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・第八話「蛮姫大いに考え論じ教帝に目通りとなる事(後編)」
この世界、〈あまねく全て〉には神秘が実在する。
それは国家や民族によって異なる信仰によって得られる力であり、信仰対象によってその教義に則った方向性を持つ。
例えば正にこの場にいる教帝ペルロ十八世が代表する司祭達が説くレーマリアの国教である単神教による神秘は、〈万象の理を尊崇することによる物質や技量の強化・向上〉を基本とする。具体的な例を挙げれば単神教による神秘を用いる事で出来る事としては〈土木や金属のより容易かつ精密な加工〉〈飲食物の品質・保存性の向上〉〈薬物や炎といった人の手で起こす反応の効果向上〉〈自己の技量向上〉等が挙げられる。
東吼の天教は比較的単神教に近い一神教だが、宗教指導者が帝を兼ねるレーマリアとは違い僧侶は皇帝に従うし、教義も正確に言えば単神教の〈理の崇拝〉とやや異なる〈天地の秩序を尊ぶ事による世界の秩序化〉であり、〈天候や河川の制御〉〈自己や配下や家畜の精神統制〉等を主な神秘とする。
南黒の命魂教は神聖族長達の支配と〈命と魂の尊重〉を教義として〈命を長らえる事〉〈思いを遂げる事〉に特化し、命の保存や呪詛等やや強力な神秘を用いるが死を忌むが故に比較的平和主義であり、西馳の生道は宗教指導者を置かず皆の合議で経典を解釈する集団信仰制と〈現世利益の為の契約〉を重んじるという風変わりな教義と、〈捧げた分の対価を得る〉という応用と効率に富んだ神秘を用いる。
そしてアルキリーレが属していた北摩の多神教はというと、かつて述べた〈自然崇拝と英雄崇拝〉から来るその神秘は〈個々の崇拝対象の力を得る事〉である。
獣を崇める事で獣の如き力を得る。英雄を崇める事で英雄の如き力を得る。
それは単純だが、戦士としては最強だ。単神教の神秘で人間の限界に迫る技量を得ようとも、天教の神秘で精神力を研ぎ澄まし最大の鍛錬と人間の肉体の箍を外した力を得ようとも、戦士としての力は人の肉体構造を越える多神教の神秘には及ばない。
先のアルキリーレの戦いを見れば分かる通り、人間の限界と人間を越えたものの差は大きいのだ。まして単純な身体能力だけでは無い。獣を崇めるものには暗視や超嗅覚や超音波聴覚、飛翔する鳥の類を崇める者に至っては限定的な飛翔能力すら得るし、英雄を崇める者もまた、鉄を断つ、城門を覆す、大遠距離狙撃、串刺しになっても戦い続ける等といった、崇める英雄が一生を鍛錬に懸けて編み出した技や天性の才能や一度きり成し遂げた奇蹟や突然変異的に得た力を信仰を通じて継続的に会得できるという意味で、人を崇めながら人を越えるものである。
だが、強烈だが単純な身体能力の強化が大半の故に文明としては他の地域に劣る。植物や水や鉱石・金属を含む石を崇める事で対象の知識や対象に干渉する神秘を得る者、文化英雄を崇める事で知識や技術を得る者もいるが、それらは稀なのだ。レーマリアのような巨大な城や投石機や投矢機を作る事は出来ない。レーマリア等他の神秘はそういった兵器を作る・軍略を練るにおいても助けとなる事が多いが、多神教にはそれが殆ど無い。故に将来に於いて戦士の優位が何時まで通じるものかと、だからこそアルキリーレは統一を焦っていたのだが……
「アルキリーレ嬢はやはりヘルマン・ゲツラスの血を引くとの事ですので、北摩の地における多神教では獅子を象徴として崇めるのでしょうか」
「そうじゃ。尤も神官や故郷と縁は絶ったが、俺が獅子である事は変わりもはん」
今は異教の異郷に一人。異教徒でも穏やかに応じそしてまた異郷の知識も豊富らしい教帝ペルロ十八世に対して、アルキリーレは唯の一人のアルキリーレとなっても王の誇りを失わず堂々と応答する。そんな様は、やはり正に黄金の獅子で。
