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第13話『今日私たちが来た事は、忘れて下さい』①
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酒場の端にあるテーブルに座って、私はキャロンさんと二人で話をしていた。
フィンさんはちょうど今、外に出ていってリアムさんと待ち合わせをするべく、人を雇っている様だった。
リアムさんの姿を教えて、その人に伝言を頼むという方法らしい。
こう思うと、最初から待ち合わせ場所を決めておいた方が良かったのだろうけど、そうなる前にドタバタして別れてしまったから、この辺りは仕方のない事なのだろう。
「アメリアはさ」
「はい。なんでしょうか」
「怖くないの? 闇の力がどうこうとか、使命がどうこうとかさ! アタシには関係ない! そんなのやりたい人がやれば良いじゃない! そうでしょ!? アタシ、何か間違えた事言ってる!?」
「いえ。何も」
「そう。そうよ。間違えてなんかない。だって、それが普通だもの。こんな証が出てきたからなんだって言うのよ。おかしいわよ。こんなの、生贄と同じじゃない」
キャロンさんは辛そうに眼を閉じた後、コップに入っていたお酒を一気に飲み干していた。
そして、勢いよくコップをテーブルに叩きつけながら、震える右手を左手で抑える。
その姿を見て、私はあぁ。と理解した。
この人はリリィと同じなのだ、と。
だから、私はキャロンさんの手を握った。
「っ!」
「キャロンさん」
「な、なにっ!?」
「今日私たちが来た事は、忘れて下さい」
「……え?」
「私たちも忘れます。私たちは出会わなかった。聖人はこの街に居なかった。これでいきましょう」
「でも、どうやって説得するの? 見逃してくれるはずがない」
「それは大丈夫です。私、説得は得意なので」
「なら! アタシを説得すれば良いじゃない! 得意なんでしょう!?」
「まぁ、それはそうなんですが……向いている人と、向いていない人が居ると思いますので」
「そう……そうよね。聖人なんて、やりたい奴がやれば良いのよね。うん。そうだ。……あー。そう考えたら、何か気が楽になってきた! ねぇ、アメリア。貴女も残るでしょ? これからどうする? さっき見てたけど、アメリアって何か不思議な力を持ってるじゃない。それでさ。上手く生きてこうよ。こんな世の中だけどさ。二人でなら、どんな風にでも生きていけるじゃない?」
「キャロンさん。私は征きますよ。世界の果てへ。闇の力の根本へ」
「なんでよ!! さっき言ってたじゃない!! 出来る人がやれば良いって! アンタはどう見ても出来ない側の人間でしょ!? そんな細い体で! こんな小さな手で何を護るつもりよ!!」
「妹を」
「っ」
「私が何もしなければ、リアムさん達が失敗すれば、世界は再び暗黒の時代へと戻ります。そうなれば、私の妹リリィは苦しい思いをするでしょう。もしかしたら魔物に喰われてしまうかもしれない。それが私はただ、怖いのです」
「そんなの! そんなの……どうしようもないじゃない。アメリアが居るからって成功する訳じゃないでしょう?」
「はい。そうですね。でも、可能性は増えます」
「……」
「キャロンさん。私はただ、後悔したくないだけなんです。全てが駄目になった時に、あの時やっておけば良かったなと思いたくないだけなんです」
「アタシは、両親を殺されたわ! 友達も、妹も! 全員! 大切な人はみんな、盗賊に! アタシだって、ずっと、ずっと、奪われてきた!」
フィンさんはちょうど今、外に出ていってリアムさんと待ち合わせをするべく、人を雇っている様だった。
リアムさんの姿を教えて、その人に伝言を頼むという方法らしい。
こう思うと、最初から待ち合わせ場所を決めておいた方が良かったのだろうけど、そうなる前にドタバタして別れてしまったから、この辺りは仕方のない事なのだろう。
「アメリアはさ」
「はい。なんでしょうか」
「怖くないの? 闇の力がどうこうとか、使命がどうこうとかさ! アタシには関係ない! そんなのやりたい人がやれば良いじゃない! そうでしょ!? アタシ、何か間違えた事言ってる!?」
「いえ。何も」
「そう。そうよ。間違えてなんかない。だって、それが普通だもの。こんな証が出てきたからなんだって言うのよ。おかしいわよ。こんなの、生贄と同じじゃない」
キャロンさんは辛そうに眼を閉じた後、コップに入っていたお酒を一気に飲み干していた。
そして、勢いよくコップをテーブルに叩きつけながら、震える右手を左手で抑える。
その姿を見て、私はあぁ。と理解した。
この人はリリィと同じなのだ、と。
だから、私はキャロンさんの手を握った。
「っ!」
「キャロンさん」
「な、なにっ!?」
「今日私たちが来た事は、忘れて下さい」
「……え?」
「私たちも忘れます。私たちは出会わなかった。聖人はこの街に居なかった。これでいきましょう」
「でも、どうやって説得するの? 見逃してくれるはずがない」
「それは大丈夫です。私、説得は得意なので」
「なら! アタシを説得すれば良いじゃない! 得意なんでしょう!?」
「まぁ、それはそうなんですが……向いている人と、向いていない人が居ると思いますので」
「そう……そうよね。聖人なんて、やりたい奴がやれば良いのよね。うん。そうだ。……あー。そう考えたら、何か気が楽になってきた! ねぇ、アメリア。貴女も残るでしょ? これからどうする? さっき見てたけど、アメリアって何か不思議な力を持ってるじゃない。それでさ。上手く生きてこうよ。こんな世の中だけどさ。二人でなら、どんな風にでも生きていけるじゃない?」
「キャロンさん。私は征きますよ。世界の果てへ。闇の力の根本へ」
「なんでよ!! さっき言ってたじゃない!! 出来る人がやれば良いって! アンタはどう見ても出来ない側の人間でしょ!? そんな細い体で! こんな小さな手で何を護るつもりよ!!」
「妹を」
「っ」
「私が何もしなければ、リアムさん達が失敗すれば、世界は再び暗黒の時代へと戻ります。そうなれば、私の妹リリィは苦しい思いをするでしょう。もしかしたら魔物に喰われてしまうかもしれない。それが私はただ、怖いのです」
「そんなの! そんなの……どうしようもないじゃない。アメリアが居るからって成功する訳じゃないでしょう?」
「はい。そうですね。でも、可能性は増えます」
「……」
「キャロンさん。私はただ、後悔したくないだけなんです。全てが駄目になった時に、あの時やっておけば良かったなと思いたくないだけなんです」
「アタシは、両親を殺されたわ! 友達も、妹も! 全員! 大切な人はみんな、盗賊に! アタシだって、ずっと、ずっと、奪われてきた!」
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