289 / 318
決戦前にて 本拠地への考察と取り合い
しおりを挟む
みんなの回復を待っている中、純粋なる緑を纏う遮断膜の内側から教団の本拠地と本拠地の正面を守る砦のような町を見る。…………まあ、どう見てもおかしいの一言だ。
僕達のいる合流地点は荒れ地で起伏があまりないひらけた地形なんだけど、本拠地のあるところのみ台地になっている。しかも、その台地は三方が切り立った崖になっていて、残りの砦のような町に面しているところだけなだらかな斜面になって降っているという、まさに守るに易く攻めるに難いと言った感じだ。
周りを見渡しても同じような台地はないのに、何でここだけ台地になってるだろ? 誰かがここを意図的に台地にしたって言われても納得してしまうくらい不自然なんだよね。
それに本拠地とか町に住んでる人達の飲水とかはどうしてるのかも気になる。一時的な遠征とかなら水生魔法でも良いけど、定住するなら自然の水源が必要になるのにそれもない。地下水かなって調べてみても水脈は無かった。あと食料の問題もある。ここから見る限り畑はないし、この荒れ地だと狩りの対象になるような大きい生物もいない。およそ定住できる要素がないのに何で本拠地があるんだ?
ナイルさん達の話だと、それなりの数の人が生活しているらしいんだけど界気化で確認できない。気持ち悪い奴を感知しすぎないように界気化へ制限をかけてるから、そのせいとも言える…………けどすっきりしない。これは自滅覚悟で最高精度の界気化を放つべきかなって考えていると数人の足音が僕に近づいてくる。振り向くとナイルさんが、ナイルさんと同じくらいの大柄な人達と普通の体格の人達を引き連れていた。
「ヤート君、今時間あるかしら?」
「うん、大丈夫だよ。回復してない人がいるの?」
「どの子も順調に回復してるから違うわ。要件はこの子達の紹介よ」
ナイルさんが後ろにいる人達を手で指したから視線を向けると、全員が僕に興味津々という目で見てくる。
「この子達は各国の騎士団総団長とその副団長や副官よ」
「うーん……、総団長さん達は、いろんな意味でナイルさんと同じ感じだね」
「あら、わかる? この子達とは昔から競い合ってた仲なの」
「見るからに強そうっていうのはわかるから、やっぱりそうなんだ」
僕が感心してると、ナイルさんの後ろにいる総団長の一人がナイルさんの肩をガシッとつかむ。
「ちょっとナイル‼︎ 私達の事を早く紹介しなさいよ‼︎」
「ヤート君に興味津々だからって興奮しすぎよ。落ち着いてちょうだい」
「ナイルさん、僕から自己紹介した方が良い?」
「あー……、まずはこの子達の紹介をさせてもらうわ」
そう言ってナイルさんは、肩をつかんでいた人を前へ押し出す。
「この子は烈華国の黄飛河仙で、あそこにいるのが副官の長瑠江よ」
「あなたがヤート君ね。ナイルからおもしろい子がいるって聞いてたから楽しみにしてたの。瑠江ともども、よろしく」
「僕は黒の竜人族のヤーウェルト。みんなからヤートって呼ばれてます。こちらこそ、よろしくお願いします」
「私の事は気軽に黄河って呼んでね。言葉もナイルと話すみたいで大丈夫よ」
「うん、わかった」
黄河さんは綺麗な黒髪をまっすぐ腰まで腰まで伸ばしていて、服装は……前世の何かで見た昔の中国人っぽい見た目って言えば良いのかな? 艶のある青色の良い素材を使って作られた拳法家みたいな服で動きやすそうだ。僕に軽く頭を下げている副官の長さんは黒髪をお団子状にまとめていて、丸眼鏡をかけている。この世界に眼鏡があって驚いたよ。服装は黄河さんと同じく拳法服みたいな感じなんだけど、長さんを見てると学者とか医者みたいな雰囲気だから騎士してるのに違和感がある。
まあ、でも、人は見かけによらないともいうし実際はバリバリの武闘派かもしれないと考えてたら、突然ガバッと抱き上げられた。
「いやーん、想像してたより、ずっと可愛いじゃない‼︎ 持ち帰りた、きゃっ‼︎」
僕を抱き上げた黄河さんのみっちり詰まった胸や腕の筋肉を感じていたら、何かが黄河さんの腕を弾き僕から両腕を外させると僕はグイッと引っ張られギュッと抱きしめられる。うーん、この人の筋肉も見た目通り……いや、見た目以上に筋肉が詰まってる感じだね。
「ナイル‼︎ 何するのよ‼︎ 痛いじゃない‼︎」
「それはこっちの台詞よ‼︎ ヤート君が可愛いのは認めるけれど、いきなりヤート君に変な事しないで‼︎ 私だって我慢してるのに‼︎」
「ナイルは、これからだって会おうと思えば会えるでしょ。私達は今を逃したらヤート君と簡単には会えないんだから譲りなさいよ‼︎」
「教団の本拠地が見えるところにいるんだから状況を考えなさい‼︎ あとヤート君を持ち帰りとか、そんなうらやましい事は絶対にさせないわよ‼︎」
「それなら私の腕を弾く前に口で言えば良いじゃない‼︎ ナイルこそヤート君を離して‼︎」
二ルーメ以上の巨漢であるナイルさんと黄河さんが僕を取り合う。これは、どういう状況なんだろ? それに僕が可愛いって思う感覚も、ちょっと理解ができない。副官のエレレクアさんと長さんを見ても、申し訳なさそうにしてるだけで二人の口論を止めてくれないし、どうしよう。…………まあ、二人は口喧嘩を楽しんでる感じだから、このまま身を任せても良いか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
僕達のいる合流地点は荒れ地で起伏があまりないひらけた地形なんだけど、本拠地のあるところのみ台地になっている。しかも、その台地は三方が切り立った崖になっていて、残りの砦のような町に面しているところだけなだらかな斜面になって降っているという、まさに守るに易く攻めるに難いと言った感じだ。
周りを見渡しても同じような台地はないのに、何でここだけ台地になってるだろ? 誰かがここを意図的に台地にしたって言われても納得してしまうくらい不自然なんだよね。
それに本拠地とか町に住んでる人達の飲水とかはどうしてるのかも気になる。一時的な遠征とかなら水生魔法でも良いけど、定住するなら自然の水源が必要になるのにそれもない。地下水かなって調べてみても水脈は無かった。あと食料の問題もある。ここから見る限り畑はないし、この荒れ地だと狩りの対象になるような大きい生物もいない。およそ定住できる要素がないのに何で本拠地があるんだ?
ナイルさん達の話だと、それなりの数の人が生活しているらしいんだけど界気化で確認できない。気持ち悪い奴を感知しすぎないように界気化へ制限をかけてるから、そのせいとも言える…………けどすっきりしない。これは自滅覚悟で最高精度の界気化を放つべきかなって考えていると数人の足音が僕に近づいてくる。振り向くとナイルさんが、ナイルさんと同じくらいの大柄な人達と普通の体格の人達を引き連れていた。
「ヤート君、今時間あるかしら?」
「うん、大丈夫だよ。回復してない人がいるの?」
「どの子も順調に回復してるから違うわ。要件はこの子達の紹介よ」
ナイルさんが後ろにいる人達を手で指したから視線を向けると、全員が僕に興味津々という目で見てくる。
「この子達は各国の騎士団総団長とその副団長や副官よ」
「うーん……、総団長さん達は、いろんな意味でナイルさんと同じ感じだね」
「あら、わかる? この子達とは昔から競い合ってた仲なの」
「見るからに強そうっていうのはわかるから、やっぱりそうなんだ」
僕が感心してると、ナイルさんの後ろにいる総団長の一人がナイルさんの肩をガシッとつかむ。
「ちょっとナイル‼︎ 私達の事を早く紹介しなさいよ‼︎」
「ヤート君に興味津々だからって興奮しすぎよ。落ち着いてちょうだい」
「ナイルさん、僕から自己紹介した方が良い?」
「あー……、まずはこの子達の紹介をさせてもらうわ」
そう言ってナイルさんは、肩をつかんでいた人を前へ押し出す。
「この子は烈華国の黄飛河仙で、あそこにいるのが副官の長瑠江よ」
「あなたがヤート君ね。ナイルからおもしろい子がいるって聞いてたから楽しみにしてたの。瑠江ともども、よろしく」
「僕は黒の竜人族のヤーウェルト。みんなからヤートって呼ばれてます。こちらこそ、よろしくお願いします」
「私の事は気軽に黄河って呼んでね。言葉もナイルと話すみたいで大丈夫よ」
「うん、わかった」
黄河さんは綺麗な黒髪をまっすぐ腰まで腰まで伸ばしていて、服装は……前世の何かで見た昔の中国人っぽい見た目って言えば良いのかな? 艶のある青色の良い素材を使って作られた拳法家みたいな服で動きやすそうだ。僕に軽く頭を下げている副官の長さんは黒髪をお団子状にまとめていて、丸眼鏡をかけている。この世界に眼鏡があって驚いたよ。服装は黄河さんと同じく拳法服みたいな感じなんだけど、長さんを見てると学者とか医者みたいな雰囲気だから騎士してるのに違和感がある。
まあ、でも、人は見かけによらないともいうし実際はバリバリの武闘派かもしれないと考えてたら、突然ガバッと抱き上げられた。
「いやーん、想像してたより、ずっと可愛いじゃない‼︎ 持ち帰りた、きゃっ‼︎」
僕を抱き上げた黄河さんのみっちり詰まった胸や腕の筋肉を感じていたら、何かが黄河さんの腕を弾き僕から両腕を外させると僕はグイッと引っ張られギュッと抱きしめられる。うーん、この人の筋肉も見た目通り……いや、見た目以上に筋肉が詰まってる感じだね。
「ナイル‼︎ 何するのよ‼︎ 痛いじゃない‼︎」
「それはこっちの台詞よ‼︎ ヤート君が可愛いのは認めるけれど、いきなりヤート君に変な事しないで‼︎ 私だって我慢してるのに‼︎」
「ナイルは、これからだって会おうと思えば会えるでしょ。私達は今を逃したらヤート君と簡単には会えないんだから譲りなさいよ‼︎」
「教団の本拠地が見えるところにいるんだから状況を考えなさい‼︎ あとヤート君を持ち帰りとか、そんなうらやましい事は絶対にさせないわよ‼︎」
「それなら私の腕を弾く前に口で言えば良いじゃない‼︎ ナイルこそヤート君を離して‼︎」
二ルーメ以上の巨漢であるナイルさんと黄河さんが僕を取り合う。これは、どういう状況なんだろ? それに僕が可愛いって思う感覚も、ちょっと理解ができない。副官のエレレクアさんと長さんを見ても、申し訳なさそうにしてるだけで二人の口論を止めてくれないし、どうしよう。…………まあ、二人は口喧嘩を楽しんでる感じだから、このまま身を任せても良いか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
13
あなたにおすすめの小説
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~
千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる