魔力が多すぎても足りなくてもエッチしたくなる世界での、とある夫婦(どちらも男性)の話。

名もなき萌えの探求者

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本編

うさぎが護衛に物申すお話。

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 トール様の妻になって、はや4ヶ月。
 四つの季節に分かれているこの国の、春から夏に季節も変わって、正直毎日暑すぎてつらい。
 いや、屋敷にいる限りはいいんだよ。俺の自室はトール様のご厚意により、大変高性能な冷房魔道具が導入されているので、普段アクセサリー作りの作業をしている机周辺を中心に涼しい空気で満ちている。
 尚且つ、お屋敷の中どこもかしこも空調ばっちりで、居心地がいい。
 外にね、出る時だけね、つらいの。
 
 それはそれとして。

 改めて専属護衛になったチャコに、俺は声をかける。

「チャコ、こっちおいでよ」
「いえ、この部屋だと窓側が一番侵入が用意なのでここにいます」
「そうそう俺が狙われることなんてないってー…」
「油断は命取りなので」

 以前、俺が魔力を吸い取る宝石に触れてあわやという状況になったとき、護衛についていたのはチャコだ。あれから3ヶ月ほど経っているが、もうずっとこんな感じ。
 いくら空調聞いてるからって、窓際は暑いと思うんだよなぁ。

「ねえ、サリーからもなんとか言ってよ。チャコが熱中症とかで倒れないか、俺心配」
「チャコの種族は熱さに強いから、そこは大丈夫ですよ」
「いや、そうはいってもさぁ」

 俺は横に控えていたサリーに味方になってもらおうとしたが、普通に振られてしまった。
 サリーは、チャコが正式に俺の護衛になって少ししたくらいに俺の専属になったメイドさんだ。専用サイズのメイド服を着た逞しい体型の男性で、ひらひらとゆれるスカートを履いているけれど、口調も声も態度も男性のままの彼。
 なんでも、メイド業に憧れてこの職を目指し、技術を手に入れた後、メイドの仕事をするからにはメイド服を着るべきだという信念のもと、仕事中はスカートを履いているのだとか。普段着はズボンなんだって。護衛としても腕の立つ人なのだとトール様は言っていた。
 俺は魔力不足から発情状態になる危険性があるため、万が一襲いかかった時にちゃんと抵抗できる人を専属にした方がいいだろう、というトール様の配慮がありがたい。
 出会ってまだ半年も経っていないのと言うのに、トール様の俺への解像度の高さまじやばい。好き。
 チャコにしても、サリーにしても、少し変わった経歴っぽいの使用人が多いよな、ここ。トール様自身もご両親との確執みたいなん何かあるっぽいし、なんかそういう採用基準があるのかな。
んなわけないか。

「あ」
「どうされました?」
「基礎金具使い切っちゃった」

 考え事をしつつ新作を作っていたからか、少々作りすぎてしまった。
 生活費はすべてトール様が出してくれているし、トール様とのエッチのおかげで魔力補填用のディルドを定期購入する必要もなくなった上に(まあ、予備は置いてるけど)体調も良いものだから、最近はついつい調子に乗って作りすぎてしまいがち。いやあ、お金と体の心配がないって素晴らしい。

「今から……は、さすがに暑いか。ちょっと休憩して、夕方日差しがマシになったら買い出しに出てもいい?」

 俺の提案に、チャコもサリーの「かりこまりました」と綺麗な礼を返してくれた。


***


 貴族ってこう、お店の人を屋敷に呼んで買い物をする事も多いらしいが、俺の必要としてるのは高級品ではなくて庶民向けのアクセサリーを作るための金具。
 お店に出向いて買うのが一番いい。
 馴染みの卸売店でお目当てを購入し、ホクホクした気持ちで道を歩いていたら、突然チャコに腕を引かれた。
 バランスを後ろ向き崩した俺はそのままサリーに抱き止められ、目の前ではチャコが自分の1.5倍くらいある男の腕を押し倒して捻り上げていた。

「え、え?何??」
「マルス様の鞄をひったくろうとしておりましたので」
「ちくしょう離せよ!!」

 男は暴れようともがいているが、チャコはぴくりともその腕の力を緩めず、男が立ち上がれる気配はない。

「警備のものがくるまで、このままで。サリー、マルス様の周辺に気をつけてください」
「了解」

 冷静で大変お強い2人を見つつ、俺はすりやひったくりの被害に遭いそうになったの久しぶりだったなぁーと、ぼんやりと思っていた。


***


 そして夜。
 いつものようにベッドに座ってトール様を待っているとき、すごく見覚えのあるものをベッドの下で見かけて、頭の中にたくさんの疑問符が飛ぶ。
 部屋に入ってきたトール様はその様子を見て、心配そうに俺を抱きしめて労ってくれた。

