ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~

白黒 キリン

文字の大きさ
51 / 318

王城にて 大きくなりそうな面倒事と黒幕

しおりを挟む
 ギメンの奴隷達が襲い掛かってくると、兄さんは魔力を吹き上げながら集団の中に飛び込んでいくのに対して、姉さんとリンリーはうんざりしつつ迎え撃っていた。ラカムタさんは、……特に変わらないかな。

「おらぁ!! そんなふ抜けた拳で俺を倒せると思うなよ!!」

 兄さんは襲い掛かってくる奴らの拳や蹴りを避けも防御もせずに身体で受け止め、攻撃された事なんか関係ないとばかりに、そのまま逆に殴り倒していた。結構体格の良い獣人や鬼人きじんの数人が、すごい勢いで吹っ飛んで建物の壁や庭の樹々に激突し動かなくなっていく。そんな状況に兄さんを厄介やっかいと思ったのか、バラバラに兄さんを襲わず兄さんの身体を何人かで押し倒しにかかる。……まあ、そんな事されても兄さんは、つかみかかってきた奴らを逆に片手で力任せに引き剥がし振り回して地面に叩きつけていた。

「ガルが暑苦しいわ。リンリー、大丈夫?」
「いえ、でも、なんというか……敵がうっとおしいです」
「……リンリーも言うようになったわね」
「えっ、あ、えっと、その……」
「今までのリンリーが大人しすぎたの。だから気にしなくて良いわ」
「わかりました」

 姉さんとリンリーは、冷静に囲まれないように動きながら次々と襲い掛かってくる相手の攻撃をさばいて、頭部や首に心臓といった急所に打撃を叩き込んで意識を刈り取っていく。うん、なんというか容赦がない。リンリーって前はあんなに少しの事でワタワタしてたのに、よく動けるようになったな。ちょっと感動する。

「サムゼン殿達は、防衛に専念してくれ。向かってくる奴は俺が片付ける」
「申し訳ない。だが無理はしないでもらいたい」
「ヤートに倣って言うとだ、無理な事はしない。なぜなら、たかがこの程度の人数を撃破する事は特に問題にならないからだ!!」

 ……意外とラカムタさんも戦意が高揚してたみたい。ラカムタさん自ら奴隷達の集団に飛び込んで暴れながらも、ギメンの取り巻き達とサムゼンさん達が戦っていて鍔迫り合いなんかで動きが止まれば一瞬で近づき、横や後ろから取り巻き達を容赦なく殴り倒して、また奴隷達との戦いに戻り暴れるという恐ろしく強引なやり方で、兄さん・姉さん・リンリーよりもはるかに多くの奴らを倒していってる。相手の方が可哀想になるくらい、どんどんギメンの奴隷達が倒されていき気がつくと、立っているのは僕ら黒の竜人族りゅうじんぞくと王様やサムゼンさん達にギメンとその取り巻きだけになっていた。…………僕は何もしていない。

「くっ、目の前の獲物を排除するという当たり前の事もできんとは、これだから低俗な亜人どもはつかえん。役立たず共が!!!! おい、強制的に動かせ」
「はっ!! ……生人形劇リビングドールズ発動」

 ギメンのそばに残った取り巻きの黒いフードを被った奴が手に持った水晶を使って魔法を発動させると水晶と奴隷の首輪から淀んだ魔力光が一瞬放たれ、手足が複雑骨折してる奴や意識を失っている奴など、どう考えても動けない奴らが動き始めた。……身体が勝手に動くこの感じは影結かげゆいさんと同じか。

「ギメン、貴様!! 奴隷化だけでなく禁術にまで手を出すとは恥を知れ!!」
「ふん、奴隷や禁術など、ただの道具だ。使える物があるのならば使って何が悪い」
「なぜだ? なぜ、このような事を企てた?」
「バーゲル王、貴様の役目は終わったという事だ。昔から貴様の生ぬるいやり方には虫唾が走る。今を持って貴様らのような不純物を排除し、選ばれた普人族ふじんぞくによる支配を実現させるのだ」

 サムゼンさんと王様とギメンが盛り上がっている。前世でもこの世界でも見た事なかったけど、こういう選民思想の奴って本当にいるんだね。あっと、一応確認しておいた方が良いか。

