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本編
7.もう離れないで
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イルサが王宮から馬車で送られて帰宅すると、物音を聞きつけたアンネがすぐに玄関を開けた。
「お嬢様!おかえりなさいませ」
アンネが御者からイルサの荷物を預かり、そのまま家に行く。
「お嬢様、ご飯はどうされますか?簡単なものでしたらすぐに出せますが。パンもあります」
「大丈夫よ、朝食は王宮で食べてきたし」
部屋につくと、イルサはアンネに追い立てられるように簡易なワンピースから寝衣に着替えた。
そして、ベッドに入ると、アンネは満足そうに笑った。
「お疲れ様でした、お嬢様」
「ええ。ありがとう。えっと、あの、一つ聞きたいんだけど」
「なんでしょう」
アンネはイルサの言葉に首を傾げた。
「――レイは?」
「レイ様は数日家を留守にするとおっしゃっていましたよ。なんでもリチャード様からの頼まれごとがあるとか」
「そう」
別れ際に言っていた数日留守にするといっていたのはリチャードの依頼だったのか。
「ともかく、お嬢様。今すべきことは休息です。ゆっくりお休みください」
「はい、アンネ。その、本当にいろいろ迷惑かけたわね」
イルサのためらいがちな言葉にアンネは笑った。
◇◇◇
ゆっくりと休息をとることに務めていたイルサだったが、次の日には既に休息に飽きていた。
(思ったよりも仕事人間になっていたようね)
ぬぐぐ、と少し自分の堪え性のなさに驚く。
ベッドの中で本を読んでみるも、なかなか集中できない。
(単に休息に飽きているというよりも……)
その理由に今更のように気づき、イルサはため息をついた。
レイモンドからの連絡はない。
数日留守にするといっていたのだから、まだ時間がかかるかもしれない。ということくらいはさすがにイルサもわかってはいるのだが死んだと思っていたレイモンドと再会して、心も通わせることができたのだ。早く帰ってきてほしいと思うくらい当然だ。
「………」
いろいろと聞きたいことがある。
死んだのに生きかえってとか。悪魔との賭けとか。
魔法も悪魔も、歴史上には存在する。しかし、今の世ではそれらが存在している立証はできていない。
本当かウソか。妖精がいたと新聞に載った次の週にはあれは嘘だ偽りだという記事がまた新聞に載り、幽霊が出たと噂になれば見物人が大挙するが、そのときにはもう出ない。いや、ときたま数人、見たことを自称するが……集団ヒステリーの類だろうと科学者の権威が反論する。
そんな中で、素直にそれを真っ向から信じるには時代が悪い。
素直にうれしい気持ちと不安がこみ上げる。
化かされたんじゃないかとか。今更のように不安になる。
(……会いたい)
会って話して、本当に彼が生きていることを確認したい。それで。
それから、どうするんだろう。
イルサはベッドの上で仰向けに寝転びながら天井を見ていた。
そうだ。彼が生きていたならば、これから自分の生活はどう変わるんだろう。
3年間、彼がいないことに慣れるよう生活を送ってたようなものだった。最近になって、やっと、新しい生活に慣れてきたのに。
いきていたならば。
――愛してる。
レイモンドの言葉を思い出し、イルサは顔が赤くなるのを感じた。
室内に自分しかいないのをいいことに、掛け布団を頭までかぶり、ごろごろとベッドの中を左右に転がる。
「……う」
ダンゴムシのように掛け布団ごと丸くなり、荒くなった呼吸を落ち着かせるように深呼吸する。
「どうしよう……」
イルサが一人で悶々としていると、ドアがノックされた。
「はい」
慌ててベッドに寝なおすと、アンネが顔をだした。
「お嬢様すみません。今先ほど電報がありまして……息子がけがをしたと」
「大変……!」
「それでその……お嬢様もだいぶ落ち着かれているみたいですし、買い物なども済ませてあります。レイ様もそろそろお戻りになると思いますし……。本家の方にも手伝いをお願いするよう使いを送りますので私……」
「かまわないわよ。早く息子さんのところに行ってあげて」
そわそわとしだしたアンネにイルサはかぶせるように言った。
アンネは謝罪と感謝を繰り返し、あわただしく荷物をまとめ、イルサにお礼を繰り返したのち、家を出た。
確かアンネの息子は鍛冶職人に弟子入りしたと聞いている。まだ12歳かそこらのはずだ。まだ子どもである。死別した夫との忘れ形見である一人息子は彼女の一番大事なものだ。
(やけどとか……怖いし)
イルサは考えて、少しでも、アンネの息子の怪我が軽いものであるように祈った。
(で)
イルサは、ベッドから降り、アンネの言った食料の状況を見に台所に向かった。
「パンは結構あるし、シチューも……塩漬け肉もあるし、数日は大丈夫そう」
アンネは本家に使いを送り代わりのメイドを、と言っていたがそこまでしなくても問題ないだろう。
イルサの体はもうだいぶ本調子であるし、簡単な家事くらいなら出来る。ただ、防犯的にはどうだろう。
(レイモンドが今日戻ってこなかったら、エレンナに頼んで女子寮を借りようかな)
治安がいいとはいえ、流石に一人で過ごすのは少し不安だ。
いつも、アンネが遠出する時はイルサはエレンナ達の入っている女子寮に泊まっていた。
そう決めてから、いったん紅茶でも飲もうとお湯を沸かす準備を始めた時だった。
玄関の開く音と、「ただいま」という声。
(レイモンド!)