「大変だったな」
「?」

 一瞬なにが?と思ったが、ああ、昼間のこと報告があったのね。
 勘違いさせてすんません。

「いや、下町では割と日常茶飯事ですし、傷ついたり怯えたりとかはないですよ」

 というか、俺もいい大人ですし、あれくらいでびびりません。

「それよりも、俺、気になるものがあるんです」
「なんだ?」
「これ、…なんでトール様の部屋に?」

 俺の手には、ディルドが握られている。
 俺が握ってるものの他に、結構な数が箱に収納されていて、その…これは俺のような魔力欠乏症用の魔力補填ディルドのはず。
 特殊な紋様が施されているからまず間違いないだろう。
 当たり前だけど使用した様子がないので、新品なんだろうなこれ。
 俺の手のディルドをみて、トール様はああ、と苦笑した。

「治療用だな」
「…????」
「ほら、俺は日常魔法についてはこれっぽっちも才能がないから、周りを壊さないような魔力の放出が下手だろう?だが、このディルドは魔力を貯めるためのもので、割と丈夫でほぼ勝手に吸い取ってくれるから魔力放出にちょうど良くてな。よく作らせてもらっていたんだ」
「なる、ほど」

 合点が言った。
 なぜトール様が魔力欠乏症について知っていて、それの治療用のディルドのことや込められている魔力量について詳しかったのか。
 作る側だったからなのね。

「じゃあ、俺、今までにトール様の魔力に命救われたこともあったんですね」
「まあ、そういうこともあったかもな」

 ディルドをまじまじとみて気づく。
 あ、これまだ魔力空っぽだ。
 ……。

「あの、トール様」
「うん?」
「これに、魔力込めてるところ、見てみたいなぁ、なんて」
「……、それは」

 魔力はめんどくさい手順を踏んだ魔法使用時を除き、使用したり吸い取られたり流しこまれたりすると、キモチイイ。
 このディルドへの魔力補填がそういう手順を踏んだ魔法使用とカウントされるのかどうかはわからなかったけど、トール様の反応を見るに、ビンゴだろう。
 これに魔力を込めたら、気持ちいいに違いない。
 そして俺は、1人でちょっと気持ちよくなってるトール様が、見たい。
 毎日一緒にエッチしてるから俺の魔力もそこそこ溜まってるし、一本くらい魔力込めた後でも、俺がトール様の魔力を吸い取り切ってしまうこともないだろうし。

「だめ、ですか?」
「いや、その…、…マルス、わかって言ってるな?」
「えへへ、バレました?気持ちよくなってるトール様、見たいです」
「毎日見てるだろ?」

 それはそう。
 でもさ。

「いつもは俺、もう自分の快感にいっぱいいっぱいなんで、トール様の気持ちいい顔、堪能できないんですよ」
「堪能って…」
「ね、ね、一回だけっ!ちょびっとだけでいいですから!」

 俺の必死のおねだりが聞いたのか、トール様は難しい顔をしながらも、ちょっとだけだからな、と頷いてくれた。
 トール様は俺の手からディルドを受け取ると、ふぅ、と一つ息を吐いてからゆっくりと魔力を流し込み始めた。
 ぼわ、とディルドが光る。
 光るディルド。
 ちょっと面白いが、それよりもトール様だ。
 小さく浅く、呼吸が乱れる。
 その頬はほんのり赤くなり、時々息を呑むのと同時に体がぴくっ震えていて、なんというか。
 えっっっっっっっっろい!!!!最高!!!!!!
 おねだりしてよかったー!!!!
 が、あまりにエロいので、俺の方が耐えられなくなった。

「ありがとうございます、トール様。堪能しました」
「っ、なら、よか…」
「なので、次は俺にください」

 そう言って押し倒す。

「えっろいトール様みて、俺、もう我慢できなくなりました」
「ふはっ」

 トール様が笑って、すぐに簡単にマウントを取り返された。
 そして、思い切り深いキスをされる。

「っ、んぅッッ」

 同時に流し込まれた魔力に体が跳ねた。
 気持ち良すぎる。
 けれど離してもらえない。どんどん注がれる魔力と、俺の口の中の弱いところをちろりと舐めてくるトール様の舌に、身体中が悦んでいく。

