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45 /ルドルクスside
(ファルシュカside)
「ほら、頑張って。番になったら、こんなところじゃなくて……素敵なホテルで一晩中、愛し合おう。一週間、休暇を取ってもいい。気持ちいいこと、したいだろう?」
僕の頭は朦朧としていて、殿下の声が入ってきて通り過ぎるだけになっていた。目を開けていられなくて、ずるずると力が抜けていく。
ああ、そうだ。うさパチ……。ジュースを被った時に、濡れてはいけないと置いてきてしまったんだ。
「さぁ……ね?優しくするよ……」
殿下は、僕がネックガードを外すように、しきりに誘導している。僕の頬や、耳のあたりに残った甘い液体を、チロチロと舐めていた。相当美味しかったのか、執拗に。
その上に手は、僕の腰元に添えられていた。鱗を触られていて、嫌悪感を感じているのに気持ちよくて、身体がヒクヒクして辛い。
もう嫌だ。この身体を見られた上、よく知らない殿下に触れられて感じている現状が、受け入れられなくて、涙を溢した時。
「何を、していらっしゃる」
「――――な、何故……ここにっ?」
「ファルシュカを、返してもらう」
「!」
目の前にいた殿下は、恐怖に凍りついたかのように、固まっていた。目をぎょろぎょろとさせ、大量の汗を吹き出しながら、びくりとも動かない。
すぐにぱさりとローブに包まれた。優しい、涙の出るほどほっとするフェロモンだ。
「るど……さ、ま」
ギリギリ保っていた意識は、ぷつんと途切れていた。
(ルドルクスside)
上半分を脱がされ、美しい鱗に触れられているファルシュカを見た瞬間、視界が血に染まったと思った。
怒りが天元を一瞬で突破し、逆に冷静になったらしい。
周辺に漂うアウグスト王子の強制発情フェロモン。俺の威嚇フェロモンで押し潰すように圧力をかけると、あっという間に消え去った。
俺の威嚇フェロモンを一身に受けたアウグスト王子は、『死』と『アルファとしての敗北』を感じ動けないだろう。
本心では殴り飛ばして星空に打ち上げてやりたいところだったが、それよりもまずファルシュカの保護だ。
心に受けた傷は、一生治せないのだから。
急ぎ屋敷へ帰りファルシュカを預けようと弟の様子を聞くと、なんと弟も王族の蛮行のせいで寝込んでいるらしい。しかも、元凶の王女がまだ居座っている。
待ちたいならいつまででも待てばよろしい。
俺は無視をすることに、一瞬も躊躇いはなかった。
うちにオメガの使用人はいない。全員がベータ。使用人の選定にも時間がかかる。何より、この手から離したくない。
と、色々考えた結果、最も信用出来るのは自分だけ――と言い訳をして、俺がファルシュカの身体を清めることにした。
ぐったりとして意識のないファルシュカが痛ましい。怪我はないようだが…………真っ白でなめらかな肌に、美しく輝く鱗。細くくびれた腰やうっすらと割れた腹の凹み。なだらかな鼠蹊部の続きを見たいという気持ちを抑えて、汚れている上半身だけをとりあえず拭き清める。
丁寧に、優しく。
嫌なアルファの匂いが完全に消えて無くなり、石鹸と天然成分の花の香りだけになるまで。ファルシュカを拭きあげる。
下履きはそのままに、下衣を脱がせ、形の良い脚を目で堪能するより前に素早く目を逸らし、夜間着を探す。
綺麗にさせると、ひとつの作品を仕上げたような達成感だ。侍女たちの気持ちが少し分かった……。
好んで着てくれていた、兎を模した夜間着をなんとか着せると、優しく毛布をかけてやる。心なしか、くふぅと弱い寝息が聞こえた気がした。
また、悍ましい悪夢に魘されていないだろうか。
怖かっただろうに、強制発情フェロモンを浴びせられても、気丈に理性を保っていた。そんな彼が泣くほどのことをした、アウグスト王子は一生許さない。
そう決心をして、そろそろ離れようとすると、くんっ、と裾を引かれる。弱々しい力。けれど、俺の心はギューーッと掴まれたかのようだった。
