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王城にて 個人の魔法と植物の力
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「はぁ~、なんでバレたのかな? 教えてくれる?」
黒いフードを脱ぐと見えてきたのは、くすんだ赤い髪に縁無しの丸メガネで、顔は……なんか薄い。声の気持ち悪い軽薄さだけが、すごく強調されてる。
「…………」
「おいおい、無視しないでほしいなぁ。僕と会話しようよ」
「……できればお前とは会話したくない」
「僕と君は初対面なのに、さっそく嫌われてる。なんでかなぁ?」
「お前……気持ち悪い。特に声と目が気持ち悪い。そんな奴とは誰だって会話したくない」
「あははぁ~、声と目が気持ち悪いかぁ。それなら仕方ないね。死んでよ」
男が手に持った水晶に自分の意思を込めるようにつぶやくと、無表情なギメンとその取り巻き達が動こうとしたけど起き上がるどころかピクリとも動けなくなっていた。
「あれ?」
「なんのために、会話したくないお前と会話したと思ってるの? 時間稼ぎに決まってるよ」
僕は会話してる間に下草を静かに成長させて、ギメンとその取り巻きの関節を地面に縛っていた。さて、気持ち悪い奴が僕から目を離すっていう隙ができたところで攻めるか。
「緑盛魔法・超育成・百枝槍・緑葉飛斬」
さっきと同じ僕の近くの樹がザワッと震えると数十枚の葉が舞い落ちて降り注ぎ、さらに枝先から新たな枝が気持ち悪い奴を刺し貫こうと急速に伸びていく。樹の負担になるから同じ樹で魔法は使いたくないんだけど、今回は見逃してもらおう。なぜなら目の前の気持ち悪い奴は、できるだけ早く倒す必要がある奴だと思うからだ。
「おおぅ、容赦ないな~。完全に僕を殺る気か。ま、甘いけどね。黒影門開放」
気持ち悪い奴が魔法を唱えると足元の影が、ボコボコと泡立ち無数の骸骨がはい出てきて周りを囲み、僕が放った百枝槍も緑葉飛斬も骸骨の壁に遮られた。そして気持ち悪い奴は、落ち着き払って会話を続けてくる。
「改めて自己紹介といこうかな。僕は禁隷術師のハザラン。あらゆる存在を隷属させる事ができる。君が予想した通り、君が地面に縛り付けてるこの無様な奴らを生き人形にしたのは僕さ」
「という事は、ヤート殿を襲わせたのもお前の仕業か!!」
「まあね。僕の仕事の邪魔をするんだから排除しようとするのは当然だろ」
「仕事だと?」
「そうそう。この国を隷属させろって依頼されて色々やってたんだよ。……例えば誰かさんに虫を寄生させるとかね」
「貴っ様ぁぁぁ!!」
サムゼンさんがハザランに突進していくけど、なんか嫌な予感がするからサムゼンさんの足を縛る。その結果サムゼンさんはビタンッと顔から地面に倒れて、かなり痛いのか顔をおさえながらうめいていた。ちょうど良いから植物にラカムタさんの方まで引きずってもらう。
「ウグオオォ、……ヤート殿何を」
「サムゼンさん、禁隷術師って名乗ってる奴に不用意に近づかないで。……少なくともこの気持ち悪い奴は、影結さんみたいに首輪で身体を操ったりギメンみたいに意識を無くせる。それなら他にも何かできるはずだよ」
「……このものは、この国を姫様を害そうとしている。それを見逃せというのか」
「冷静になってって言ってる。この気持ち悪い奴が素なのか計算なのかわからないけど、相手の精神を乱して精神的に隙が出来た時に何か仕掛けてくると思う。もう一度言うけど冷静になって。もし冷静になれないなら邪魔」
「白い竜人君、僕は自己紹介したんだから、ちゃんと名前で呼んでくれよ。寂しいじゃないか」