「んっ、んんっ、ンあっ」

 唇が離れた瞬間に声が漏れた。

「マルスは本当に、可愛いな」

 自身も少し息の上がった声で、トール様は楽しそうにそう言った。
 そのあとは、いやもう、毎度のことながら、最高でした。


***


 ホクホクして起きた次の朝、いつものように窓際に立っているチャコの顔いろが若干悪いことに気づいた。
そして、目の下にはうっすらくまさんがいらっしゃる。

「……、チャコ、こっちきて」
「? はい」

 呼べば来るけど、基本的にチャコはずーっとあの窓際に立っている。
 そしてお出かけの時も、ずーーーーっとピリピリしてる。
 いや、わかるのよ、護衛だもん。
 俺を守るために緊張感を持って職務全うしようとしてくれてるんでしょうよ。
 前にあんなこともあったしね。
 でも、俺は元々平民なわけで。
 どうにも、なんかこう。

「むかつく」
「え?」
「チャコ、夜間の警備、勝手にしてるでしょ」

 チャコが一瞬ギクリと体を震わせた。
 チャコの勤務は基本日中だ。屋敷の夜間警備担当は別にいる。

「んでもって、昨日俺がスリに会いかけたら、なおのことピリピリして、ほとんど寝てないでしょ」
「それは…」

 この反応はビンゴだな。
 チャコが焦ったように、サリーを見上げたが、サリーは素知らぬ顔をしている。
 サリーはサリーで思うところがあるのかもしれない。
 けどまあ、そんなことは置いておいて。

「チャコはさ、俺の護衛でしょ?」
「はい」
「じゃあ、俺の機嫌とかも守ってくれない?」
「…と、いいますと…?」

 あんまりない俺のマジトーンに、チャコの緊張が伝わってくる。
 けど、これはちゃんと伝えておかなきゃ多分、未来の俺が後悔するから。

「俺さ、俺のためにチャコが自分を大事にしてないの、めっちゃ腹立つんだよね」
「ッ!」

 びくり、とチャコの肩が跳ねた。

「俺は前の件があった上で、チャコなら安心して護衛してもらえるって思ったから、チャコを専属にって選んだよ。でもさ、だからと言って、普段からチャコに無理してほしいなんて全く思ってなかったわけ」

 貴族なら、もしかしたら護衛のこう言う態度が普通なのかもしれない。
 けど、俺はどうしても、落ち着かないし、腹が立つ。
 俺だって自分を大事にできてるかって言われたら自信はないけれど、それでも。

「ずっとムカついて過ごすの、俺嫌なんだよね」
「…っ、申しわけ」
「だから、今からチャコに一つ命令します」

 謝りかけた姿勢で、ぎし、とチャコが緊張で固まる。
 うん、それくらいの緊張感を持って聞いてください。

「チャコは、自分のことを大切にしながら俺を守りなさい」
「…っ!」
「緊張感は大事だけど、ずーっと肩に力入れててさ、そのままだと遠からず倒れるよ。それは勘弁願いたい。俺は、長く、チャコにそばにいて欲しいから」

 頭を上げたチャコの目が潤んでいる。
 うぐぐ、言いすぎたかなぁ。
 いやでも、これは言っとかないと、俺の今後のクオリティオブライフにも関わるし、俺、チャコ可愛いんだよなぁ。
 そんなふうに思っていたら、チャコが勢いよく頭を下げた。

「申し訳ありませんでした!未熟でした!」
「え、あ、いや」
「マルス様の温かい言葉に恥じぬよう、自身の管理にも気をつけて参ります!」
「ええと、うん。これからもよろしくね、チャコ」

 下げた頭をよしよしと撫でたら、ぽたぽたと涙が床を叩く。
 泣き顔は見られたくないだろうとそのまま頭を撫でつつ、俺はサリーの方へを視線を向ける。

「サリーもね。自分を大事にしながら俺のそばにいてください」
「承知しました。自分を大切にしつつ、誠心誠意お仕えいたします」

 なんだか、妙に嬉しそうなのはなんでなのサリー。
 まあ、いいか。



 次の日から、チャコの表情が少しゆるんだので、俺は大変満足なのでした。
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