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第7話『動けないんですか? へぇー情けない。ざーこざこ!』
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新作のFPSが発表され、俺はその宣伝も兼ねて、夢咲陽菜さんの配信への出演依頼をしていた。
どの程度交渉に苦労するか分からなかったが、想像よりも簡単に交渉は終わり、出演する日まで決まった。
そして、今日はその配信の日である。
「という訳で、ゲストの高藤正人さんです!」
「はい。『ヒナちゃんねる』をご覧の皆さん。こんにちは。高藤正人です」
「じゃあ、今日は私と高藤さんとお兄ちゃんで新しいゲームのお試しプレイをしていくよー!」
【待ってましたー!】
【高藤がどれだけ頑張れるかに全てが掛かってるな】
【兄さん……強く生きて】
【開幕即退場でも驚かんぞ、俺は】
「じゃあ移動しようか!」
【ん? 移動?】
「そ。この新作ゲームはね。リアルな場所で遊ぶことが出来るゲームなんだよ」
立花さんは陽菜さんを抱き上げると、予定していた場所へ移動し、ソファーの上に陽菜さんを座らせる。
そして自分はゴーグルを付けると、腰に付けた模擬銃の感触を確かめていた。
確認が終わったのか、戦場へと彼は一人飛び込んでいくのだった。
半径百五十メートルの仮想空間が広がるフィールドへ。
「じゃあ、ゲームスタート!」
陽菜さんの言葉を合図として、ゲームが始まった。
俺はプレイ画面を見ながら、コメントを目で追い、宣伝効果を確かめながらプレイをする。
そして、やはりというべきか。コメントは立花さんが気になっているようだ。
【兄さん? 何してるんだ?】
【なんか、動いてるな。そしてゲーム内でも見たことない動きしてるな】
【兄さんが、ゲーム上手い……だと……!?】
【俺たちは幻覚でも見てるのか?】
「へへーん。お兄ちゃんはね。コントローラーで動かしてるんじゃなくて、なんか、こうやって、へい! ってやって動かしてるんだよ!」
【さっぱり分からん】
【なるほどな。まるで分からん!!】
「陽菜さんの話に捕捉しますと、立花さんの体にセンサーを取り付けまして、それの動きをゲーム機で受け取って、反映してるんです」
【なるほどな】
【つまり真実ゲームの世界に飛び込む事が出来る様になったって事か】
【すげぇ時代になったモンだな】
【それはそれとして兄さんの動きヤバいな】
とりあえず練習用のフィールドで各人動きの確認をしているのだが、確かにコメントで言われる様に立花さんの動きがおかしい。
通常のコントローラーでは当然出来ないが、走る速さが異常に早く、その勢いで崖の様な場所を駆け上がってゆく。
いや、駆け上がるというよりは飛び上がるという方が正しいのか?
高さ五メートル以上はある岩を三歩くらいで、頂上まで登っている。
故障だろうか?
疑問に思った俺は別のモニターで立花さんの動きを確認したが、ゲームと同じ動きをしている様に見えた。
故障じゃなかった。立花さんが人間では無かっただけだ。
……。
まぁ、プロモーションをするならこれ以上ない人物だろう!!