そんな彼女が多神教において、群の為に命を惜しまぬ狼、知恵と力と執念と貪欲を併せ持ちながら狂奔すれば炎も恐れず立ち向かう羆、時に肉食獣や人の子や羚羊すら崖から落として狩る大鷲等様々な崇拝対象がある中で、象徴とするのが獅子という事に、傍で聞くカエストゥスは何となく嬉しい納得感を覚えた。
そう、アルキリーレは黄金の獅子に例えられるが、北摩には実際獅子がいる。南黒に住まう縄張りを争い大型獣を追う雄が群れでの狩りを行う鬣の無い雌達を従えるそれとは違う。南黒の獅子と違って群れを作らず、洞窟に住まい、雌雄共に鬣を持ち、大野牛や篦鹿を狩るだけでなく他の肉食動物と争って獲物を奪う事もある頂点捕食者。地球で言うヨーロッパホラアナライオンとバーバリーライオンを混ぜたような生物だ。
余談だが東吼と西馳に獅子はいない。東吼には虎が、西馳には大豹がいるが、これ以上の〈あまねく全て〉の生物に関する説明は本題から逸れる為ここまでとする。
「心細くは、ありませんか?」
故郷や一族、宗派と縁を失い、異教の異教に一人。宗教指導者らしい優しさと、宗教指導者らしからぬ異教徒への優しさを以てペルロ十八世は語りかけるが。
「何も。郎党には愛想を尽かしもしたし、元々俺は大して神秘を使けこなせておりもはんしな。神を見て我が振りば直す事ばあっても、神に頼れる気質では俺はありもはんで」
「えっ」
宗教指導者にするにはあまりに図太い答えをするアルキリーレであったが、隣のカエストゥスは別の意味で素で驚いた。使いこなせてない? アレで? あの戦闘能力はアルキリーレ自身の鍛えた技量と身体能力の成果でもあるが、人間の限界を超えた身体能力は獅子の神秘の賜物もあるのは間違い無いではないか。
「……獅子の神秘には、大喝の他に威風や守護の神秘があるといいますが……」
「そげなこっだ。尤も、それでも戦では誰にも負けもはんかったがの」
ペルロは知識を元に問い、アルキリーレは同意し苦笑した。北摩獅子は洞窟に住まう故に南黒獅子と性質が違うところが多く寧ろ東吼の虎に近い部分もあるが、多数の雌と広い縄張りを持つ南黒獅子程多くは抱え込まないものの巣穴や子を守る習性がある。堂々たる姿やよく通る吠え声は目の前の獣を威嚇するだけでなく威風を以て縄張りから敵を遠ざけ、子等を統率する。
アルキリーレの叫びが敵を強く威圧するのは彼女自身の並外れた殺気と鍛え抜かれた肺活量故の大声もあるが、美女である彼女の姿が敵の男を恐れさせるのはその強い闘争本能と殺気を直接に伝える獅子の神秘の力もある。
しかアルキリーレは身体能力強化以外は他者を恐怖させる大喝以外には威風を以て他者を統率したり威圧したり己に引きつけたりする事て他者を守る類の本来獅子に備わる筈の神秘を使えないらしい。故に〈使いこなせていない〉と。
しかし、それでも尚、身体能力強化の神秘と大喝の神秘、そしてアルキリーレ自身の鍛えた武と身体能力と軍略、それだけで北摩の最強者であったのだ。
故にカエストゥス一人守る事は自ら突っ込み敵を蹴散らす事でこなせるが、結局誰も己の巣穴に住まわせる事は出来なかったと黄金獅子は苦笑した。
「俺にはどうも、おぬしらんごたる愛想良うする事が不得手での、不調法ばあったらすまんわい」
「それは……」
ペルロ十八世は察する。それは、愛想というのは適切では無いのではないかと。恐らく、彼女は他者を上手く愛せないし、上手く愛される事が出来ないのではないかと。国や民を思う志があったからこそ立ったのだろうに、それを他者に伝える事が出来なかったのではないか。故に、国を失ったのではないか。男尊女卑故の問題でもあっただろうが……そうでなければ神秘学の観点からしても政治的な観点からとしても、これほどの強者が神秘を不完全にしか使えない事はこの〈あまねく全て〉の理からして不自然で、そこから考えるのなら彼女にあまりに味方がいない事の理由とも考えられるのではないだろうかと、ペルロは思った。
