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第18章 巫山の夢
餅津木家の思惑
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※ご注意※
一部、不快な表現があります。
お気をつけください。
✣✣✣✣✣
「ねぇ、阿須加さん! ここだけの話、もうキスはご経験されたの?」
「え?」
だが、その後、話は更にセキララなものになって、結月はあからさまに頬を赤らめた。
なんとかポーカーフェイスを崩さずにいたのに、その瞬間、あの執事との甘く濃厚なキスを思い出してしまったから。
「あ、それは、えっと……ッ」
「きゃー! その反応は、もうご経験アリね!」
「やだ~、どうでした!? キスのご感想は!?」
「ご、ご感想……っ」
ズズズッと、興味深々に乗り出してくる学友たちに、結月は改めて、レオとのキスを思い出す。
幼い頃、教会で交わしたキスは、とても囁かな可愛らしいものだった。
だけど、8年たって、今与えられているキスは、甘くしびれるような大人のキス。
時には優しく、時には強引に、攻められれば、経験のない結月は、あっさり呼吸を乱され、キスだけでクタクタにされてしまう。
ていうか、なんでレオって、あんなのキスが上手いの?
「あ、あの……! ごめんなさい、私の口からは、とてもじゃないけど……っ」
──言えない!
あんな、情熱的なキスをされてるなんて、クラスメイトの前では絶対言えない!!
だが、そんな結月の反応を見て、クラスの女子たちは
(まぁ、思ったより濃厚なキスをされてるみたいね)
(いつも穏やかな阿須加さんが、こんなに赤くなるなんて! 冬弥さん、なかなかやるじゃない!)
と、冬弥に関する、別の誤解を抱いているのだった。
✣
✣
✣
「――は、っくしゅ!!」
一方、餅津木《もちづき》家が所有するビルでは、ソファーにこしかけ、タバコをふかしていた冬弥が、くしゃみをしていた。
今日はやたらと冷える。そのせいなのか、はたまた、誰か噂でもしているのかわからないが、さっきからくしゃみが止まらない。
「おい、冬弥。クリスマス前に風邪なんて引くなよ!」
すると、そのタイミングで、冬弥の兄である春馬が声をかけてきた。
冬弥より八つ年上の春馬は、のちに父の跡を継ぎ、餅津木グループの次期社長となる男だった。
今は父の傍で、経営や企画について学んでいるのだが、末っ子である冬弥は、その春馬の仕事を何かと手伝わされ、つかいっぱしりにされることが多い。
春馬が面倒だといった仕事を代わりに片付けたり、今みたいに暇だから話し相手になれと、突然呼び出されたり。
まぁ、この人使いの荒さは、末っ子だからというよりは、冬弥が妾の子。
つまり、上の兄達と、母親が違うせいもあるかもしれない。
「呼び出したんなら、先に部屋に来てろよ。なんで俺が待たされるんだ」
「そう言うなよ、冬弥。俺は次期社長だぞ。色々と忙しいんだ。それより、マジで風邪とか引いてねーだろうな。クリスマスに結月ちゃんと二人っきりで過ごせるってのに、体調崩したら元も子もねーからな」
「分かってるよ」
兄に念押しされ、冬弥は、タバコをふかしながら、眉根を寄せた。
春馬の話は、例の結月とのクリスマスデートの話だ。12月24日の夜、冬弥は結月を餅津木家に招く。
当日は、ディナーを両親とともにとったあと、冬弥の部屋で二人っきりで過ごすことになるのだが
「冬弥、分かってるだろうが、今度は上手くやれよ。とっとと子供仕込んで、結婚まで持ちこめ。お前が、阿須加家に婿入りしなきゃ、俺たちの計画も始まらねーからな」
「…………」
冬弥の横にドカッと腰かけ、同じようにタバコに火をつけた春馬が、笑いながらそういった。