「ま、まぁ。皆さん動きの確認が出来たみたいですし。実際にオンラインで戦ってみましょうか」
「はい! 頑張ります!」
《よろしくお願いします》
すぐ横から陽菜さんの、そしてイヤホンから立花さんの声が聞こえ、俺は頷いてから対戦モードに切り替えた。
そして、オンラインで対戦メンバーを集める。
「あ。そうそう。何戦か遊ぶからさ。実際にソフトを持ってる人は一緒に遊べるよ! この天才陽菜ちゃんへ挑戦しに来るがいい!」
【よし、参加するかー】
【今すぐ購入して来いって事ね。分かったわ】
【急げ、急げ!】
「じゃあ、ゲームすたーと!」
陽菜さんの合図に合わせて、試合に参加する。
そして思っていたよりも早くメンバーが集まり、戦闘が開始された。
もしかしたら配信を見ている人で、既にプレイしている人が多いのかもしれない。
【間に、合わなかった!】
【参加できず】
【結構人数多そうだな?】
【まぁ視聴者数一万超えてるし。参加枠の六十人なんて一瞬だろ】
【陽菜ちゃんの参加すたーと読みで先に入るしかないってこと!?】
【それやって別のグループで旅立った奴も多そう】
コメントを目の端で追いながら、とりあえずゲームに集中する。
これでも、このゲームのプロモーションを任せられているプロのゲームプレイヤーだ。
生半可なプレイでは、宣伝とはならないだろう。
思わず憧れてしまう様な、自分もやってみたいと思うようなプレイをしなくては……。
しかし、それでいて、二人には楽しんで貰いたいと思う。
その方が宣伝効果としては高いだろうし。純粋に二人のファンである自分としては、喜ぶ姿を見たいというのもある。
《別のプレイヤーを見つけましたが、撃っても良いのでしょうか?》
「良い目を持ってますね……うん。そうですね。とりあえず初めてですし。撃ってみましょうか」
【この距離じゃ厳しくね?】
【別に高藤も当たるとは思ってねぇだろ。当たらなくても、カバーしますよって意味だぞ】
【これがプロか】
「あー。良いな。良いな。お兄ちゃん。良いなー」
《陽菜の分も残しておくよ》
そう言いながら、立花さんは手に持っていた銃を構えた。
【まぁ、兄さんなら全員残してくれるやろ】
直後、立花さんは銃弾を放って、遠方に居たプレイヤーの急所を一撃で撃ち抜き、リタイアさせた。
【は?】
【え? なに?】
さらに、追撃の二撃を恐ろしい速さで放ち、一人は同じく急所に、そしてもう一人は行動を制限する場所に当てる。
追撃に関しては殆ど同時に着弾した様な速さであった。
《よし。じゃあ、陽菜。一人残しておいたから、当ててみようか》
「おっけー! やっちゃうよー! おらおらー!」
意気揚々と走っていく陽菜さんとそれに追随する立花さんを見ながら、先ほどの信じられない行動を思い返す。
およそ人間離れした動きだった。
「あ。見つけた。てーい!!」
陽菜さんの放った弾丸は大分ハズレも多いが、敵プレイヤーの体力を十分に削り切って、リタイアさせた。
何というか、陽菜さんは普通だ。いや比べる対象がおかしいだけで陽菜さんも十分に上手い。
歩き方は見えない敵を警戒していたし、撃つまでの流れもスムーズで当てるのだってセンスを感じた。
しかし、それはあくまで常識の範囲内だ。常識を遥かに超越した存在を見ると、なんとも霞んでしまう。
「上手いですね。これで一チーム脱落。残りは……うん、他も動きがそれなりにあって減ってますね。とりあえず場所を移動しましょうか」
「はーい!」
《了解です》
俺は動きながら、コメントと戦況を確認する。
【おぉー。陽菜ちゃん。お上手】
【最後は陽菜ちゃんに仕留めてもらえるとは、あのプレイヤーは嬉しかっただろうな】
【ホンマか? 仲間が一瞬の間にリタイアさせられて、残った自分は動く事も出来ずに狩られた訳だが】
【動けない所を陽菜ちゃんに踏まれて、蔑まれて、撃たれる!? なんだ。ただのご褒美か】