それは余りに寂しいし、寂しそうではないかと。間違い無く、友たるカエストゥスが彼女を放っておけないのも、その為だろうと。
自分も、彼女を放っておけなくなってしまったとペルロはその瞬間感じた。
「今でなくても、もしいつか。寂しいと思う時がありましたら、我が友カエストゥスだけでなく私も相談に乗りますよ……その時は私は最善を尽くしましょう。聖職者としてだけではなく、個人として」
異教である事など気にせずに、教帝の身であるのに女性の幸せを最優先してしまう所は、友たるカエストゥスと同じく女性と文化と平和をこよなく愛するレーマリア人気質を全く制御出来ていないなと内心苦笑しながら、ペルロ十八世は改めてそう約束した。男としても聖職者としても、察した事柄故に放ってはおかないと。
「お気持ちは有り難く頂戴しもす」
今はまだいまいちピンと来ていない表情だが、アルキリーレはその心遣いには謝意を示した。そうであるからこそペルロもカエストゥスも放っておけないのだが……
「じゃっどん、助言は何も問題なかろ」
故に、己は威風が無くとも、助言者としてならば立ち回れる、と、能力としての話をして。今はまだ、そこを解きほぐすには時間がかかるかと、ペルロとカエストゥスは共に理解した。
「我が友の助言者になってくれるのは、大変心強い。彼は善男ではありますが、戦には疎い。頼みましたよ」
「人の事はお前も言えないだろペルロ、昔は船乗司祭もしてたのに軍船用の衝角を鯨避けだとずっと勘違いしてた癖に……」
「本当て大丈夫かこいつら……」
故にともあれ、友と任せる事を今はまず認めるペルロであったが、その後の二人の発言があまりに軍事的にグダグダすぎて内に無意識に抱える問題より先に頭を抱えるアルキリーレであった。
それは国家や民族によって異なる信仰によって得られる力であり、信仰対象によってその教義に則った方向性を持つ。
例えば正にこの場にいる教帝ペルロ十八世が代表する司祭達が説くレーマリアの国教である単神教による神秘は、〈万象の理を尊崇することによる物質や技量の強化・向上〉を基本とする。具体的な例を挙げれば単神教による神秘を用いる事で出来る事としては〈土木や金属のより容易かつ精密な加工〉〈飲食物の品質・保存性の向上〉〈薬物や炎といった人の手で起こす反応の効果向上〉〈自己の技量向上〉等が挙げられる。
東吼の天教は比較的単神教に近い一神教だが、宗教指導者が帝を兼ねるレーマリアとは違い僧侶は皇帝に従うし、教義も正確に言えば単神教の〈理の崇拝〉とやや異なる〈天地の秩序を尊ぶ事による世界の秩序化〉であり、〈天候や河川の制御〉〈自己や配下や家畜の精神統制〉等を主な神秘とする。
南黒の命魂教は神聖族長達の支配と〈命と魂の尊重〉を教義として〈命を長らえる事〉〈思いを遂げる事〉に特化し、命の保存や呪詛等やや強力な神秘を用いるが死を忌むが故に比較的平和主義であり、西馳の生道は宗教指導者を置かず皆の合議で経典を解釈する集団信仰制と〈現世利益の為の契約〉を重んじるという風変わりな教義と、〈捧げた分の対価を得る〉という応用と効率に富んだ神秘を用いる。
そしてアルキリーレが属していた北摩の多神教はというと、かつて述べた〈自然崇拝と英雄崇拝〉から来るその神秘は〈個々の崇拝対象の力を得る事〉である。
獣を崇める事で獣の如き力を得る。英雄を崇める事で英雄の如き力を得る。
それは単純だが、戦士としては最強だ。単神教の神秘で人間の限界に迫る技量を得ようとも、天教の神秘で精神力を研ぎ澄まし最大の鍛錬と人間の肉体の箍を外した力を得ようとも、戦士としての力は人の肉体構造を越える多神教の神秘には及ばない。