イルサは慌てて玄関に向かった。
「れ、レイおかえりなさい」
迎えにいってイルサは改めて自分の恰好に気づき、少し歩を遅くした。しかし、レイモンドが逆に歩をつめる。
「ただいまイルサ。体調はもう大丈夫?」
「ええ、もう働けそうなくらい元気」
レイモンドはレイとして従者をしていた時と同じ服装をしていた。
今は赤毛に碧眼のもともとのレイモンドの姿だが、左目だけは眼帯に覆われたままだ。
「もらった休みは権利だよ、ゆっくり過ごさないと」
レイモンドはそういうと、イルサの腰に手を回し、彼女のおろした金髪をすくい、口づけた。
流れるような動作にイルサは顔を赤らめる。
「その、距離が近いわ」
「愛し合うものの距離はどれだけ近くてもいいんだよ」
「変なこと言わないで」
イルサはレイモンドの胸を押し、離れた。
レイモンドは肩をすくめ、彼女に問いかけた。
「――で、無事にアンネは出発したのかな?」
その言い方にイルサは息を飲み、レイモンドに振り返った。
「あ、貴方もしかして!」
「安心してよ、別に大したことはない。ちょっと嘘の電報を送っただけだよ、ちゃんと息子さんと工房のほうには事情を説明してあるし、アンネはゆっくり休暇をとるだけさ。旅費もあっちでの滞在費も僕が持つ」
「……なんでそこまで」
「蜜月は二人で過ごすものだよ」
レイモンドの言い草にイルサは肩を落とした。
(そういえばそうだった……)
彼は、計算高い。
いつだって自分のやりたいことをイルサの想像を超える方法で行ってくる。
死んだと思っていた3年間の間に彼のそういうところから意識がそれていたようだ。
(アンネが帰ってきたらなんて言われるだろう……)
そもそもアンネはレイモンドとレイのことについて全く知らないのだ。一から説明しないといけないのか……とイルサは頭が痛くなった。
レイモンドは「あんまり悩まないで」とイルサの耳もとで囁いた。
「そんなことより、イルサこっちへおいで」
レイモンドはイルサの手をつかんで歩き出す。
「その。あのえっと、レイモンド、どこに」
「君の部屋。君を抱きたいんだ。そのためにアンネに遠出してもらったんだから早くしないと時間がもったいない」
「?!」
イルサは息を飲んだ。
「なんですって?!」
レイモンドはイルサに笑いかけ、イルサの部屋のドアを開ける。
「僕は君を愛してる、君は僕を愛してるし、愛してる以上は結婚することになるよ。君ってそういうのちゃんとしたがるし」
「……」
逃げるか逃げないか、イルサが決めかねている間にレイにつかまり、イルサはベッドに押しやられる。
レイモンドはイルサの顔を覗き込むように腰をかがめた。
「安心して、僕は頑張ったからちゃんとそれ相応の報酬はもらえることになったし、これで結婚しても文句をいう人はほとんどいない。――まったくは難しいけど、それくらいなら別にいいでしょ」
「……」
レイモンドの目元は柔らかく、弧を描いている。しかし、その実、瞳はぎらぎらと輝いている。
これは逃げられない。イルサの背中を汗がつたう。
(でも)
イルサだって、これを望んでいなかったわけではない。
イルサは、レイモンドがいうほどうそつきではない、とおもう、その都度その都度の選択がうらめにでただけだ。と言い訳する。
だけど、今回は、今度こそは正直になりたい。
彼に抱かれたい。
彼をかんじたい。
そういう気持ちはちゃんとある。
心の準備くらいはさせてほしいけど。
「れい――」
心を決めてイルサが顔を上げる。瞬間、すぐ目の前にあるレイモンドと眼があった。
「あ――」いうべき言葉は口づけにきえた。
服をはぎ取るように全て脱がされ、ベッドに押しつけられるように胸をもまれる。
あまりの手際の良さに呆然としたイルサに、
「実は女装をする機会があってね。だいぶ女性の服になれたよ」
とレイモンドは言った。
「え?!」
思わずイルサが聞き返すと、レイモンドは小さく「しまった」と言った。
「れれ、レイ……やっぱりごめんなさい。先に話を聞かせて……」
「――いや、ごめん。またあとで」
レイモンドは珍しく慌てた様子で、ごまかすようにイルサの身体から手を放すと、自分の服を脱ぎ捨てた。
そして、再びイルサにのしかかる。
「レイ……!んっ、ん……っ」
「あんまり力入れすぎてもつらくなっちゃうよ」
「で、でもっ」
「いいから、俺に身体をまかせて」
「うう……」
力が抜けないイルサにレイモンドは笑った。