【陽菜様「動けないんですか? へぇー情けない。ざーこざこ!」】
【くっ】
【俺はまだ負けてねぇ! オラ! もっと来いよ!】
【おかわり要求するな】
「さて、マップから考えると、そろそろ激戦区ですね」
「そうなんですか?」
「はい。この辺りは安全地帯がありますから、それの奪い合いですね」
「安全地帯なのに、危ないんだ。なら、近づかない方が良いんじゃ?」
「まぁそれはそうなんですが、どの道、行動できる場所はどんどん減少してゆきますし、そうなったら先に安全地帯を確保している方が有利なんですよ」
「そういう事かー」
《勉強になります》
【なるほどな】
【流石プロ】
【常識だぞ】
【はいはい。分かった分かった。凄い凄い】
【コメントでしか自慢出来ないんだから、放っておいてやれ】
「という訳で、我々の行動方針としては、安全地帯を確保するという方向でいきましょうか」
「はーい」
《じゃあ、とりあえず道を作りますね》
「ん?」
「おっけー! お兄ちゃん。よろしくぅー!」
《あぁ》
立花さんはそう言い残すと、武器を格納してから走り出した。
俺は急いで銃を取り出し、立花さんの援護をするべく構える。
そして立花さんに近づこうとする敵を撃ったが、動揺からか上手く当たらず外してしまった。
すぐさま二発目を放とうと準備するが、それよりも早く立花さんが、一応実装されている程度の接近戦格闘技で敵を無力化していた。
直後、俺は急いで動けない状態の敵を撃って、リタイアさせるのだった。
《カバーありがとうございます》
【近接!!】
【そんな事も出来るのか!】
「うー! 二人ばっかりずるい! 私もいくー!」
「援護します」
【暴走機関車ひな。いっきまーす!】
【敵が居ないのに銃撃ってんの笑うんだが、彼女はいったい何と戦ってるんだ】
【君には見えないのか。それがこの国を覆う闇の正体だ】
【突然壮大な物語始まるじゃん】
【ただのトリガーハッピーなんだよなぁ】
安全地帯へと走る陽菜さんを追いながら、彼女が近づけさせない様にと放っている弾丸を掻い潜り、接近しようとする敵を撃ち抜く。
まったく素人とは思えない程にやりやすい二人だ。
少々暴走しがちな所もあるが、現状としてはそれが上手くハマっている形だな。
「さぁ、安全地帯まで後少しですよ」
《む? 何か強い敵が》
立花さんの声に場所を確認すれば、どうやら三人に上手く囲まれてしまったようだ。
近づこうとすると牽制の弾幕で接近出来ず、銃弾を放とうにも射線が通らないのだろう。
一人では難しい。援護しなくてはいけない。
「お兄ちゃんをイジめるな!! 私が助けにいくよ!」
【うおぉおお!! いけー!!】
【熱い展開になってきたな】
《陽菜!!》
立花さんの危機に陽菜さんが飛び込んでいったが、敵はあまりにも慣れているし、陽菜さんが一人援護に行ったところでどうにもならないんだろう。
むしろ、陽菜さん自身も危ない。
俺も援護に向かっているが、おそらくは間に合わない。
残念だが、陽菜さんが撃たれて終わりか。と思っていたら、立花さんが信じられない様な動きをした。
なんと、一応実装されている程度の救助コマンドと、移動コマンドを使いこなし、陽菜さんを抱きかかえて、障害物を避けながら、飛び回り始めたのだ。
さながら忍者である。
《陽菜。俺は動く事しか出来ん。当てられるか?》
「まっかせてー! てーい!」
「こちらも援護します!」
俺は一瞬呆然としていたが、立花さんの声に自分を取り戻し、すぐさま硬直している相手を撃ち抜いた。
おそらくは相手も呆然としていたのだろう。仕方ない。誰だってあんな物見せられたら動きが止まる。
「わっ、やった、やった!」
【おぉ! 勝ったぞ!!】
【兄さんの異次元殺法ヤバすぎだろ。ちゃんとゲームの規格内で戦ってくれ】
【何言ってんだ。ちゃんと実装されてるぞ。ただ実行できる奴が居ないだけで】