先のアルキリーレの戦いを見れば分かる通り、人間の限界と人間を越えたものの差は大きいのだ。まして単純な身体能力だけでは無い。獣を崇めるものには暗視や超嗅覚や超音波聴覚、飛翔する鳥の類を崇める者に至っては限定的な飛翔能力すら得るし、英雄を崇める者もまた、鉄を断つ、城門を覆す、大遠距離狙撃、串刺しになっても戦い続ける等といった、崇める英雄が一生を鍛錬に懸けて編み出した技や天性の才能や一度きり成し遂げた奇蹟や突然変異的に得た力を信仰を通じて継続的に会得できるという意味で、人を崇めながら人を越えるものである。
だが、強烈だが単純な身体能力の強化が大半の故に文明としては他の地域に劣る。植物や水や鉱石・金属を含む石を崇める事で対象の知識や対象に干渉する神秘を得る者、文化英雄を崇める事で知識や技術を得る者もいるが、それらは稀なのだ。レーマリアのような巨大な城や投石機や投矢機を作る事は出来ない。レーマリア等他の神秘はそういった兵器を作る・軍略を練るにおいても助けとなる事が多いが、多神教にはそれが殆ど無い。故に将来に於いて戦士の優位が何時まで通じるものかと、だからこそアルキリーレは統一を焦っていたのだが……
「アルキリーレ嬢はやはりヘルマン・ゲツラスの血を引くとの事ですので、北摩の地における多神教では獅子を象徴として崇めるのでしょうか」
「そうじゃ。尤も神官や故郷と縁は絶ったが、俺が獅子である事は変わりもはん」
今は異教の異郷に一人。異教徒でも穏やかに応じそしてまた異郷の知識も豊富らしい教帝ペルロ十八世に対して、アルキリーレは唯の一人のアルキリーレとなっても王の誇りを失わず堂々と応答する。そんな様は、やはり正に黄金の獅子で。
そんな彼女が多神教において、群の為に命を惜しまぬ狼、知恵と力と執念と貪欲を併せ持ちながら狂奔すれば炎も恐れず立ち向かう羆、時に肉食獣や人の子や羚羊すら崖から落として狩る大鷲等様々な崇拝対象がある中で、象徴とするのが獅子という事に、傍で聞くカエストゥスは何となく嬉しい納得感を覚えた。
そう、アルキリーレは黄金の獅子に例えられるが、北摩には実際獅子がいる。南黒に住まう縄張りを争い大型獣を追う雄が群れでの狩りを行う鬣の無い雌達を従えるそれとは違う。南黒の獅子と違って群れを作らず、洞窟に住まい、雌雄共に鬣を持ち、大野牛や篦鹿を狩るだけでなく他の肉食動物と争って獲物を奪う事もある頂点捕食者。地球で言うヨーロッパホラアナライオンとバーバリーライオンを混ぜたような生物だ。
余談だが東吼と西馳に獅子はいない。東吼には虎が、西馳には大豹がいるが、これ以上の〈あまねく全て〉の生物に関する説明は本題から逸れる為ここまでとする。
「心細くは、ありませんか?」
故郷や一族、宗派と縁を失い、異教の異教に一人。宗教指導者らしい優しさと、宗教指導者らしからぬ異教徒への優しさを以てペルロ十八世は語りかけるが。
「何も。郎党には愛想を尽かしもしたし、元々俺は大して神秘を使けこなせておりもはんしな。神を見て我が振りば直す事ばあっても、神に頼れる気質では俺はありもはんで」
「えっ」
宗教指導者にするにはあまりに図太い答えをするアルキリーレであったが、隣のカエストゥスは別の意味で素で驚いた。使いこなせてない? アレで? あの戦闘能力はアルキリーレ自身の鍛えた技量と身体能力の成果でもあるが、人間の限界を超えた身体能力は獅子の神秘の賜物もあるのは間違い無いではないか。
「……獅子の神秘には、大喝の他に威風や守護の神秘があるといいますが……」
「そげなこっだ。尤も、それでも戦では誰にも負けもはんかったがの」
