57 / 69
クリスマス編
52話「クリスマス・イブ」
しおりを挟む俺はそこで3本のバラを渡した。
普通のバラではなくドライフラワーなのである。
普通ドライフラワーはあまりこう言う場面では良く無いと思うがなぜこれを選んだと言うと、
億恋の中で1番有名なシーンなのである。
ゆうきが漫画内で薫のことを忘れてしまうのだが、いつまでも枯れないバラのドライフラワーを渡していつまでも一緒にいたいと告白した時に渡した事を思い出す最高に最高なシーンなのだ。
「これ億恋のシーンと同じ‥」
「俺、これを本当は七夕の時渡したかったんですけど、これずっと部屋に飾ってあって見るたびやっぱり風夏の事を忘れたくなくて、てか俺の事もずっと忘れてほしくなくて、2人でいつまでも居たいです。
今まで遠回りをしながらも沢山の思い出ができたしこれからも沢山思い出を作りたい。」
「あ、ありがとう‥」
風夏は泣き出してしまった。
傷つけた事もあったし多分それは消えないけどそれでも
「愛してくれてありがとう
今まで以上に幸せになろうね。
てか、話変わるけど七夕の時さ、動物園行ったじゃん?」
「そうだね!」
「あの時さ、短冊書いたじゃん」
そういえばあの時2人で短冊を書いたな‥
「短冊にはずっとずっと優希君が幸せでありますようにと書いたんだ。
その時はどうする事も出来なかったし私といない方が幸せになれると思ったけど、もう優希君の事は誰にも渡したく無くなっちゃった。」
今まで色々あったけどそれを乗り越えた気がした。
俺達のこの不器用で遠回りした恋は確実に前に進んでいた。
「寂しいですけどそろそろ帰りますか‥」
「あのさ、私のお家来ない?」
「へ?」
頭の中が真っ白になった。
「いやね、実は今日出かけるのが彼氏って事が両親にバレちゃってさ‥で、そしたら家に呼んだらどう?って言われてさ、嫌なら全然良いんだけど?」
「全然嫌じゃないよ!」
嫌ではないが正直心の準備が全く出来ていなかった。
「じゃ、家来てもらっても良い?」
「う、うん‥」
こうして俺は風夏の家に向かう事になった。
.
.
.
「ここだよ。」
「え、」
前にお別れの話をした時は家の近くまでしかこなかったから、あまりの大きさにビックリした。
正直、付き合う事自体が初めてだし、その親に会うなんて思っても無かった。
今にも心臓がはち切れそうだ…
「おじゃまします。」
「あなたが優希君ね!いらっしゃい!」
思ったよりも明るいお母さんだった、流石はゆいやかおりの血筋である。
「かなりイケメンじゃない~お父さんも居るから案内するね~!」
「ありがとうございます」
「ちょっと、お母さん~」
なんだか恥ずかしそうにする風夏であった。
「お父さん来たわよ~」
「あ、あの風夏さんとお付き合いさせて貰ってます、新川優希と言います。今日はお招きいただきありがとうございます。」
「まあ、かしこまらずにね。」
にこやかではあったが、目の奥は娘をやらんと言わんばかりの目をしていた。
「あの、聞いてると思うんですけど、実は風夏さんのお母さんのお兄さんとうちの父親が友達でして…」
「え、新川って健君の息子なの?」
「あれ、聞いてませんでしたか?」
風夏の方を見るとどうやら完全に話してないという顔をしていた。
「実は小さい頃に朝比奈建設の創立祭に父親が呼ばれて…」
「懐かしいな、あの時の写真もうちに飾ってあるよ。」
「え、あの写真に写ってる男の子って優希君だったの?」
「俺も実は昨日父親に教えてもらって…」
「そうかそうか、まあお母さんのことは残念だったけど、こんなに立派になるとはね…」
「はい‥でも、今はもうかなり前向きになれました。」
「良かった‥でも私びっくりした、まさか小さい時から私達出会ってたんだね。」
「まあ今日はゆっくりして行ってくれたまえ。」
「はい!」
「とりあえず、定番の風夏の子供の頃のアルバム鑑賞会といきますか~!」
「お母さん~」
そうして俺は0歳から今になるまでの色々な風夏を見させてもらった。