【それはちゃんと規格内なのか?】
「二人とも! 逃げて!」
《陽菜!》
「え? あ、お兄ちゃん! あ、わたしも」
俺も気づけなかったが、障害物に隠れていた敵に二人は撃たれ、リタイアしてしまった。
それから何とか抵抗したが、一人では勝てず俺も負けてしまった。
「申し訳ない。油断しました」
「いえいえ! 高藤さんは悪くないですよ。私たちが油断しちゃってましたから!」
《面目ない》
「いえ。しかし、そうですね。では皆悪かったという事で。次の戦いへ行きましょうか」
「おー!」
《了解》
それから俺たちは何戦か繰り返し、十分にゲームの魅力をユーザーに伝える事が出来た。
後日会社に連絡を取った所、陽菜さんのチャンネルでゲームの宣伝をすると予告した日から今日までの間に、ゲームの売り上げが三倍に増えたらしい。
恐ろしい宣伝効果だと思う。
しかしそれだけの魅力があの配信にあったのは確かであった。
俺は配信を改めて見直して、配信中は見る事が出来なかった二人の動きをじっくりと見るのだった。
どの程度交渉に苦労するか分からなかったが、想像よりも簡単に交渉は終わり、出演する日まで決まった。
そして、今日はその配信の日である。
「という訳で、ゲストの高藤正人さんです!」
「はい。『ヒナちゃんねる』をご覧の皆さん。こんにちは。高藤正人です」
「じゃあ、今日は私と高藤さんとお兄ちゃんで新しいゲームのお試しプレイをしていくよー!」
【待ってましたー!】
【高藤がどれだけ頑張れるかに全てが掛かってるな】
【兄さん……強く生きて】
【開幕即退場でも驚かんぞ、俺は】
「じゃあ移動しようか!」
【ん? 移動?】
「そ。この新作ゲームはね。リアルな場所で遊ぶことが出来るゲームなんだよ」
立花さんは陽菜さんを抱き上げると、予定していた場所へ移動し、ソファーの上に陽菜さんを座らせる。
そして自分はゴーグルを付けると、腰に付けた模擬銃の感触を確かめていた。
確認が終わったのか、戦場へと彼は一人飛び込んでいくのだった。
半径百五十メートルの仮想空間が広がるフィールドへ。
「じゃあ、ゲームスタート!」
陽菜さんの言葉を合図として、ゲームが始まった。
俺はプレイ画面を見ながら、コメントを目で追い、宣伝効果を確かめながらプレイをする。
そして、やはりというべきか。コメントは立花さんが気になっているようだ。
【兄さん? 何してるんだ?】
【なんか、動いてるな。そしてゲーム内でも見たことない動きしてるな】
【兄さんが、ゲーム上手い……だと……!?】
【俺たちは幻覚でも見てるのか?】
「へへーん。お兄ちゃんはね。コントローラーで動かしてるんじゃなくて、なんか、こうやって、へい! ってやって動かしてるんだよ!」
【さっぱり分からん】
【なるほどな。まるで分からん!!】
「陽菜さんの話に捕捉しますと、立花さんの体にセンサーを取り付けまして、それの動きをゲーム機で受け取って、反映してるんです」
【なるほどな】
【つまり真実ゲームの世界に飛び込む事が出来る様になったって事か】
【すげぇ時代になったモンだな】
【それはそれとして兄さんの動きヤバいな】
とりあえず練習用のフィールドで各人動きの確認をしているのだが、確かにコメントで言われる様に立花さんの動きがおかしい。
通常のコントローラーでは当然出来ないが、走る速さが異常に早く、その勢いで崖の様な場所を駆け上がってゆく。
いや、駆け上がるというよりは飛び上がるという方が正しいのか?
高さ五メートル以上はある岩を三歩くらいで、頂上まで登っている。
故障だろうか?
疑問に思った俺は別のモニターで立花さんの動きを確認したが、ゲームと同じ動きをしている様に見えた。
故障じゃなかった。立花さんが人間では無かっただけだ。
……。
まぁ、プロモーションをするならこれ以上ない人物だろう!!