ハザランが僕を見てくる。完全に僕に興味が向いたらしい。
「…………そんなの少しも感じてないのに、よくそんな事を口にできるね」
「ああ、ごめんごめん。相手の気を悪くさせる言動が、癖みたいになってるだけだから気にしないでくれ。それにしても白い竜人君、君は僕と会話しててもほぼ精神的な変化が無いなんて実に珍しいね。もし精神的に乱れたら今すぐにでも君を生き人形にしたい。すごく好みだ」
「ふーん、やっぱり僕みたいな欠色は珍しいのか」
「それも確かにあるけれど、僕は何より君の存在自体に惹かれている。君には無様な使い捨てじゃない僕のお気に入りにぜひなってほしい。どうかな?」
「嫌に決まってる」
「残念……本当に残念だ。それならこうするとしよう。黒鎖呪縛」
ハザランが魔法を発動させると兄さんと姉さんの周りに黒い人魂が現れて、その人魂から黒い鎖が飛び出し兄さんと姉さんに絡め取っていく。さすがに兄さんと姉さんでも不意打ち過ぎて反応できなかったみたいだ。
「捕獲完了。その黒い鎖は身体を縛るとともに身体の中に入り魂を直接縛る。どうする? 君の家族だろ? 君が僕の人形になってくれるなら開放するよ?」
ハザランの言うように、兄さんと姉さんに絡まった鎖が二人の身体にどんどん入っていく。
「ガル殿!! マイネ殿!!」
「サムゼン殿、さっきヤートに言われただろう。下手に動くな」
「しかし、二人が……」
「ヤートを見てみろ」
「ヤート殿を? …………なぜあれほど平静でいられるのだ?」
「俺は今までヤートが慌てているところを見た事がないし、それにこの程度の事をヤートが解決できないわけが無い。そうだろヤート?」
「へえ、僕の魔法を破れるんだ。お手並み拝見といこうか」
「それじゃあ、緑盛魔法・超育成・聖月草」
あらかじめ準備してあった魔法を発動させると、兄さんと姉さんの足下、ラカムタさんやサムゼンさん王様達の足下、僕の足下に白いキラキラ光る草がはえてくる。そして聖月草が成長し小さな花を咲かせると、聖月草を中心に薄い光が広がっていき僕達を包み込む。その光は光源としては心許ないけど確かな効果を示して、兄さんと姉さんに絡まっていた黒い鎖を灰にした。
「兄さん、姉さん、大丈夫?」
「おう、悪い。助かった」
「ヤート、ありがとう」
「うん、みんな呪いなんかに耐性が付くから、足下の聖月草から葉を少しちぎって食べて」
僕の言葉にみんなはすぐに食べて、僕は鬼熊と破壊猪に食べさせる。これで直接魔法や呪いをかけられない限り大丈夫だ。さて、これからどうしようかな。二体に突撃してもらうのが一番手っ取り早いけど、あっちもただじゃ負けないだろうから悩む。それでもだいたい何もしてくるか予想は付くからなんとかなるか。とりあえずは二体にいつでも突撃できるように準備してもらう。二体の身体をポンと軽く叩くと、二体は了解とばかりに力を溜め始めた。うん、本当に頼りになるね。
「そんな小さな草に僕の魔法が破れるなんて、かなり驚きだよ」
「お前の魔法が破れるのなんて当然なのに何当たり前の事に驚いてるの?」
「身体的にも魔力的にも弱いって言われてる欠色に破れるのが当然か。言ってくれるね」
「僕の魔法の事を言ってるんじゃないから勘違いしないで」
「どういう事かな?」
「植物はずっと昔から世界を支えてきた。その植物のごく一部にでも、たかが人一人の魔法を破る事なんて簡単だって事」
「……なるほど、…………それじゃあ僕の魔法が植物に負けるってところをもっと見せてくれよ。黒帯浸食」
