愛され転生エルフの救済日記

とーふ(代理カナタ)

文字の大きさ
59 / 246

第18話『愛よ。走り出せ』(ジェイク視点)②

しおりを挟む
「オリヴァー」

「……! はい」

そして、オリヴァーもその空気を感じ取ったのか、先ほどまでのふざけた様子はなく、真剣な表情で俺に視線を返した。

「お前に命令を下す」

「はい」

「明日の早朝にここを発ち、ムイゼンへ向かえ」

「……」

「そして、騎士として。シーラ様を御守りしろ」

「ハッ!」

姿勢を正し、敬礼をするオリヴァーに頼もしさを感じながら、俺は続いて共有しなくてはいけない事項を話してゆくのだった。

そう。これはシーラ様がムイゼンで活動をする様になってから始まった動きであり、これからシーラ様の周りで何かが起きる予兆でもあった。

「シーラ様の護衛をする上で、お前に共有しておく事がある」

「……」

「シーラ様の活動時期と合わせて、ムイゼンの周辺地区で魔王の活動が確認された」

「まさか!?」

「あぁ。そのまさかだ。魔王の狙いはおそらくシーラ様と思われる」

「しかし妙ですね。魔王とエルフは歴史的に見てもそれほど親しい間という訳でも、敵対関係という訳でもありませんが」

「物事に例外というのは付き物だ。そもそもからして、シーラ様は人に近しいエルフだろう? ならば、そんなシーラ様に興味を持つ魔王が現れたとしても、それほどおかしな話でも無いだろう」

「それは確かにそうですね」

「という訳だ。オリヴァー。対魔王戦も意識しつつ、ムイゼンへ向かえ」

俺はそうオリヴァーへ命令し、反応を待っていたのだが、どうもオリヴァーの反応が悪い。

「どうした? オリヴァー。怖気づいたか?」

「あ、いえ。対魔王戦装備とは何だろうかと考えてました」

「そりゃお前。気合いだよ。気合い」

「気合ぃ~?」

「魔王ってのは人知を超えた存在だからな。生半可な覚悟じゃあ魔王と戦う事すら出来ん」

「まぁ、それはそうですけど」

「魔王が、現れ戦闘を行うと、魔物がその強大な魔力から逃れる様に大移動を始め、その大移動に巻き込まれると町や都市が壊滅すると言われています」

「いやいや。そんなのどうしたら良いんですか。何か対策は無いんですか?」

「ない! 魔王に対して有効な武器も無いし。奴ら、例えその体を完全に破壊したとしても、時間が経てば復活してしまう。故に、魔王への有効な攻撃手段などはないのだ」

「……それじゃあ人類には勝てないのでは?」

「あぁ。そうだろうな。だからこそ、魔王と戦う際には気合が必要だと言っている」

「はぁ……まるで参考にならないですね」

「神話の化け物だからな。そういうモンだ。まぁ、どうしても嫌だというのなら、お前以外の人間を選定するが? シーラ様の護衛など、例え確実に将来死ぬとしても希望者多数だろうからな」

「いえ!! このオリヴァー! 謹んで任務を受けさせていただきますっ!!」

「よろしい。では準備をしてこい」

「承知いたしましたァ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

処理中です...