「ギメンだっけ? 影結かげゆいさんに僕を襲わせたのはお前?」
「ふん、亜人ごときが私の名を口にするな。大人しく死んでおけば良いものを、貴様のような奴が私の目の前にいるなど絶対に許さん!!」
「やっぱり影結かげゆいさんを送り込んできたのはお前か。……それと小物が大物みたいにするのは変だよ」
「貴様!! 私に向かってそんな態度をとる事が許されると思っているのか!!」
「なんでお前に一々認められる必要があるの? あとそれなりに敬ってもらいたいなら、相応の事をやってから言ってほしいかな」
「貴様ぁぁ!!!! 許さん、許さんぞ!!! 簡単には殺さんぞ!!!」

 うるさい奴。でも、こいつ……なんか変だ。何が変と言われるたら説明できないけど、絶対になんか変だ。ギメンが怒り狂っているとフードの奴に生人形劇リビングドールズで操られた奴隷達が、また襲いかかってきた。ただ今度は僕の方にほとんど奴が向かって来て、ラカムタさん・兄さん・姉さん・リンリーは残りの奴らに足止めされている。さすがにラカムタさん達でも、殴り倒されてもすぐに起き上がってくるような異常な奴らは戦い辛いようだ。まあ、問題ないけどね。なんでかと言うと……。

「ガアアァァアアァ!!!!」
「ブオオォォオオォ!!!!」

 鬼熊オーガベア破壊猪ハンマーボアがいるからだ。あと少しで僕に手が届くというところで、二体が奴隷達に突進してきて吹き飛ばす。……不思議だ。なんでこの二体には、何もしていないんだろ? まあ、たいていの妨害はこの二体には意味がないから、何もしなかったのかもしれないけど不思議だ おっと、これ以上奴隷達が重傷になると、治すのが大変だから動きを止めよう。

緑盛魔法グリーンカーペット超育成ハイグロウ緑盛網プラントネット

 鬼熊オーガベアの突進や前足の振り回し、破壊猪ハンマーボアの頭突きや踏み潰しで、瀕死と言っていいような状態になっていく奴隷達を庭の蔓植物や芝などの下草が拘束していく。でも、ほんの少しでも動ければ手足がちぎれても構わないという感じに暴れるから、念入りに関節を固定する形で拘束してもらう。それとラカムタさん達を足止めしてた奴らも、拘束して植物に僕の近くへ運んでもらった。それじゃあ応急処置になるけど、まずは内蔵の損傷とかを治療しないとね。いつものように腰の小袋から薬草団子を取り出して魔法を発動させる。

水生魔法ワータ緑盛魔法グリーンカーペット強薬水液ハイハーブリキット。それと薬水霧ハイハーブミスト

 さっきの二体を見張ってた騎士達に使った薬水を魔法で緑色の霧に変えて、植物によって拘束されている奴隷達の鼻から体内に入れていく。液体にするより効果は落ちるけど、効果の低さは量で補えば良いし無理やり口を開ける手間がないからこっちの方が良い。応急処置が終わって、ギメンの方を見ると唖然としていた。

「……バカな」

 ……やっぱりこいつ変だ。この世界の常識で考えて、この程度で竜人族りゅうじんぞくや高位の魔獣二体をどうにかできるわけないのに、なんでこんなに唖然としているんだ? 誰かにこれで大丈夫だって言われてた? …………もしかして。

緑盛魔法グリーンカーペット緑葉飛斬リーフスラッシュ

 僕が新たに魔法を発動させると、僕の近くにある樹木がザワッと震えて葉が数十枚舞い落ち地面に落ちる寸前で空中にピタッと止まる。そして全てが不規則にでも僕の狙い通りにギメンとその取り巻きへと向かっていき、一度高度を上げると全ての葉がシュバババババババッと降り注ぎ土煙が起きる。そしてその土煙が晴れたら僕の予想した通りの光景になっていた。

「なるほど、なんか変だと思ってたけど、やっぱり黒幕はお前だったのか」

 煙が晴れたそこには、緑葉飛斬リーフスラッシュを身体に受けたギメンとその取り巻き達が黒いフードを被った奴を守るかのように囲んでいた。そしてプツンと糸が切れたかのようにギメン達が倒れると、フードの奴は大きなため息をついた。

「はぁ、失敗したなぁ。こんなにあっさりバレるとは思わなかった」

 聞いていて気持ちが悪くなるような軽薄な声だった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。

 感想や評価もお待ちしています。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~

千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...