ハザランが、一度うつむいて考え込んだ後、顔を上げると真剣な顔になっていた。ふーん、そんな顔もできるのか。ちょっと驚いた。ここからが本番って事だね。…………無理しないように頑張ろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
黒いフードを脱ぐと見えてきたのは、くすんだ赤い髪に縁無しの丸メガネで、顔は……なんか薄い。声の気持ち悪い軽薄さだけが、すごく強調されてる。
「…………」
「おいおい、無視しないでほしいなぁ。僕と会話しようよ」
「……できればお前とは会話したくない」
「僕と君は初対面なのに、さっそく嫌われてる。なんでかなぁ?」
「お前……気持ち悪い。特に声と目が気持ち悪い。そんな奴とは誰だって会話したくない」
「あははぁ~、声と目が気持ち悪いかぁ。それなら仕方ないね。死んでよ」
男が手に持った水晶に自分の意思を込めるようにつぶやくと、無表情なギメンとその取り巻き達が動こうとしたけど起き上がるどころかピクリとも動けなくなっていた。
「あれ?」
「なんのために、会話したくないお前と会話したと思ってるの? 時間稼ぎに決まってるよ」
僕は会話してる間に下草を静かに成長させて、ギメンとその取り巻きの関節を地面に縛っていた。さて、気持ち悪い奴が僕から目を離すっていう隙ができたところで攻めるか。
「緑盛魔法・超育成・百枝槍・緑葉飛斬」
さっきと同じ僕の近くの樹がザワッと震えると数十枚の葉が舞い落ちて降り注ぎ、さらに枝先から新たな枝が気持ち悪い奴を刺し貫こうと急速に伸びていく。樹の負担になるから同じ樹で魔法は使いたくないんだけど、今回は見逃してもらおう。なぜなら目の前の気持ち悪い奴は、できるだけ早く倒す必要がある奴だと思うからだ。
「おおぅ、容赦ないな~。完全に僕を殺る気か。ま、甘いけどね。黒影門開放」
気持ち悪い奴が魔法を唱えると足元の影が、ボコボコと泡立ち無数の骸骨がはい出てきて周りを囲み、僕が放った百枝槍も緑葉飛斬も骸骨の壁に遮られた。そして気持ち悪い奴は、落ち着き払って会話を続けてくる。
「改めて自己紹介といこうかな。僕は禁隷術師のハザラン。あらゆる存在を隷属させる事ができる。君が予想した通り、君が地面に縛り付けてるこの無様な奴らを生き人形にしたのは僕さ」
「という事は、ヤート殿を襲わせたのもお前の仕業か!!」
「まあね。僕の仕事の邪魔をするんだから排除しようとするのは当然だろ」
「仕事だと?」
「そうそう。この国を隷属させろって依頼されて色々やってたんだよ。……例えば誰かさんに虫を寄生させるとかね」
「貴っ様ぁぁぁ!!」
サムゼンさんがハザランに突進していくけど、なんか嫌な予感がするからサムゼンさんの足を縛る。その結果サムゼンさんはビタンッと顔から地面に倒れて、かなり痛いのか顔をおさえながらうめいていた。ちょうど良いから植物にラカムタさんの方まで引きずってもらう。
「ウグオオォ、……ヤート殿何を」
「サムゼンさん、禁隷術師って名乗ってる奴に不用意に近づかないで。……少なくともこの気持ち悪い奴は、影結さんみたいに首輪で身体を操ったりギメンみたいに意識を無くせる。それなら他にも何かできるはずだよ」
「……このものは、この国を姫様を害そうとしている。それを見逃せというのか」
「冷静になってって言ってる。この気持ち悪い奴が素なのか計算なのかわからないけど、相手の精神を乱して精神的に隙が出来た時に何か仕掛けてくると思う。もう一度言うけど冷静になって。もし冷静になれないなら邪魔」
「白い竜人君、僕は自己紹介したんだから、ちゃんと名前で呼んでくれよ。寂しいじゃないか」
ハザランが僕を見てくる。完全に僕に興味が向いたらしい。
「…………そんなの少しも感じてないのに、よくそんな事を口にできるね」