ペルロは知識を元に問い、アルキリーレは同意し苦笑した。北摩獅子は洞窟に住まう故に南黒獅子と性質が違うところが多く寧ろ東吼の虎に近い部分もあるが、多数の雌と広い縄張りを持つ南黒獅子程多くは抱え込まないものの巣穴や子を守る習性がある。堂々たる姿やよく通る吠え声は目の前の獣を威嚇するだけでなく威風を以て縄張りから敵を遠ざけ、子等を統率する。
アルキリーレの叫びが敵を強く威圧するのは彼女自身の並外れた殺気と鍛え抜かれた肺活量故の大声もあるが、美女である彼女の姿が敵の男を恐れさせるのはその強い闘争本能と殺気を直接に伝える獅子の神秘の力もある。
しかアルキリーレは身体能力強化以外は他者を恐怖させる大喝以外には威風を以て他者を統率したり威圧したり己に引きつけたりする事て他者を守る類の本来獅子に備わる筈の神秘を使えないらしい。故に〈使いこなせていない〉と。
しかし、それでも尚、身体能力強化の神秘と大喝の神秘、そしてアルキリーレ自身の鍛えた武と身体能力と軍略、それだけで北摩の最強者であったのだ。
故にカエストゥス一人守る事は自ら突っ込み敵を蹴散らす事でこなせるが、結局誰も己の巣穴に住まわせる事は出来なかったと黄金獅子は苦笑した。
「俺にはどうも、おぬしらんごたる愛想良うする事が不得手での、不調法ばあったらすまんわい」
「それは……」
ペルロ十八世は察する。それは、愛想というのは適切では無いのではないかと。恐らく、彼女は他者を上手く愛せないし、上手く愛される事が出来ないのではないかと。国や民を思う志があったからこそ立ったのだろうに、それを他者に伝える事が出来なかったのではないか。故に、国を失ったのではないか。男尊女卑故の問題でもあっただろうが……そうでなければ神秘学の観点からしても政治的な観点からとしても、これほどの強者が神秘を不完全にしか使えない事はこの〈あまねく全て〉の理からして不自然で、そこから考えるのなら彼女にあまりに味方がいない事の理由とも考えられるのではないだろうかと、ペルロは思った。
それは余りに寂しいし、寂しそうではないかと。間違い無く、友たるカエストゥスが彼女を放っておけないのも、その為だろうと。
自分も、彼女を放っておけなくなってしまったとペルロはその瞬間感じた。
「今でなくても、もしいつか。寂しいと思う時がありましたら、我が友カエストゥスだけでなく私も相談に乗りますよ……その時は私は最善を尽くしましょう。聖職者としてだけではなく、個人として」
異教である事など気にせずに、教帝の身であるのに女性の幸せを最優先してしまう所は、友たるカエストゥスと同じく女性と文化と平和をこよなく愛するレーマリア人気質を全く制御出来ていないなと内心苦笑しながら、ペルロ十八世は改めてそう約束した。男としても聖職者としても、察した事柄故に放ってはおかないと。
「お気持ちは有り難く頂戴しもす」
今はまだいまいちピンと来ていない表情だが、アルキリーレはその心遣いには謝意を示した。そうであるからこそペルロもカエストゥスも放っておけないのだが……
「じゃっどん、助言は何も問題なかろ」
故に、己は威風が無くとも、助言者としてならば立ち回れる、と、能力としての話をして。今はまだ、そこを解きほぐすには時間がかかるかと、ペルロとカエストゥスは共に理解した。
「我が友の助言者になってくれるのは、大変心強い。彼は善男ではありますが、戦には疎い。頼みましたよ」
「人の事はお前も言えないだろペルロ、昔は船乗司祭もしてたのに軍船用の衝角を鯨避けだとずっと勘違いしてた癖に……」
「本当て大丈夫かこいつら……」
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★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。