「ま、まぁ。皆さん動きの確認が出来たみたいですし。実際にオンラインで戦ってみましょうか」
「はい! 頑張ります!」
《よろしくお願いします》
すぐ横から陽菜さんの、そしてイヤホンから立花さんの声が聞こえ、俺は頷いてから対戦モードに切り替えた。
そして、オンラインで対戦メンバーを集める。
「あ。そうそう。何戦か遊ぶからさ。実際にソフトを持ってる人は一緒に遊べるよ! この天才陽菜ちゃんへ挑戦しに来るがいい!」
【よし、参加するかー】
【今すぐ購入して来いって事ね。分かったわ】
【急げ、急げ!】
「じゃあ、ゲームすたーと!」
陽菜さんの合図に合わせて、試合に参加する。
そして思っていたよりも早くメンバーが集まり、戦闘が開始された。
もしかしたら配信を見ている人で、既にプレイしている人が多いのかもしれない。
【間に、合わなかった!】
【参加できず】
【結構人数多そうだな?】
【まぁ視聴者数一万超えてるし。参加枠の六十人なんて一瞬だろ】
【陽菜ちゃんの参加すたーと読みで先に入るしかないってこと!?】
【それやって別のグループで旅立った奴も多そう】
コメントを目の端で追いながら、とりあえずゲームに集中する。
これでも、このゲームのプロモーションを任せられているプロのゲームプレイヤーだ。
生半可なプレイでは、宣伝とはならないだろう。
思わず憧れてしまう様な、自分もやってみたいと思うようなプレイをしなくては……。
しかし、それでいて、二人には楽しんで貰いたいと思う。
その方が宣伝効果としては高いだろうし。純粋に二人のファンである自分としては、喜ぶ姿を見たいというのもある。
《別のプレイヤーを見つけましたが、撃っても良いのでしょうか?》
「良い目を持ってますね……うん。そうですね。とりあえず初めてですし。撃ってみましょうか」
【この距離じゃ厳しくね?】
【別に高藤も当たるとは思ってねぇだろ。当たらなくても、カバーしますよって意味だぞ】
【これがプロか】
「あー。良いな。良いな。お兄ちゃん。良いなー」
《陽菜の分も残しておくよ》
そう言いながら、立花さんは手に持っていた銃を構えた。
【まぁ、兄さんなら全員残してくれるやろ】
直後、立花さんは銃弾を放って、遠方に居たプレイヤーの急所を一撃で撃ち抜き、リタイアさせた。
【は?】
【え? なに?】
さらに、追撃の二撃を恐ろしい速さで放ち、一人は同じく急所に、そしてもう一人は行動を制限する場所に当てる。
追撃に関しては殆ど同時に着弾した様な速さであった。
《よし。じゃあ、陽菜。一人残しておいたから、当ててみようか》
「おっけー! やっちゃうよー! おらおらー!」
意気揚々と走っていく陽菜さんとそれに追随する立花さんを見ながら、先ほどの信じられない行動を思い返す。
およそ人間離れした動きだった。
「あ。見つけた。てーい!!」
陽菜さんの放った弾丸は大分ハズレも多いが、敵プレイヤーの体力を十分に削り切って、リタイアさせた。
何というか、陽菜さんは普通だ。いや比べる対象がおかしいだけで陽菜さんも十分に上手い。
歩き方は見えない敵を警戒していたし、撃つまでの流れもスムーズで当てるのだってセンスを感じた。
しかし、それはあくまで常識の範囲内だ。常識を遥かに超越した存在を見ると、なんとも霞んでしまう。
「上手いですね。これで一チーム脱落。残りは……うん、他も動きがそれなりにあって減ってますね。とりあえず場所を移動しましょうか」
「はーい!」
《了解です》
俺は動きながら、コメントと戦況を確認する。
【おぉー。陽菜ちゃん。お上手】
【最後は陽菜ちゃんに仕留めてもらえるとは、あのプレイヤーは嬉しかっただろうな】
【ホンマか? 仲間が一瞬の間にリタイアさせられて、残った自分は動く事も出来ずに狩られた訳だが】
【動けない所を陽菜ちゃんに踏まれて、蔑まれて、撃たれる!? なんだ。ただのご褒美か】
【陽菜様「動けないんですか? へぇー情けない。ざーこざこ!」】
【くっ】
【俺はまだ負けてねぇ! オラ! もっと来いよ!】
【おかわり要求するな】
「さて、マップから考えると、そろそろ激戦区ですね」
「そうなんですか?」
「はい。この辺りは安全地帯がありますから、それの奪い合いですね」
「安全地帯なのに、危ないんだ。なら、近づかない方が良いんじゃ?」