(そんなに詳しくないけど、これからどうなるんだろう……)
父から仕事か結婚かといわれ、仕事を選んでからこのかた、イルサは男女の閨事については耳をふさいできた。
もちろん、職場は女ばかりであり、中には結婚経験者もいないわけではない。
年頃の女が集まれば少しはそういう話は耳にする。
しかし、積極的に聞きにいかないイルサは十分な知識があるとはいえないだろう。
そんなイルサの不安を知るよしもなく、レイモンドは口づけを深めた。
深々と差し入れた舌で口腔内を蹂躙し、呼吸を遮る。息も絶え絶えのイルサをみて満足げにほほえみ、今度はかみつくように首もとに口づけられる。
何度も吸い上げられ、なめられ、イルサはどんどんお腹の下の方がむずむずそわそわしてくるのを感じた。
しかし、レイモンドはわかっているだろうに無視し、首元をゆるめて、胸をさわった。
柔らかい、と触られ舐られ――また、イルサは身をよじる。
(たすけて)
誰ともいえない存在にむやみに助けを求めてしまうほどだった。
執拗に胸の膨らみをもみ、さらには先端を口に含み、こねる。
口に含んだ方とは逆のものも、手ですこし痛いくらいにこねられた。
「ぁ……!」
小さく漏れた声にイルサは驚いた。自分の声ではない、とてもみだらな声だった。
イルサが思わず、レイモンドをみる。目があった彼は、獰猛な瞳でうれしそうに笑った。
恥ずかしさにイルサはレイモンドの頭を抱きしめた。
しかし、そうなると、彼の唇の愛撫はよりいっそう激しくなった。
そして、愛撫は胸だけにとどまらず、彼の手はイルサの太股にふれた。
「あっ……!」
なでるように肌を伝い、外側から内側に手が入り込む。
イルサは羞恥と期待にふるえた。
太股の内側を下からなぞったレイモンドの足は、イルサの足の付け根にたどり着いた。
「準備は、できてきたね」
笑うように柔らかに、しかし、背筋がしびれるような色気に満ちた声で、レイモンドはつぶやいた。
イルサはその声にふるふるとふるえたが、すぐに彼の指の動きに翻弄された。
彼の節だった指はイルサの秘所にふれ、なで上げる。そして、潤みきったそこの蜜をからめ取るように動いた。
「せっかくだし、味見するね」
「え……?」
イルサはレイモンドの言葉の意味が分からずにいると、彼は胸元から顔を上げ、イルサに微笑みかけた後、彼女の足を左右に開いた。
「――――――!」
言葉もなく固まるイルサを気にもとめず、レイモンドはイルサの脚の付け根に顔を近づけた。
「イルサ、とてもきれいだ」
「そ、そんなところをみながらいわないで……!」
「だって、本当にきれいだし。薄々察してたけど、やっぱり毛も薄いんだね」
「え?」
「――あ、いや、別にほかの人の奴をみたりはしてないからそこは安心してほしい。ただ、話にはよく聞くからさ」
「……」
いいわけがましいレイモンドの言葉にイルサは何と言っていいかわからず、黙り込む。むしろ、レイモンドがなにと比較してそういっているのかよりも、今の状況のほうがよっぽどイルサにとって気になるものだった。
「……」
そんなところをまじまじとみないでほしい
でも、いま脚を閉じるとレイモンドの顔を太股で挟んでしまうことになる。
イルサが「まずはレイモンドの頭を手でおしのけようか」と思いはじめた瞬間、レイモンドは、すい、と秘所に口づけた。
「やぁ……!」
「ごめんね、君が変なことを考えるよりさきに気持ちよくなってもらうんだった」
「へ、へんなことって……!あっ、ちょ、れいっ!!そんなところ……!!!」
イルサの秘められた場所をレイモンドは指で割り開いた。くちり、と小さな水音がイルサの耳に届き、反射的に足を閉じようとしてしまう。
「すべすべしていて気持ちがいい」
レイモンドは自分の頭を挟んだイルサの太ももに頬ずりをした。その感触にイルサはさらに震えてしまう。
太ももにはさまれたまま、レイモンドの指がイルサの秘所をたどる。上下に柔らかくなぞってから、秘芯に指が触れた。
「あぁ!!」イルサは思わずレイモンドの頭に手を置き、髪の毛をかき乱してしまう。
「気持ちよくなろうね」
レイモンドはそんなイルサを蕩けるような瞳で見上げた。
イルサはこれ以上何をされるのか考えた瞬間、レイモンドに触られているところがより一層疼くのを感じた。それに気づいたのか気づかなかったのか、次の瞬間レイモンドが激しくイルサの秘芯に食らいついた。
