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夏休み編
32話「サマータイムツインズ壱」
しおりを挟む新川優希高二夏休み開幕
風夏に振られた俺はなんとなく小学生ぶりに婆ちゃんの家に行く事にしてた。
この中途半端な都会とは違い、海の見える綺麗な街である。
最近見たドラマに影響を受けたのかも知れない、とにかく何かを変えたかったのかも知れない。
今日から3泊4日お世話になろう。
「次は終点、上田海水浴場、上田海水浴場~」
「着いた~」
約10年ぶりにここにやって来たのだ
なんだか夏しい匂いがした。
「ちょっと、早く着きすぎたし散歩でもするか...」
昔は家族でよく夏になるとここに来ていたな、昔よりちょっと寂れた街を見てセンチメンタルな気持ちにもなった。
ほんの数週間しかいないのになんだか別世界に見えて子供ながらに大人になったらこんな海の見える街に住みたいと思っていたものだ。
「あの、それ!!」
「ん?」
少し強く吹いた海風に麦わら帽子が飛ばされていた
そして、こっちにその帽子が飛ばされたらしい
俺は帽子を拾い上げた。
「どうぞ!」
「すいません、ありがとうございます。」
「おーい大丈夫か~」
「この人が取ってくれたから大丈夫だったよ!」
黒髪長髪で白いワンピースを着た可愛い女の人と黒髪短髪の日焼けした小麦色の女の人の2人組だった。
「ありがとうございます!ほんと気をつけろよ~」
「飛ばされなくて良かったですね。」
「…。」
「ん?」
「あ!はい!ありがとうございます。」
顔は2人ともそっくりで双子のようだったな。
よし、そろそろ時間だし婆ちゃんの家に行くか。
・
・
・
「あのさ、かおり。」
「なんだよ~ゆい」
「さっき帽子拾ってくれたのって優希君、じゃないよね?」
「おいおい、高二になっても優希君の話か!
流石にそれは無いだろ~もう何年もこっち来てないんだぜ。」
「うん、そうだよね~、でも…」
・
・
・
「婆ちゃん、久しぶり!」
「あんた、優希かい?」
「そうだよ、ごめんね何年も来なくて…」
「おぉ、久しぶりだね、優希~!よく来たね。」
「おじゃまします。」
10年ぶりの婆ちゃんの家はなんだか昔来た時より凄く狭く感じだ。
どうやら相当俺も成長したみたいだ
「今日から3日間よろしくね。」
「自分家だと思っていいのよ、でもお客はあんただけじゃ無いよ。」
「え?」
ガラッ
「お母さんただいまー、元気してた~って誰?」
「叔母さん、お久しぶりです。優希です。」
「え!優希君!!久しぶりね」
この人はお父さんの姉、叔母の明日香さんだ。
多分小6ぶりぐらいに会った。旦那さんも一緒に来てるらしい
「おぉ優希君か、でかくなったね。」
「お2人に会うのは多分小6以来とかだと思うので!」
「パパ、この人誰?」
「お母さんのお兄さんの子供だよ。」
「初めまして、優希です、よろしくね。」
「...」
「ごめんね優希君、このこ人見知りで。」
「妹の舞もこのくらいの歳の時は人見知りでしたね~」
「ほら、あいさつは?」
「青木美来。」
「美来ちゃんよろしくね。」
この子はいとこにあたる、美来ちゃんというらしい。
聞いた話だと小学3年生らしい
「私たちは3泊の予定なんだけど?」
「僕も三泊おじゃまさせて貰う予定です!明日香さんのじゃまにもならないようにしますので!
婆ちゃん、じゃあ、俺ちょっと海の方行ってくるね。」
「はいよーいってらしゃい!」
「美来も海行くー」
「美来、ちょっと私たちゆっくりしたんだけど~」
「あ、じゃあ俺と一緒に行こうか、美来ちゃん」
「優希君、美来は気にしなくて大丈夫よ、後で私達も行くし!」
「行く。」
「え?」
「優希と一緒に行く。」
「美来がこんな早くに懐くなんて珍しいわね」
「そっか、じゃあ美来ちゃん俺と行こう!」
「うん!!」
「じゃあちょっと行ってきます!」
「なんだか、優希君も美来もこうやって大人になるのかしらね」
「明日香も親になったね~」
「こういうのって嬉しいものね」
・
・
・
俺らは歩いてすぐ行ける海水浴場に向かった。
「美来ちゃんは着いたら何やりたいの?」
「うんとね、砂遊び。」
「砂で何か作りたいの?」
「アイリスみたいなお城!!」
アイリスというのは確か子供向けプリンセスアニメだった気がする。
「よし、じゃ2人でお城作ろう!」
最近色々あって疲れてたしお城でも作って無になろう
「着いたよ!」
「うわー」
目をキラキラさせた美来が早く行こうと手を引っ張ってくる
なんだか昔の妹みたいだな、てか俺は最近小学生ばかり相手にしてるな…
「お兄ちゃん早く行こう!!」
久々にお兄ちゃんと呼ばれて俺はなぜか嬉しかった。
「うん!」
「よし、じゃここら辺でお城作ろうか。」
「分かった、じゃお兄ちゃんは土台作って!」
こうして俺たちはお城作りに取り掛かった。
そうしてしばらく作ってると俺らの所に訪問者が現れた。
「美来ちゃんー!!」
やって来たのは今朝麦わら帽を拾ってあげた人だった。
「あなたは朝帽子拾ってくれた!」
「どうも、美来のこと知ってるんですか?」
「お兄ちゃん、この人ゆいちゃんだよ!」
「朝もしかしてって思ったけど、やっぱお前ゆいなのか?
俺、優希だよ、新川優希。」
「やっぱ優希君だったんだ。」
そう彼女は唯一こっちで歳の近い友達なのだ。
ー続くー
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