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出会う
しおりを挟む翌朝、目が覚めるとそこは居間だった。そうか、俺はあのままソファーで眠ってしまったんだな。酒に酔った訳でもねぇのに、こんな所で眠ってしまうなんて何年ぶりだ?
起きて朝風呂に入る事にする。水魔法で風呂に水をたっぷり貯めて、それから火魔法でちょうど良い温度にする。これも慣れたもので、すぐに風呂の準備ができる。
体を洗って湯船に浸かると、気持ちも洗われていくような感じがする。朝風呂もたまには良いよな。窓から見える明るい景色も良いもんだ。アシュリーもリュカも風呂が好きだったから、ここの風呂は大きめに作ったんだ。今は一人だから広すぎるように感じてしまうけどな。
いや、泳ぐには狭いぞ? ちょっと泳いだらすぐに端から端まで行けちまう。そうやって何度かバシャバシャ泳いであっちへこっちへ行ってみる。って、何やってんだ、俺は。こんな所を見られたら怒られるぞ。まぁ、誰にも見られないから怒られる事もないけどな。
そんな事を思うとちょっと虚しくなってきた。さっさと上がろう。
バカみたいに泳いでしまったからかなり茹で上がった感じになった。それを氷魔法と風魔法で冷風を出して冷やしていく。エールを空間収納から取り出して冷やして、それをグビッて飲んで一息つく。
あぁ、気持ちいいなぁ……
って、朝からこんな事してなにやってんだ。
まぁ、ちょっと飲んだくらいじゃ耐性があるから酔わないし問題ねぇよな? それにまだ朝早いから大丈夫だろ? って、誰に言い訳してんだか。
気を取り直して、着替えをしてオルギアン帝国まで行く。俺の部屋に着いてベルを鳴らすとすぐに侍従がやってくる。いつも取り次いでる間に勝手に俺が行きたい場所へと行ってしまうから、今日はちゃんとここにいて下さいね、って言って、豪華な朝食と可愛い女の子のメイドと給仕係を置いて出て行きやがった。
アイツ、俺に可愛い女の子を相手にさせてたらここに居座るとでも思ってやがるな? 心外だ! 俺にはアシュリーがいるんだからな! ちょっとやそっと可愛い位で俺をどうにかさせられると思ったら大間違いなんだからな!
まぁ、ちょっとここでゆっくり朝食を摂っておく位はしてやるけど……
ニッコリ微笑むメイドに、俺もニッコリ笑い返す。可愛いじゃねぇか……まぁ、悪い気はしねぇよな。
こうやって男はハニートラップなんかにヤられていくんだろうな。いや、俺はヤられねぇぞ?
因みに何を考えてるのか感情を読んでみた。
『大切なお客様と聞いたけど、仮面とかしてるしスッゴい怖いんだけど! 何かされたらどうしよう?! 仮面をしてるって事は見せられない程酷い顔なんじゃないかしら? ムリムリムリムリ! アタシ面食いなんだから! ほら、こっち見て笑ってるっぽい! ヤダ、危険人物なんじゃないのー?! 気持ち悪ーい!』
酷ぇ言われようだ。いや、言ってないけど。まぁ、女なんてそんなもんだよな。こうやって感情を読めてしまうから、俺は他の女の子とどうこうなるなんて考えられなかったんだ。
気持ち悪い……か……いや、こんな事くれぇで傷つかねぇ。大丈夫だ。俺は平気だ。平気だって。だから平気だっつってんだろ!
……仕方ないから食べることに専念しよう。
そうやって朝食を済ませてお茶を飲んでいると侍従が帰ってきた。俺が大人しくここにいるのを見てニヤリと笑いやがった。あ、コイツ、次からこの手でいこう、とか思ったな! 今日だけだからな! 次からこの手が通じるとか思うなよ!
ったく、俺はどう思われてんだか。良いようにあしらわれてる感が否めねぇな。
侍従が俺を連れて、城外へと案内した。そこには何人も貴族やら皇族やら側近、従者やらがいて、コイツ等がロヴァダ国へ行く奴等だというのが見てすぐに分かる。そこには皇帝のジョルディもいた。
「今日は呼ばれるまで大人しく待っていたのだな」
「こんな手がいつも使えるとか思われんのは心外だけどな」
「どんな手かは知らぬが……紹介しておこう。ここにいる者達がロヴァダ国の内政の建て直しを行う者達だ。そのリーダーをルディウスとする。ルディウス、ヴァルツ殿はこの帝国を影で支えてくれている方だ。今後はヴァルツ殿の指示に従って動いてくれるか」
「はい、その様に」
そうやって紹介されたルディウスという男を見て、俺は驚いてしまった。コイツ、もしかしてディルクじゃねぇのか? って程に、ディルクに感じがすっげぇ似てる。顔もそうだけど、佇まいとか体格とかが、もうディルクって感じなんだ。
仮面をつけてて良かった。じゃなかったら、俺はすげぇ間抜けな顔して驚いてただろうからな。
「ルディウスと申します。よろしくお願い致します」
「あぁ、よろしくな」
挨拶されたから同じ様に俺も返して、つい手を差し出す。が、ルディウスはその手を取らない。
え? 握手って友好の証だろ? なんで握手をしねぇんだ?
もしかして……異能の力があるからか? それで簡単に人には触れねぇってか?
「ヴァルツ殿、申し訳ありませんが握手は控えさせて頂けませんか?」
「あぁ、そうか、それは問題ない……あ、俺にそんな堅苦しい言葉使いも必要ねぇ。その方が俺が楽だからな」
「……承知した」
やっぱそうか? そうかも知んねぇ。そう思ったら、もうディルクにしか見えねぇな。確かめようとルディウスの感情を読もうとしたけれど、何故かコイツの感情を読むことが出来なかった。何でだ? こんな事、今まで無かったのにな。何かに阻まれてる感じがする。って事は、コイツが自分の魔力で自身を防御して、それが感情も読ませないようにしてるって事なのか?
そうしてるかどうかはじっくり解析してみねぇと分かんねぇ。けど、その可能性はあるな。って事は、コイツはかなりの手練れって事だ。
いやぁ、心強いな。それもディルクであれば納得だ。
そうやって面通しが終わってから俺とは別行動になることを告げて、その場を後にする。
ルディウスがディルクなのかどうなのかは気になるところだけど、これから協力してロヴァダ国を再建させるんだ。今ハッキリさせる必要もねぇよな。
そう言えば、アシュリーと一緒に寝てた男はコイツだったか? 現実を受け入れるのに困惑してたから、しっかり男の事見れて無かったけど、あの時もディルクじゃねぇかと勘繰ったな。もしかしたらそうかも知んねぇし、違うかも知んねぇ。
ただ、ルディウスがディルクだとすると、またオルギアン帝国の皇族に生まれ変わったって事だ。で、アシュリーがいた部屋が高級っぽく見えたのは、この帝城の部屋にいたから、という事かも知んねぇよな?
って事は、アシュリーはもしかしたらこの近くにいるかもって事か?!
うわぁ、そう思うだけでドキドキしてきた!
けどそれなら、高級っぽい部屋にいた事に納得できる。うん、辻褄が合うぞ!
そうか、そうであればちょっと安心だ。まだ俺にも可能性があるって事になる。
よし! 俄然やる気が出てきた!
けど慎重に。まだルディウスがディルクだと決まった訳じゃねぇからな。様子を見ながら確認することにしよう。
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