餅津木家が、阿須加家との婚姻を望む理由。それは、阿須加家が所有する土地を手に入れること。
ホテルを多数所有する阿須加家は、なかなか良い場所に土地を持っていた。そしてそれは、大型ショッピングモールを手がける餅津木家にとっては、喉から手が出るほど欲しいもの。
だが、その土地を買いとるとなると、どうしても莫大な金がかかる。そこで餅津木家は、阿須加家に縁談の話をもちかけた。
冬弥が、阿須加家の次期当主となれば、いずれ阿須加の全ての土地が、餅津木家の物になるから。
そして、その計画は約8年前。冬弥が12歳の時から、すでに始まっていた。
「いいか、この計画は、全てお前にかかってるんだからな。今度は、前みたいにしくじるなよ」
「分かってるっていってんだろ! んなこと言うために、わざわざ呼び出したのかよ」
「そりゃな。出来の悪い弟を持つと、兄ちゃんは苦労するんだよ」
「…………」
「まぁ、もう恋人同士にはなってるわけだし、クリスマスに一晩一緒だって分かってるなら、あっちもそのつもりだろうさ。いい報告待ってるぜ、冬弥。ついでに、結月ちゃんを抱いた感想も聞かせてくれよ。けっこうイイ身体してるもんな、あの娘」
「…………」
誕生パーティーの日、結月は赤いドレス姿で訪れた。もしかしたら、その姿を思い出して、そう言っているのかもしれない。
だが、ケラケラと笑いながら、肩をトンと叩いた春馬に、冬弥は軽く眉をひそめる。
今はまだ婚約者とはいえ、いずれ弟の妻になる相手に対して、何を言っているのか。その下品な振る舞いには、身内といえど反吐が出る。
だが、この兄に逆らったらどうなるか。すくなくとも、餅津木家ではやっていけなくなる。それだけは、冬弥だって、よくわかっていた。
「あぁ……もう失敗なんてしねーよ」
タバコをふかし、少し遠くを見つめながら、冬弥は、ハッキリと答えた。
もう、失敗なんてしない。
結月が、餅津木家に入ってしまえば、こっちのもの。屋敷の中なら、もう、あの執事の邪魔も入らない。
そう、例え、泣こうが喚こうが、もう結月に、逃げ場はない。
(今度こそ、結月を組み敷いて、俺だけのものにする……)
8年前に、俺を拒絶したことを、とことん後悔させてやろう。
その体に、たっぷり俺の証を刻みつけながら──…
一部、不快な表現があります。
お気をつけください。
✣✣✣✣✣
「ねぇ、阿須加さん! ここだけの話、もうキスはご経験されたの?」
「え?」
だが、その後、話は更にセキララなものになって、結月はあからさまに頬を赤らめた。
なんとかポーカーフェイスを崩さずにいたのに、その瞬間、あの執事との甘く濃厚なキスを思い出してしまったから。
「あ、それは、えっと……ッ」
「きゃー! その反応は、もうご経験アリね!」
「やだ~、どうでした!? キスのご感想は!?」
「ご、ご感想……っ」
ズズズッと、興味深々に乗り出してくる学友たちに、結月は改めて、レオとのキスを思い出す。
幼い頃、教会で交わしたキスは、とても囁かな可愛らしいものだった。
だけど、8年たって、今与えられているキスは、甘くしびれるような大人のキス。
時には優しく、時には強引に、攻められれば、経験のない結月は、あっさり呼吸を乱され、キスだけでクタクタにされてしまう。
ていうか、なんでレオって、あんなのキスが上手いの?
「あ、あの……! ごめんなさい、私の口からは、とてもじゃないけど……っ」
──言えない!
あんな、情熱的なキスをされてるなんて、クラスメイトの前では絶対言えない!!
だが、そんな結月の反応を見て、クラスの女子たちは
(まぁ、思ったより濃厚なキスをされてるみたいね)
(いつも穏やかな阿須加さんが、こんなに赤くなるなんて! 冬弥さん、なかなかやるじゃない!)
と、冬弥に関する、別の誤解を抱いているのだった。
✣
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「――は、っくしゅ!!」
一方、餅津木《もちづき》家が所有するビルでは、ソファーにこしかけ、タバコをふかしていた冬弥が、くしゃみをしていた。
今日はやたらと冷える。そのせいなのか、はたまた、誰か噂でもしているのかわからないが、さっきからくしゃみが止まらない。
「おい、冬弥。クリスマス前に風邪なんて引くなよ!」
すると、そのタイミングで、冬弥の兄である春馬が声をかけてきた。
冬弥より八つ年上の春馬は、のちに父の跡を継ぎ、餅津木グループの次期社長となる男だった。
今は父の傍で、経営や企画について学んでいるのだが、末っ子である冬弥は、その春馬の仕事を何かと手伝わされ、つかいっぱしりにされることが多い。
春馬が面倒だといった仕事を代わりに片付けたり、今みたいに暇だから話し相手になれと、突然呼び出されたり。
まぁ、この人使いの荒さは、末っ子だからというよりは、冬弥が妾の子。
つまり、上の兄達と、母親が違うせいもあるかもしれない。
「呼び出したんなら、先に部屋に来てろよ。なんで俺が待たされるんだ」
「そう言うなよ、冬弥。俺は次期社長だぞ。色々と忙しいんだ。それより、マジで風邪とか引いてねーだろうな。クリスマスに結月ちゃんと二人っきりで過ごせるってのに、体調崩したら元も子もねーからな」
「分かってるよ」
兄に念押しされ、冬弥は、タバコをふかしながら、眉根を寄せた。
春馬の話は、例の結月とのクリスマスデートの話だ。12月24日の夜、冬弥は結月を餅津木家に招く。
当日は、ディナーを両親とともにとったあと、冬弥の部屋で二人っきりで過ごすことになるのだが
「冬弥、分かってるだろうが、今度は上手くやれよ。とっとと子供仕込んで、結婚まで持ちこめ。お前が、阿須加家に婿入りしなきゃ、俺たちの計画も始まらねーからな」
「…………」
冬弥の横にドカッと腰かけ、同じようにタバコに火をつけた春馬が、笑いながらそういった。
餅津木家が、阿須加家との婚姻を望む理由。それは、阿須加家が所有する土地を手に入れること。
ホテルを多数所有する阿須加家は、なかなか良い場所に土地を持っていた。そしてそれは、大型ショッピングモールを手がける餅津木家にとっては、喉から手が出るほど欲しいもの。
だが、その土地を買いとるとなると、どうしても莫大な金がかかる。そこで餅津木家は、阿須加家に縁談の話をもちかけた。
冬弥が、阿須加家の次期当主となれば、いずれ阿須加の全ての土地が、餅津木家の物になるから。
そして、その計画は約8年前。冬弥が12歳の時から、すでに始まっていた。
「いいか、この計画は、全てお前にかかってるんだからな。今度は、前みたいにしくじるなよ」
「分かってるっていってんだろ! んなこと言うために、わざわざ呼び出したのかよ」
「そりゃな。出来の悪い弟を持つと、兄ちゃんは苦労するんだよ」
「…………」
「まぁ、もう恋人同士にはなってるわけだし、クリスマスに一晩一緒だって分かってるなら、あっちもそのつもりだろうさ。いい報告待ってるぜ、冬弥。ついでに、結月ちゃんを抱いた感想も聞かせてくれよ。けっこうイイ身体してるもんな、あの娘」
「…………」
誕生パーティーの日、結月は赤いドレス姿で訪れた。もしかしたら、その姿を思い出して、そう言っているのかもしれない。
だが、ケラケラと笑いながら、肩をトンと叩いた春馬に、冬弥は軽く眉をひそめる。
今はまだ婚約者とはいえ、いずれ弟の妻になる相手に対して、何を言っているのか。その下品な振る舞いには、身内といえど反吐が出る。
だが、この兄に逆らったらどうなるか。すくなくとも、餅津木家ではやっていけなくなる。それだけは、冬弥だって、よくわかっていた。
「あぁ……もう失敗なんてしねーよ」
タバコをふかし、少し遠くを見つめながら、冬弥は、ハッキリと答えた。
もう、失敗なんてしない。
結月が、餅津木家に入ってしまえば、こっちのもの。屋敷の中なら、もう、あの執事の邪魔も入らない。
そう、例え、泣こうが喚こうが、もう結月に、逃げ場はない。
(今度こそ、結月を組み敷いて、俺だけのものにする……)
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