舐めさすり、あまがみをする。そして、彼の指も彼女の蕩けた膣に差し入れられ、幾度となく壁をさする。
試すように指が曲げられ、押し入れられる。
「やっ!!レイッれいっそんなぁ……!」
激しい彼の動きにイルサは身をよじる。いつのまにか指は増やされ、彼女の体はより一層快楽に打ち震えた。
「中の味はどうかな」
レイモンドはそんなイルサの嬌声を聞きながら、彼女の体を開拓することにいそしんでいた。
指を膣からだし、今度は舌を入れる。指が抜かれた瞬間の喪失感をすぐに舌が塗り替えた。
「あッ」
イルサの中を味わうように舌がうごめき、同時に、彼女の愛液を啜る。絶えず零れ落ちるそれをレイモンドは指に絡め、今度は指で秘芯を優しくこねた。
それくらいの時間がたったのだろう。体の中も外も溶かされ、イルサはもう喘ぎ声しか出すことができない。
「そろそろかな」
レイモンドはイルサの膣にもう一度指を差し込む。二本、感触を確認しながら蜜を絡めた指をもう一本。
三本が難なく入ったのを確認すると、レイモンドは微笑んだ。
「痛くない?」
「……」答えられず身をよじったイルサにレイモンドは笑みを深める。
「イルサ、一回達しておこうね」
イルサがその言葉の意味を認識するよりも先に、彼は秘芯に吸い付き、強く吸った。そして、中に入れた指をぐい、とイルサが反応したところをえぐるように動かした。
「や――!」
イルサはあまりの快楽に体をのけぞらせた。それを抑え込みつつ、レイモンドは彼女の蜜を舐め取り、飲む。
そして、「たくさん出てくる……うれしい」とつぶやいてから、レイモンドはイルサの脚の間から体を放した。
「レイ、れい……」
うつろな目でイルサはレイモンドを見る。
「きれいだよイルサ」
レイモンドは眼帯だけを残し、着たままだった服を全て脱いだ。
そして、自身の猛ったそれをほぐしたイルサの秘所に近づける。何度か蜜を絡めるように動かしてからレイモンドはイルサの入口にそれを押し付ける。
「イルサ、愛してる」
「レイ、私も」イルサはつぶやくよう言ってから、少し呼吸をとめ、「私も愛してる」と言った。
「うれしい」
レイモンドはイルサの中に欲望を押し込んでいく。
(い、痛――)
圧迫感と痛みにイルサは口を押えた。
少しでも痛みを紛らわせるために、目の前にあるレイモンドの身体に意識を向ける。
(傷が、いっぱい)
彼の上半身だけであれば、イルサは初めて見るわけではない。
幼少期、一緒に遊んでいて川に落ちた時。公立学校時代、騎士クラスの補習に差し入れをもっていったとき。
レイモンドの裸の上半身を見たことがあった。
しかし、そのときと今ではレイモンドの体の厚みも逞しさも全く異なる。
(私が知らない、レイモンドの三年間)
それを象徴するような彼の体にイルサは自然に手を触れていた。
「……イルサ、そんな余裕あるの?」
からかうようなレイモンドの声。瞬間、彼はイルサの中に自身を突き入れた。
「あっ」
痛みに身をよじるが、レイモンドの体が伸し掛かり、逃げ出すことなどできない。
「イルサ、愛してる。ごめん、止まれない」
レイモンドはイルサの耳にささやく。そして、律動を開始した。
幾度となく、身体を揺さぶられ、イルサは意味をなさない言葉しか吐くことができない。
「力抜いて、イルサ」
耳元でささやかれると、逆に力が入ってしまう
「愛してる、愛してるから、イルサ」
繰り返される言葉。イルサは激しくなる動きにただ翻弄されていく。そして、
「もう離れないで」一つだけ意味のある言葉を言えた。
「うん」
レイモンドの返事は単純で簡素なものだった。それでも、イルサはうれしかった。
「お嬢様!おかえりなさいませ」
アンネが御者からイルサの荷物を預かり、そのまま家に行く。
「お嬢様、ご飯はどうされますか?簡単なものでしたらすぐに出せますが。パンもあります」
「大丈夫よ、朝食は王宮で食べてきたし」
部屋につくと、イルサはアンネに追い立てられるように簡易なワンピースから寝衣に着替えた。
そして、ベッドに入ると、アンネは満足そうに笑った。
「お疲れ様でした、お嬢様」
「ええ。ありがとう。えっと、あの、一つ聞きたいんだけど」
「なんでしょう」
アンネはイルサの言葉に首を傾げた。
「――レイは?」
「レイ様は数日家を留守にするとおっしゃっていましたよ。なんでもリチャード様からの頼まれごとがあるとか」
「そう」
別れ際に言っていた数日留守にするといっていたのはリチャードの依頼だったのか。
「ともかく、お嬢様。今すべきことは休息です。ゆっくりお休みください」
「はい、アンネ。その、本当にいろいろ迷惑かけたわね」
イルサのためらいがちな言葉にアンネは笑った。
◇◇◇
ゆっくりと休息をとることに務めていたイルサだったが、次の日には既に休息に飽きていた。
(思ったよりも仕事人間になっていたようね)
ぬぐぐ、と少し自分の堪え性のなさに驚く。
ベッドの中で本を読んでみるも、なかなか集中できない。
(単に休息に飽きているというよりも……)
その理由に今更のように気づき、イルサはため息をついた。
レイモンドからの連絡はない。
数日留守にするといっていたのだから、まだ時間がかかるかもしれない。ということくらいはさすがにイルサもわかってはいるのだが死んだと思っていたレイモンドと再会して、心も通わせることができたのだ。早く帰ってきてほしいと思うくらい当然だ。
「………」
いろいろと聞きたいことがある。
死んだのに生きかえってとか。悪魔との賭けとか。
魔法も悪魔も、歴史上には存在する。しかし、今の世ではそれらが存在している立証はできていない。
本当かウソか。妖精がいたと新聞に載った次の週にはあれは嘘だ偽りだという記事がまた新聞に載り、幽霊が出たと噂になれば見物人が大挙するが、そのときにはもう出ない。いや、ときたま数人、見たことを自称するが……集団ヒステリーの類だろうと科学者の権威が反論する。
そんな中で、素直にそれを真っ向から信じるには時代が悪い。
素直にうれしい気持ちと不安がこみ上げる。
化かされたんじゃないかとか。今更のように不安になる。
(……会いたい)
会って話して、本当に彼が生きていることを確認したい。それで。
それから、どうするんだろう。
イルサはベッドの上で仰向けに寝転びながら天井を見ていた。
そうだ。彼が生きていたならば、これから自分の生活はどう変わるんだろう。
3年間、彼がいないことに慣れるよう生活を送ってたようなものだった。最近になって、やっと、新しい生活に慣れてきたのに。
いきていたならば。
――愛してる。
レイモンドの言葉を思い出し、イルサは顔が赤くなるのを感じた。
室内に自分しかいないのをいいことに、掛け布団を頭までかぶり、ごろごろとベッドの中を左右に転がる。
「……う」
ダンゴムシのように掛け布団ごと丸くなり、荒くなった呼吸を落ち着かせるように深呼吸する。
「どうしよう……」
イルサが一人で悶々としていると、ドアがノックされた。
「はい」
慌ててベッドに寝なおすと、アンネが顔をだした。
「お嬢様すみません。今先ほど電報がありまして……息子がけがをしたと」
「大変……!」
「それでその……お嬢様もだいぶ落ち着かれているみたいですし、買い物なども済ませてあります。レイ様もそろそろお戻りになると思いますし……。本家の方にも手伝いをお願いするよう使いを送りますので私……」
「かまわないわよ。早く息子さんのところに行ってあげて」
そわそわとしだしたアンネにイルサはかぶせるように言った。
アンネは謝罪と感謝を繰り返し、あわただしく荷物をまとめ、イルサにお礼を繰り返したのち、家を出た。
確かアンネの息子は鍛冶職人に弟子入りしたと聞いている。まだ12歳かそこらのはずだ。まだ子どもである。死別した夫との忘れ形見である一人息子は彼女の一番大事なものだ。
(やけどとか……怖いし)
イルサは考えて、少しでも、アンネの息子の怪我が軽いものであるように祈った。
(で)
イルサは、ベッドから降り、アンネの言った食料の状況を見に台所に向かった。
「パンは結構あるし、シチューも……塩漬け肉もあるし、数日は大丈夫そう」
アンネは本家に使いを送り代わりのメイドを、と言っていたがそこまでしなくても問題ないだろう。
イルサの体はもうだいぶ本調子であるし、簡単な家事くらいなら出来る。ただ、防犯的にはどうだろう。
(レイモンドが今日戻ってこなかったら、エレンナに頼んで女子寮を借りようかな)
治安がいいとはいえ、流石に一人で過ごすのは少し不安だ。
いつも、アンネが遠出する時はイルサはエレンナ達の入っている女子寮に泊まっていた。
そう決めてから、いったん紅茶でも飲もうとお湯を沸かす準備を始めた時だった。
玄関の開く音と、「ただいま」という声。
(レイモンド!)
イルサは慌てて玄関に向かった。
「れ、レイおかえりなさい」
迎えにいってイルサは改めて自分の恰好に気づき、少し歩を遅くした。しかし、レイモンドが逆に歩をつめる。
「ただいまイルサ。体調はもう大丈夫?」
「ええ、もう働けそうなくらい元気」
レイモンドはレイとして従者をしていた時と同じ服装をしていた。
今は赤毛に碧眼のもともとのレイモンドの姿だが、左目だけは眼帯に覆われたままだ。
「もらった休みは権利だよ、ゆっくり過ごさないと」
レイモンドはそういうと、イルサの腰に手を回し、彼女のおろした金髪をすくい、口づけた。
流れるような動作にイルサは顔を赤らめる。
「その、距離が近いわ」
「愛し合うものの距離はどれだけ近くてもいいんだよ」
「変なこと言わないで」
イルサはレイモンドの胸を押し、離れた。
レイモンドは肩をすくめ、彼女に問いかけた。
「――で、無事にアンネは出発したのかな?」
その言い方にイルサは息を飲み、レイモンドに振り返った。
「あ、貴方もしかして!」
「安心してよ、別に大したことはない。ちょっと嘘の電報を送っただけだよ、ちゃんと息子さんと工房のほうには事情を説明してあるし、アンネはゆっくり休暇をとるだけさ。旅費もあっちでの滞在費も僕が持つ」
「……なんでそこまで」
「蜜月は二人で過ごすものだよ」
レイモンドの言い草にイルサは肩を落とした。
(そういえばそうだった……)
彼は、計算高い。
いつだって自分のやりたいことをイルサの想像を超える方法で行ってくる。
死んだと思っていた3年間の間に彼のそういうところから意識がそれていたようだ。
(アンネが帰ってきたらなんて言われるだろう……)
そもそもアンネはレイモンドとレイのことについて全く知らないのだ。一から説明しないといけないのか……とイルサは頭が痛くなった。
レイモンドは「あんまり悩まないで」とイルサの耳もとで囁いた。
「そんなことより、イルサこっちへおいで」
レイモンドはイルサの手をつかんで歩き出す。
「その。あのえっと、レイモンド、どこに」
「君の部屋。君を抱きたいんだ。そのためにアンネに遠出してもらったんだから早くしないと時間がもったいない」
「?!」
イルサは息を飲んだ。
「なんですって?!」
レイモンドはイルサに笑いかけ、イルサの部屋のドアを開ける。
「僕は君を愛してる、君は僕を愛してるし、愛してる以上は結婚することになるよ。君ってそういうのちゃんとしたがるし」
「……」
逃げるか逃げないか、イルサが決めかねている間にレイにつかまり、イルサはベッドに押しやられる。
レイモンドはイルサの顔を覗き込むように腰をかがめた。
「安心して、僕は頑張ったからちゃんとそれ相応の報酬はもらえることになったし、これで結婚しても文句をいう人はほとんどいない。――まったくは難しいけど、それくらいなら別にいいでしょ」
「……」
レイモンドの目元は柔らかく、弧を描いている。しかし、その実、瞳はぎらぎらと輝いている。
これは逃げられない。イルサの背中を汗がつたう。
(でも)
イルサだって、これを望んでいなかったわけではない。
イルサは、レイモンドがいうほどうそつきではない、とおもう、その都度その都度の選択がうらめにでただけだ。と言い訳する。
だけど、今回は、今度こそは正直になりたい。
彼に抱かれたい。
彼をかんじたい。
そういう気持ちはちゃんとある。
心の準備くらいはさせてほしいけど。
「れい――」
心を決めてイルサが顔を上げる。瞬間、すぐ目の前にあるレイモンドと眼があった。
「あ――」いうべき言葉は口づけにきえた。
服をはぎ取るように全て脱がされ、ベッドに押しつけられるように胸をもまれる。
あまりの手際の良さに呆然としたイルサに、
「実は女装をする機会があってね。だいぶ女性の服になれたよ」
とレイモンドは言った。
「え?!」
思わずイルサが聞き返すと、レイモンドは小さく「しまった」と言った。
「れれ、レイ……やっぱりごめんなさい。先に話を聞かせて……」
「――いや、ごめん。またあとで」
レイモンドは珍しく慌てた様子で、ごまかすようにイルサの身体から手を放すと、自分の服を脱ぎ捨てた。
そして、再びイルサにのしかかる。
「レイ……!んっ、ん……っ」
「あんまり力入れすぎてもつらくなっちゃうよ」
「で、でもっ」
「いいから、俺に身体をまかせて」
「うう……」
力が抜けないイルサにレイモンドは笑った。
(そんなに詳しくないけど、これからどうなるんだろう……)
父から仕事か結婚かといわれ、仕事を選んでからこのかた、イルサは男女の閨事については耳をふさいできた。
もちろん、職場は女ばかりであり、中には結婚経験者もいないわけではない。
年頃の女が集まれば少しはそういう話は耳にする。
しかし、積極的に聞きにいかないイルサは十分な知識があるとはいえないだろう。
そんなイルサの不安を知るよしもなく、レイモンドは口づけを深めた。
深々と差し入れた舌で口腔内を蹂躙し、呼吸を遮る。息も絶え絶えのイルサをみて満足げにほほえみ、今度はかみつくように首もとに口づけられる。
何度も吸い上げられ、なめられ、イルサはどんどんお腹の下の方がむずむずそわそわしてくるのを感じた。
しかし、レイモンドはわかっているだろうに無視し、首元をゆるめて、胸をさわった。
柔らかい、と触られ舐られ――また、イルサは身をよじる。
(たすけて)
誰ともいえない存在にむやみに助けを求めてしまうほどだった。
執拗に胸の膨らみをもみ、さらには先端を口に含み、こねる。
口に含んだ方とは逆のものも、手ですこし痛いくらいにこねられた。
「ぁ……!」
小さく漏れた声にイルサは驚いた。自分の声ではない、とてもみだらな声だった。
イルサが思わず、レイモンドをみる。目があった彼は、獰猛な瞳でうれしそうに笑った。
恥ずかしさにイルサはレイモンドの頭を抱きしめた。
しかし、そうなると、彼の唇の愛撫はよりいっそう激しくなった。
そして、愛撫は胸だけにとどまらず、彼の手はイルサの太股にふれた。
「あっ……!」
なでるように肌を伝い、外側から内側に手が入り込む。
イルサは羞恥と期待にふるえた。
太股の内側を下からなぞったレイモンドの足は、イルサの足の付け根にたどり着いた。
「準備は、できてきたね」
笑うように柔らかに、しかし、背筋がしびれるような色気に満ちた声で、レイモンドはつぶやいた。
イルサはその声にふるふるとふるえたが、すぐに彼の指の動きに翻弄された。
彼の節だった指はイルサの秘所にふれ、なで上げる。そして、潤みきったそこの蜜をからめ取るように動いた。
「せっかくだし、味見するね」
「え……?」
イルサはレイモンドの言葉の意味が分からずにいると、彼は胸元から顔を上げ、イルサに微笑みかけた後、彼女の足を左右に開いた。
「――――――!」
言葉もなく固まるイルサを気にもとめず、レイモンドはイルサの脚の付け根に顔を近づけた。
「イルサ、とてもきれいだ」
「そ、そんなところをみながらいわないで……!」
「だって、本当にきれいだし。薄々察してたけど、やっぱり毛も薄いんだね」
「え?」
「――あ、いや、別にほかの人の奴をみたりはしてないからそこは安心してほしい。ただ、話にはよく聞くからさ」
「……」
いいわけがましいレイモンドの言葉にイルサは何と言っていいかわからず、黙り込む。むしろ、レイモンドがなにと比較してそういっているのかよりも、今の状況のほうがよっぽどイルサにとって気になるものだった。
「……」
そんなところをまじまじとみないでほしい
でも、いま脚を閉じるとレイモンドの顔を太股で挟んでしまうことになる。
イルサが「まずはレイモンドの頭を手でおしのけようか」と思いはじめた瞬間、レイモンドは、すい、と秘所に口づけた。
「やぁ……!」
「ごめんね、君が変なことを考えるよりさきに気持ちよくなってもらうんだった」
「へ、へんなことって……!あっ、ちょ、れいっ!!そんなところ……!!!」
イルサの秘められた場所をレイモンドは指で割り開いた。くちり、と小さな水音がイルサの耳に届き、反射的に足を閉じようとしてしまう。
「すべすべしていて気持ちがいい」
レイモンドは自分の頭を挟んだイルサの太ももに頬ずりをした。その感触にイルサはさらに震えてしまう。
太ももにはさまれたまま、レイモンドの指がイルサの秘所をたどる。上下に柔らかくなぞってから、秘芯に指が触れた。
