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夏休み編
37話「サマータイムツインズ陸」
しおりを挟む新川優希の心境は
神のみぞ知る。
タイムカプセル前にどうしても俺はゆいに伝えたい想いがあった。
「優希くん、話って‥」
「まず、昨日の事なんだけど、情けない所見せちゃってごめんな。俺、昨日みたいに大丈夫だよって言われる事本当に無かったから嬉しかった、俺のやってる事が無駄じゃないって、俺の優しさも悪い事じゃないって言われてるみたいでさ、
俺、中学の頃すごく嫌な思いしてさ、
それがトラウマになって高校生活も素直に楽しめなかったんだよね‥
でも、その時救ってくれたのが昨日話してた俺を振った先輩なんだ。
俺その人に振られたけど絶対諦めないって本人に言ったんだ。
その時は、報われたくて言ったのかもしれないし、本気でまだ好きだから言ったのかもしれないって何となくしか気持ちは分からなかったけど、ここに来ていろんな景色見てさ、やっぱどこもその人と一緒に行ったらどうなんだろって頭の片隅で思っちゃったんだ。
だから、ごめん。
ゆいは俺のこと好きで色んなことしてくれたんだろうけど俺はゆいの事やっぱ大切な友達として思ってるんだ。」
「うん。知ってた。」
「だから‥」
「優希君、それでも私好きだよ?」
「え?」
「もし、先輩と上手くいかなかったら、
もし誰とも上手くいかなかったら、
もし人生辛い事があったら私と付き合おう?
それじゃダメかな?」
「ゆいにはもっといい人がいるよ。」
「居ないよ!私、ずっと優希君の事想って生きてきたの。一昨日、帽子飛ばされた時も優希君だって分かったし、美来ちゃんと砂遊びしてた時も優希君だと思って行ったし、お祭りだっていつかは優希君と2人で行けたらなってずっと思ってたもん。
それに、私は今日までタイムカプセルの事忘れた日なんて無かったよ?」
「そうだったのか?」
「だから簡単に私の恋を終わらせないで。
簡単にいい人がいるとか言わないで。
お願い‥お願いだから‥」
「ごめん‥」
「だから私、彼女が出来たぐらいじゃ諦める気なんて全くないからね」
俺は勘違いしていた。
ゆいは優しさで俺に情を持って居たのだと思っていたし、俺の事なんかとっくに忘れてると思ってた。
でもそんな訳ないよな
だって、ゆいは俺の事をまっすぐ見つめて言ってきたんだからな。
「あのさ、ゆい!」
「ん?」
「タイムカプセル掘りに行くよな?」
「当たり前でしょ?ちょっと家帰って動きやすい格好になってくる~じゃまた後でね!」
俺はゆいの事を全く分かって無かったみたいだな‥
.
.
.
「ただいま」
「おかえり、ゆい、どうだった‥ってあんた泣いてんの?」
「べ、別にいいでしょ」
「もしかして、振られた‥のか?」
「別に振られた訳じゃないもん!」
「ま、まあ別に今あいつに彼女居ないんだろ?無理に告白する必要もないだろ!」
「う、うん‥」
「泣くなよ~大丈夫だから!」
「タイムカプセルは辞めとくか?」
「いぐ‥」
「そ、そっか、気まずくないか?」
「大丈夫だよ、優希君の前じゃ絶対泣かないもん!」
「ゆいは昔から強いよな~自分で言うのもあれだけど、夏休みいつも優希が帰る日私は泣いちゃってよ、でもゆいはいつもあいつの前じゃ泣かなかったもんな‥」
「意外とかおりは泣き虫だもんね!」
「う、うるさいなぁ!早く準備していくぞ!」
.
.
.
タイムカプセルを埋めたのは2人の母校の上町《かみまち》小学校だ。
とりあえず俺は婆ちゃんにスコップとか電気とか色々借りてきた。
「おーい、優希~」
「かおり、未来の事ありがと!」
「気にすんなよ!」
「優希君お待たせ!」
「おう!みく、タイムカプセル、あるといいな!」
「うん!」
こうして俺らは小学生に向かった。
「埋めたのってどの辺だっけか?」
「私、覚えてるよ」
「流石だな、ゆい」
「うん。」
どうやら当時の俺らは子供ながらに目立たない中庭の2番目に大きい木の下に埋めたらしい。
「ここも今年で廃校だからな~」
「え、そうなのか、かおり?」
「うん。ここもさ昔より過疎化が凄いだろ?だからもう子供もあんまり居ないんだよ。」
「そうなのか、じゃあこの学校のお祭りとかはもうやってないのか?」
「そうだねぇ~私達が中2ぐらいの頃にはもうやらなくなってたな‥」
やはりこの街は昔ほど栄えてはないんだな‥
「この木だ!」
俺達は目的の木の前まで来た。
「よし、掘るのは俺に任せとけ!流石に子供3人が埋めたぐらいじゃそんなに深くないだろ」
こうして俺は木の下を掘り始めた
「いや~私何埋めたろ‥ゆいは覚えてるのか?」
「実は私も埋めたのはよく覚えてるけど中身までは全然覚えてないんだよね。」
「当時って毎日がキラキラしててさ、今みたいに何かに追われる訳じゃなくて楽しかったなぁ~」
「やめろよ~今がつまんねぇみたいだろ!」
俺も何を埋めたか全く覚えてないのだ。
小2の頃はたしかバトル漫画が好きだった記憶と漫画を描いてた記憶があるからそれがもし出てきたら結構恥ずかしいな‥
ガツッ!
「お!」
「今の音なんだ?」
「もう少し掘ってみる!」
ガンガンッ!
掘った先には煎餅の缶が出てきたのだ。
「優希君!絶対これだよ!」
「がんばれ優希!もう少しだ」
「おう!」
そうして無事に錆びた缶を掘り起こす事ができた。
なんだからすごく感動するな‥
「じゃ‥開けるぞ‥」
「う、うん!」
中には3人の名前が書いてある袋が入っていた。
10年越しに時が蘇るような気がした。
ー続くー
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