「まぁそれはそうなんですが、どの道、行動できる場所はどんどん減少してゆきますし、そうなったら先に安全地帯を確保している方が有利なんですよ」
「そういう事かー」
《勉強になります》
【なるほどな】
【流石プロ】
【常識だぞ】
【はいはい。分かった分かった。凄い凄い】
【コメントでしか自慢出来ないんだから、放っておいてやれ】
「という訳で、我々の行動方針としては、安全地帯を確保するという方向でいきましょうか」
「はーい」
《じゃあ、とりあえず道を作りますね》
「ん?」
「おっけー! お兄ちゃん。よろしくぅー!」
《あぁ》
立花さんはそう言い残すと、武器を格納してから走り出した。
俺は急いで銃を取り出し、立花さんの援護をするべく構える。
そして立花さんに近づこうとする敵を撃ったが、動揺からか上手く当たらず外してしまった。
すぐさま二発目を放とうと準備するが、それよりも早く立花さんが、一応実装されている程度の接近戦格闘技で敵を無力化していた。
直後、俺は急いで動けない状態の敵を撃って、リタイアさせるのだった。
《カバーありがとうございます》
【近接!!】
【そんな事も出来るのか!】
「うー! 二人ばっかりずるい! 私もいくー!」
「援護します」
【暴走機関車ひな。いっきまーす!】
【敵が居ないのに銃撃ってんの笑うんだが、彼女はいったい何と戦ってるんだ】
【君には見えないのか。それがこの国を覆う闇の正体だ】
【突然壮大な物語始まるじゃん】
【ただのトリガーハッピーなんだよなぁ】
安全地帯へと走る陽菜さんを追いながら、彼女が近づけさせない様にと放っている弾丸を掻い潜り、接近しようとする敵を撃ち抜く。
まったく素人とは思えない程にやりやすい二人だ。
少々暴走しがちな所もあるが、現状としてはそれが上手くハマっている形だな。
「さぁ、安全地帯まで後少しですよ」
《む? 何か強い敵が》
立花さんの声に場所を確認すれば、どうやら三人に上手く囲まれてしまったようだ。
近づこうとすると牽制の弾幕で接近出来ず、銃弾を放とうにも射線が通らないのだろう。
一人では難しい。援護しなくてはいけない。
「お兄ちゃんをイジめるな!! 私が助けにいくよ!」
【うおぉおお!! いけー!!】
【熱い展開になってきたな】
《陽菜!!》
立花さんの危機に陽菜さんが飛び込んでいったが、敵はあまりにも慣れているし、陽菜さんが一人援護に行ったところでどうにもならないんだろう。
むしろ、陽菜さん自身も危ない。
俺も援護に向かっているが、おそらくは間に合わない。
残念だが、陽菜さんが撃たれて終わりか。と思っていたら、立花さんが信じられない様な動きをした。
なんと、一応実装されている程度の救助コマンドと、移動コマンドを使いこなし、陽菜さんを抱きかかえて、障害物を避けながら、飛び回り始めたのだ。
さながら忍者である。
《陽菜。俺は動く事しか出来ん。当てられるか?》
「まっかせてー! てーい!」
「こちらも援護します!」
俺は一瞬呆然としていたが、立花さんの声に自分を取り戻し、すぐさま硬直している相手を撃ち抜いた。
おそらくは相手も呆然としていたのだろう。仕方ない。誰だってあんな物見せられたら動きが止まる。
「わっ、やった、やった!」
【おぉ! 勝ったぞ!!】
【兄さんの異次元殺法ヤバすぎだろ。ちゃんとゲームの規格内で戦ってくれ】
【何言ってんだ。ちゃんと実装されてるぞ。ただ実行できる奴が居ないだけで】
【それはちゃんと規格内なのか?】
「二人とも! 逃げて!」
《陽菜!》
「え? あ、お兄ちゃん! あ、わたしも」
俺も気づけなかったが、障害物に隠れていた敵に二人は撃たれ、リタイアしてしまった。
それから何とか抵抗したが、一人では勝てず俺も負けてしまった。
「申し訳ない。油断しました」
「いえいえ! 高藤さんは悪くないですよ。私たちが油断しちゃってましたから!」
《面目ない》
「いえ。しかし、そうですね。では皆悪かったという事で。次の戦いへ行きましょうか」
「おー!」
《了解》
それから俺たちは何戦か繰り返し、十分にゲームの魅力をユーザーに伝える事が出来た。
後日会社に連絡を取った所、陽菜さんのチャンネルでゲームの宣伝をすると予告した日から今日までの間に、ゲームの売り上げが三倍に増えたらしい。
恐ろしい宣伝効果だと思う。
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