「ああ、ごめんごめん。相手の気を悪くさせる言動が、癖みたいになってるだけだから気にしないでくれ。それにしても白い竜人君、君は僕と会話しててもほぼ精神的な変化が無いなんて実に珍しいね。もし精神的に乱れたら今すぐにでも君を生き人形にしたい。すごく好みだ」
「ふーん、やっぱり僕みたいな欠色は珍しいのか」
「それも確かにあるけれど、僕は何より君の存在自体に惹かれている。君には無様な使い捨てじゃない僕のお気に入りにぜひなってほしい。どうかな?」
「嫌に決まってる」
「残念……本当に残念だ。それならこうするとしよう。黒鎖呪縛」
ハザランが魔法を発動させると兄さんと姉さんの周りに黒い人魂が現れて、その人魂から黒い鎖が飛び出し兄さんと姉さんに絡め取っていく。さすがに兄さんと姉さんでも不意打ち過ぎて反応できなかったみたいだ。
「捕獲完了。その黒い鎖は身体を縛るとともに身体の中に入り魂を直接縛る。どうする? 君の家族だろ? 君が僕の人形になってくれるなら開放するよ?」
ハザランの言うように、兄さんと姉さんに絡まった鎖が二人の身体にどんどん入っていく。
「ガル殿!! マイネ殿!!」
「サムゼン殿、さっきヤートに言われただろう。下手に動くな」
「しかし、二人が……」
「ヤートを見てみろ」
「ヤート殿を? …………なぜあれほど平静でいられるのだ?」
「俺は今までヤートが慌てているところを見た事がないし、それにこの程度の事をヤートが解決できないわけが無い。そうだろヤート?」
「へえ、僕の魔法を破れるんだ。お手並み拝見といこうか」
「それじゃあ、緑盛魔法・超育成・聖月草」
あらかじめ準備してあった魔法を発動させると、兄さんと姉さんの足下、ラカムタさんやサムゼンさん王様達の足下、僕の足下に白いキラキラ光る草がはえてくる。そして聖月草が成長し小さな花を咲かせると、聖月草を中心に薄い光が広がっていき僕達を包み込む。その光は光源としては心許ないけど確かな効果を示して、兄さんと姉さんに絡まっていた黒い鎖を灰にした。
「兄さん、姉さん、大丈夫?」
「おう、悪い。助かった」
「ヤート、ありがとう」
「うん、みんな呪いなんかに耐性が付くから、足下の聖月草から葉を少しちぎって食べて」
僕の言葉にみんなはすぐに食べて、僕は鬼熊と破壊猪に食べさせる。これで直接魔法や呪いをかけられない限り大丈夫だ。さて、これからどうしようかな。二体に突撃してもらうのが一番手っ取り早いけど、あっちもただじゃ負けないだろうから悩む。それでもだいたい何もしてくるか予想は付くからなんとかなるか。とりあえずは二体にいつでも突撃できるように準備してもらう。二体の身体をポンと軽く叩くと、二体は了解とばかりに力を溜め始めた。うん、本当に頼りになるね。
「そんな小さな草に僕の魔法が破れるなんて、かなり驚きだよ」
「お前の魔法が破れるのなんて当然なのに何当たり前の事に驚いてるの?」
「身体的にも魔力的にも弱いって言われてる欠色に破れるのが当然か。言ってくれるね」
「僕の魔法の事を言ってるんじゃないから勘違いしないで」
「どういう事かな?」
「植物はずっと昔から世界を支えてきた。その植物のごく一部にでも、たかが人一人の魔法を破る事なんて簡単だって事」
「……なるほど、…………それじゃあ僕の魔法が植物に負けるってところをもっと見せてくれよ。黒帯浸食」
ハザランが、一度うつむいて考え込んだ後、顔を上げると真剣な顔になっていた。ふーん、そんな顔もできるのか。ちょっと驚いた。ここからが本番って事だね。…………無理しないように頑張ろう。
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