ずっと可愛い、1000000000000000年に一度の天使と言っても過言ではない…
そしてなんだかんだで見せてくれる風夏も可愛かった。
「じゃ、ちょっと風夏は私とやる事があるからちょっと待っててくれる?」
「は、はい。」
何かあるのだろうか。
「優希君、では私と少し男の話でもしようか。」
「はい!」
怖い、怖すぎる…風夏、早く戻って来てくれ~
去っていく風夏の背中が恋しかった。
「優希君、ちょっといいかね。」
「はい。」
「君は知ってるか知らないが、風夏もね自慢じゃないが顔が良いからって傷つけられたり過去に嫌な経験を結構しているんだよね。
だからあまり人を好きになる事が無かったんだよ。
でもね、優希君だからこそ、心を開いたんだと思ったよ。
正直、どんな人が来るか私も不安でね、でも本当に君で良かったと思う。」
「ありがとうございます。」
その言葉がただただ嬉しかった。
「いつも娘をありがとう。少しわがままな所もあるがそこも可愛いんだよ。
優希君、大人になったら一緒にお酒でも飲もう。」
「ぜひ、その時が来るのを楽しみにしてます!」
知ってはいたが、風夏のお父さんは本当に優しく男らしい人であった。
思春期の娘ともこんなにも仲良くできる父親はなかなか居ないだろう…
「優希君、お待たせ!」
「え?」
「私と風夏で作りました~ケーキです~!」
風夏が持って来たのは手作りのケーキだった。
「毎年ね、私が作ってるんだけど、今年は珍しく私も作りたいなんていうもんだから、私ビックリしちゃったのよ~」
「あ、あの優希君実は誕生日も祝いたくて…」
「あ、ありがとうございます。」
涙が出てしまった。
隠せたかは分からないが、昔に母親が生きてた頃に作ってくれた手作りケーキを思い出していた。
懐かしい気持ち、決して嫌じゃなくて幸せな思い出。
「じゃ、みんなで食べましょ~」
こうして初めての朝比奈家の訪問は終わった。
最初の緊張感はすっかりなく、ただただ幸せな気持ちでいっぱいだった。
「あの、今日は本当にありがとうございました。」
「優希君、お父さんによろしく言っといてくれ。」
「健さんによろしくね~この前兄さんがたまにはこっちにも顔出してほしいってぼやいてたよ~」
「はい、伝えときます。今度はしっかり準備しておじゃまさせてもらいます。」
「じゃあ私、最後に少しお話してくる。いこっか!優希君」
「うん!」
・
・
・
「今日は一日ありがとね。」
「俺の方こそありがとう。本当に幸せな1日だったよ。」
「まさか優希君と小さい頃に会ってたとは思わなかったよ~」
「いや、俺も本当に知らなくて運命かと思っちゃいました。」
「思ったんじゃなくて運命なんだよ絶対、それにね、ゆうきくんって事は知らなかったけど、私は覚えてる事あるよ?」
「え?」
「その日はさ、一応社長の娘って事でドレス着てさ私すごく子供ながらに緊張しててさ、くる人くる人みんなに挨拶しなきゃいけなくてさ、
私なんか凄い疲れちゃってさ、でも、そこに優希君が来てさ、すごく可愛いね、お姫様みたいって言ってくれたのが嬉しくて、私にとっては王子様だった。
それがまさか優希君だったとはな~」
「俺そんな事言ってたんですね、恥ずかしい…
でも今でもお姫様みたいで可愛いって思ってますよ…な~んて…ハハ…」
自分でもきもい事言ったなって思ったけど、思った以上に風夏が照れてたし良かったか…
「優希君、本当に大好きだよ。」
「俺も大好きです。あの…」
チュッ
「え?」
何言おうか忘れたけどいいか…
風夏の優しい口づけが冬の寒さを溶かしてくれた。
「優希君、来年も再来年もずっと誕生日もクリスマスも一緒にいようね。約束。」
「はい。絶対だよ。」
2人の永遠のようで一瞬の時が続きますように。
Fin……
ってこのまま、終われる訳ない!
俺が目指すのは翼の優希ポジションだからな。
お前、好きなんだろ、日向先輩の事
今度は俺が助ける番だからな…
クリスマス編終幕!
ー続くー
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる