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第18話
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「え、なにこれ、こわ」
本に書かれた物語をリリアさんが読み切ったあと、最初に声を出したのはエレンだった。
「まあ、これが事実とは限りませんけれど」
リリアさんは苦笑して、本に栞を挟んで閉じる。
フィズ様は眉を寄せて、その本を見つめていて、なんか、こう、たまらなくなってフィズ様を抱きしめる。
「大丈夫ですか」
「ん。なんというか、これが本当なら、…何を恨めばいいのやら」
「いや、普通にうさぎも星も恨んでいいと思いますけど」
「俺も同感―」
俺の言葉にエレンが同意して、カラさんは困ったように眉を下げている。でもあの顔は多分、同じことを考えているんだろう。
優しいフィズ様のことだから、うさぎやその子の末路に心を砕いているのだろうけれど、でも正直、俺はエレンの感想の方が近い。
うさぎの忠誠はどちらかというとストーカーに思えるし、星…いや、本物の星なのか人間を星に例えているのかは知らんが、その星が余計なことしたせいでこんなことになったのは間違いない。
なんというか、悲劇というより、怪談に感じる。
「とりあえず、次はこの話の裏と、他に同じような話が国内外にないかどうか調べてきますね」
「ああ、頼む。だが無理はするなよ」
「わかってますよー!フィズ様を悲しませるようなヘマはしませんとも!」
とん、と自分の胸を叩いて笑い、リリアさんはではもう一回行ってきますね、と離宮を出ていった。
リリアさんを見送ってから昼食をとって、俺たちはまたさっきの話について話し合う。
「なんてあんな話がこれみよがしに置いてあったんですかね、それも隣国の図書館に」
「さあな。なんにせよ、あれが真実だとして、どこまで王族に伝承されてるのかも気になるが」
フィズ様は顎に手を当てて、ううんと唸る。
生まれてすぐに離宮に移されたから、一般的な情報しか知らないとフィズ様は言っていた。
そして、王族ではあるものの継承権を持たないフィズ様が、王家の秘密的なことを確認するのは難しいのだろう。
そもそも、確認できるならリリアさんに頼むこともないのだから。
先ほどの昔話が本物かどうか、という確認はどうやってリリアさんの続報待ちという形になりそうだ、というのが俺たちの一端の結論だった。
そして、一旦解散するか、という流れになりかけた時、エレンが「あ」と声を上げた。
「呪いかどうかだけでも、確かめてみる?」
エレンがぐーっと伸びをしながら言う。
「……は?」
は?と返したのは俺とカラさん。フィズ様は目をぱちくりして固まっている。
「どういうことだ」
「言葉のままの意味だけどぉ。耳付きが生まれる理由が呪いだと仮定するなら、いまフィズ殿下が呪われてるかどうかだけなら、俺、調べられるよ」
なんでそんな重要なことを、今まで言わなかったんだ。
その場にいる全員からそんな視線を投げかけられて、エレンが少し不貞腐ようにほおを膨らませた。
「今、思いついたんだから、仕方ないじゃーん。それに、呪われているかどうかを調べる術式ってめっちゃくちゃややこしい上に、俺への負担も結構でかいし、普段全くやらないから思いつかなかったんだもん」
負担がでかい、に対して、カラさんとフィズ様が眉を寄せる。
「カラの恋人に無理をさせるつもりはない」
フィズ様がそう言い切って、エレンは少し目を丸くする。
「え、知りたくないの?」
「いや、知りたくないかと言われたらそんなことはないが」
「だよね?負担っていっても別に死ぬわけじゃないし。フィズ殿下のためっていうよりカラのためだから。まあ、どっちでもいいよ」
エレンが複雑そうな顔をしたカラさんを抱きしめて、それを見たフィズ様が困ったように俺を見る。
「エレン、その術式はフィズ様への負担はどうなんだ?」
「え?あー、うーんと。もし呪われてたら、すごい痛い」
「すごい、いたい」
反復したのはフィズ様。
「呪われてなかったら、別に何も起きないよ。俺が疲れるだけ」
フィズ様は、長く沈黙した後、「調べて、みたい」とぽつりと言った。
本に書かれた物語をリリアさんが読み切ったあと、最初に声を出したのはエレンだった。
「まあ、これが事実とは限りませんけれど」
リリアさんは苦笑して、本に栞を挟んで閉じる。
フィズ様は眉を寄せて、その本を見つめていて、なんか、こう、たまらなくなってフィズ様を抱きしめる。
「大丈夫ですか」
「ん。なんというか、これが本当なら、…何を恨めばいいのやら」
「いや、普通にうさぎも星も恨んでいいと思いますけど」
「俺も同感―」
俺の言葉にエレンが同意して、カラさんは困ったように眉を下げている。でもあの顔は多分、同じことを考えているんだろう。
優しいフィズ様のことだから、うさぎやその子の末路に心を砕いているのだろうけれど、でも正直、俺はエレンの感想の方が近い。
うさぎの忠誠はどちらかというとストーカーに思えるし、星…いや、本物の星なのか人間を星に例えているのかは知らんが、その星が余計なことしたせいでこんなことになったのは間違いない。
なんというか、悲劇というより、怪談に感じる。
「とりあえず、次はこの話の裏と、他に同じような話が国内外にないかどうか調べてきますね」
「ああ、頼む。だが無理はするなよ」
「わかってますよー!フィズ様を悲しませるようなヘマはしませんとも!」
とん、と自分の胸を叩いて笑い、リリアさんはではもう一回行ってきますね、と離宮を出ていった。
リリアさんを見送ってから昼食をとって、俺たちはまたさっきの話について話し合う。
「なんてあんな話がこれみよがしに置いてあったんですかね、それも隣国の図書館に」
「さあな。なんにせよ、あれが真実だとして、どこまで王族に伝承されてるのかも気になるが」
フィズ様は顎に手を当てて、ううんと唸る。
生まれてすぐに離宮に移されたから、一般的な情報しか知らないとフィズ様は言っていた。
そして、王族ではあるものの継承権を持たないフィズ様が、王家の秘密的なことを確認するのは難しいのだろう。
そもそも、確認できるならリリアさんに頼むこともないのだから。
先ほどの昔話が本物かどうか、という確認はどうやってリリアさんの続報待ちという形になりそうだ、というのが俺たちの一端の結論だった。
そして、一旦解散するか、という流れになりかけた時、エレンが「あ」と声を上げた。
「呪いかどうかだけでも、確かめてみる?」
エレンがぐーっと伸びをしながら言う。
「……は?」
は?と返したのは俺とカラさん。フィズ様は目をぱちくりして固まっている。
「どういうことだ」
「言葉のままの意味だけどぉ。耳付きが生まれる理由が呪いだと仮定するなら、いまフィズ殿下が呪われてるかどうかだけなら、俺、調べられるよ」
なんでそんな重要なことを、今まで言わなかったんだ。
その場にいる全員からそんな視線を投げかけられて、エレンが少し不貞腐ようにほおを膨らませた。
「今、思いついたんだから、仕方ないじゃーん。それに、呪われているかどうかを調べる術式ってめっちゃくちゃややこしい上に、俺への負担も結構でかいし、普段全くやらないから思いつかなかったんだもん」
負担がでかい、に対して、カラさんとフィズ様が眉を寄せる。
「カラの恋人に無理をさせるつもりはない」
フィズ様がそう言い切って、エレンは少し目を丸くする。
「え、知りたくないの?」
「いや、知りたくないかと言われたらそんなことはないが」
「だよね?負担っていっても別に死ぬわけじゃないし。フィズ殿下のためっていうよりカラのためだから。まあ、どっちでもいいよ」
エレンが複雑そうな顔をしたカラさんを抱きしめて、それを見たフィズ様が困ったように俺を見る。
「エレン、その術式はフィズ様への負担はどうなんだ?」
「え?あー、うーんと。もし呪われてたら、すごい痛い」
「すごい、いたい」
反復したのはフィズ様。
「呪われてなかったら、別に何も起きないよ。俺が疲れるだけ」
フィズ様は、長く沈黙した後、「調べて、みたい」とぽつりと言った。
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