……癒されてぇー……」


 こんな事をずっと続けてると、心が荒んでいきそうだな。いや、前まではこんな事すら気にしてなかった。ただすべき事と割り切って行動していた。人間らしい感情が戻ってきたのか。ならそれはアシュリーのお陰だな。

 アシュリーは今どうしてんだ? もう夜だ。飯はちゃんと食ったか? 見えた場所は食い物に困るような所じゃ無さそうだったから、それは心配ねぇか。

 アシュリーを見つけたら会いに行こうと思ってた。けど、俺が行ったらアシュリーに迷惑がかかるんじゃねぇか? どうなんだ? アシュリーは俺をどう思っているんだ? 大切な人って言ってくれた。それは目茶苦茶嬉しかった。でもそれだけか? 好きとかとは違うって事なのか? 

 こういう事を会って確認したいってのもある。一人でグズグズ考えてても埒が明かねぇからな。

 今何してんだ? ちょっと見てみようか……

 ドキドキしながら、アシュリーが男とイチャイチャしている可能性があるのも踏まえて、何とか勇気を出してゴーレムと感覚共有してみる。

 あー! また一緒に寝てるー!

 それだけ見て、すぐに共有をやめる。そうだな。もう遅い時間だからな。寝るよな。うん、誰だって寝る時間だ。早く寝るにこした事はない。
 ベッドが一つしかないのかな? だったら一緒に寝るしかねぇよな。それなら仕方ねぇもんな。まぁまぁ大きめなベッドだったように思ったけど、きっと思ったより小さいベッドなんだ。だから寄り添うようにして眠ってたんだ。そうだ。仕方ない。仕方ないよな。

 ……なんか虚しくなってきた……

 都合の良いように考え過ぎだな。分かってる。分かってるけど、今はそう思わせてくれ!

 ソファーで寝転がったまま動けずに、そのまま天井を見詰めて大きく溜め息をつく。

 挫けちゃダメだ! 心を強く持つんだ! 俺!

 アシュリーを見つけたら会いに行こうと決めていたけど、取り敢えずもう少し様子を見よう。アシュリーの今の環境がどうなっているのかを知ってからちゃんと会おう。もし振られてしまっても、笑顔でアシュリーを送り出してやろう。

 そうできるまで、もう少しだけ俺に時間をくれないか?

 情けない男でごめん! 俺、もっとしっかりした男になるから、それまで待ってて欲しい!
 
 勝手にそう話し掛けるように心で告げて、そのままそこでウトウトして眠ってしまった。

 アシュリーの夢が見れたら良いんだけどな……


 

 
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