「あぁ!!」イルサは思わずレイモンドの頭に手を置き、髪の毛をかき乱してしまう。
「気持ちよくなろうね」
レイモンドはそんなイルサを蕩けるような瞳で見上げた。
イルサはこれ以上何をされるのか考えた瞬間、レイモンドに触られているところがより一層疼くのを感じた。それに気づいたのか気づかなかったのか、次の瞬間レイモンドが激しくイルサの秘芯に食らいついた。
舐めさすり、あまがみをする。そして、彼の指も彼女の蕩けた膣に差し入れられ、幾度となく壁をさする。
試すように指が曲げられ、押し入れられる。
「やっ!!レイッれいっそんなぁ……!」
激しい彼の動きにイルサは身をよじる。いつのまにか指は増やされ、彼女の体はより一層快楽に打ち震えた。
「中の味はどうかな」
レイモンドはそんなイルサの嬌声を聞きながら、彼女の体を開拓することにいそしんでいた。
指を膣からだし、今度は舌を入れる。指が抜かれた瞬間の喪失感をすぐに舌が塗り替えた。
「あッ」
イルサの中を味わうように舌がうごめき、同時に、彼女の愛液を啜る。絶えず零れ落ちるそれをレイモンドは指に絡め、今度は指で秘芯を優しくこねた。
それくらいの時間がたったのだろう。体の中も外も溶かされ、イルサはもう喘ぎ声しか出すことができない。
「そろそろかな」
レイモンドはイルサの膣にもう一度指を差し込む。二本、感触を確認しながら蜜を絡めた指をもう一本。
三本が難なく入ったのを確認すると、レイモンドは微笑んだ。
「痛くない?」
「……」答えられず身をよじったイルサにレイモンドは笑みを深める。
「イルサ、一回達しておこうね」
イルサがその言葉の意味を認識するよりも先に、彼は秘芯に吸い付き、強く吸った。そして、中に入れた指をぐい、とイルサが反応したところをえぐるように動かした。
「や――!」
イルサはあまりの快楽に体をのけぞらせた。それを抑え込みつつ、レイモンドは彼女の蜜を舐め取り、飲む。
そして、「たくさん出てくる……うれしい」とつぶやいてから、レイモンドはイルサの脚の間から体を放した。
「レイ、れい……」
うつろな目でイルサはレイモンドを見る。
「きれいだよイルサ」
レイモンドは眼帯だけを残し、着たままだった服を全て脱いだ。
そして、自身の猛ったそれをほぐしたイルサの秘所に近づける。何度か蜜を絡めるように動かしてからレイモンドはイルサの入口にそれを押し付ける。
「イルサ、愛してる」
「レイ、私も」イルサはつぶやくよう言ってから、少し呼吸をとめ、「私も愛してる」と言った。
「うれしい」
レイモンドはイルサの中に欲望を押し込んでいく。
(い、痛――)
圧迫感と痛みにイルサは口を押えた。
少しでも痛みを紛らわせるために、目の前にあるレイモンドの身体に意識を向ける。
(傷が、いっぱい)
彼の上半身だけであれば、イルサは初めて見るわけではない。
幼少期、一緒に遊んでいて川に落ちた時。公立学校時代、騎士クラスの補習に差し入れをもっていったとき。
レイモンドの裸の上半身を見たことがあった。
しかし、そのときと今ではレイモンドの体の厚みも逞しさも全く異なる。
(私が知らない、レイモンドの三年間)
それを象徴するような彼の体にイルサは自然に手を触れていた。
「……イルサ、そんな余裕あるの?」
からかうようなレイモンドの声。瞬間、彼はイルサの中に自身を突き入れた。
「あっ」
痛みに身をよじるが、レイモンドの体が伸し掛かり、逃げ出すことなどできない。
「イルサ、愛してる。ごめん、止まれない」
レイモンドはイルサの耳にささやく。そして、律動を開始した。
幾度となく、身体を揺さぶられ、イルサは意味をなさない言葉しか吐くことができない。
「力抜いて、イルサ」
耳元でささやかれると、逆に力が入ってしまう
「愛してる、愛してるから、イルサ」
繰り返される言葉。イルサは激しくなる動きにただ翻弄されていく。そして、
「もう離れないで」一つだけ意味のある言葉を言えた。
「うん」
レイモンドの返事は単純で簡素なものだった。それでも、イルサはうれしかった。
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