アルファに襲われたのだ。同じアルファの俺は、いない方がいい。そう、理性が言う。
(でも、ファルシュカの手は……俺を求めている)
それは、単なる兄貴分を慕う気持ちから、でもいい。
俺はローブを脱ぐと、毛布の上からファルシュカを覆うようにかけた。流石に一緒に寝るなど…………厚かましさを見せてはいけない。そう自制をしたのだ。
「悪夢からも、君を守れるように……」
あわよくば、俺の香りを身につけて。
「ほら、頑張って。番になったら、こんなところじゃなくて……素敵なホテルで一晩中、愛し合おう。一週間、休暇を取ってもいい。気持ちいいこと、したいだろう?」
僕の頭は朦朧としていて、殿下の声が入ってきて通り過ぎるだけになっていた。目を開けていられなくて、ずるずると力が抜けていく。
ああ、そうだ。うさパチ……。ジュースを被った時に、濡れてはいけないと置いてきてしまったんだ。
「さぁ……ね?優しくするよ……」
殿下は、僕がネックガードを外すように、しきりに誘導している。僕の頬や、耳のあたりに残った甘い液体を、チロチロと舐めていた。相当美味しかったのか、執拗に。
その上に手は、僕の腰元に添えられていた。鱗を触られていて、嫌悪感を感じているのに気持ちよくて、身体がヒクヒクして辛い。
もう嫌だ。この身体を見られた上、よく知らない殿下に触れられて感じている現状が、受け入れられなくて、涙を溢した時。
「何を、していらっしゃる」
「――――な、何故……ここにっ?」
「ファルシュカを、返してもらう」
「!」
目の前にいた殿下は、恐怖に凍りついたかのように、固まっていた。目をぎょろぎょろとさせ、大量の汗を吹き出しながら、びくりとも動かない。
すぐにぱさりとローブに包まれた。優しい、涙の出るほどほっとするフェロモンだ。
「るど……さ、ま」
ギリギリ保っていた意識は、ぷつんと途切れていた。
(ルドルクスside)
上半分を脱がされ、美しい鱗に触れられているファルシュカを見た瞬間、視界が血に染まったと思った。
怒りが天元を一瞬で突破し、逆に冷静になったらしい。
周辺に漂うアウグスト王子の強制発情フェロモン。俺の威嚇フェロモンで押し潰すように圧力をかけると、あっという間に消え去った。
俺の威嚇フェロモンを一身に受けたアウグスト王子は、『死』と『アルファとしての敗北』を感じ動けないだろう。
本心では殴り飛ばして星空に打ち上げてやりたいところだったが、それよりもまずファルシュカの保護だ。
心に受けた傷は、一生治せないのだから。
急ぎ屋敷へ帰りファルシュカを預けようと弟の様子を聞くと、なんと弟も王族の蛮行のせいで寝込んでいるらしい。しかも、元凶の王女がまだ居座っている。
待ちたいならいつまででも待てばよろしい。
俺は無視をすることに、一瞬も躊躇いはなかった。
うちにオメガの使用人はいない。全員がベータ。使用人の選定にも時間がかかる。何より、この手から離したくない。
と、色々考えた結果、最も信用出来るのは自分だけ――と言い訳をして、俺がファルシュカの身体を清めることにした。
ぐったりとして意識のないファルシュカが痛ましい。怪我はないようだが…………真っ白でなめらかな肌に、美しく輝く鱗。細くくびれた腰やうっすらと割れた腹の凹み。なだらかな鼠蹊部の続きを見たいという気持ちを抑えて、汚れている上半身だけをとりあえず拭き清める。
丁寧に、優しく。
嫌なアルファの匂いが完全に消えて無くなり、石鹸と天然成分の花の香りだけになるまで。ファルシュカを拭きあげる。
下履きはそのままに、下衣を脱がせ、形の良い脚を目で堪能するより前に素早く目を逸らし、夜間着を探す。
綺麗にさせると、ひとつの作品を仕上げたような達成感だ。侍女たちの気持ちが少し分かった……。
好んで着てくれていた、兎を模した夜間着をなんとか着せると、優しく毛布をかけてやる。心なしか、くふぅと弱い寝息が聞こえた気がした。
また、悍ましい悪夢に魘されていないだろうか。
怖かっただろうに、強制発情フェロモンを浴びせられても、気丈に理性を保っていた。そんな彼が泣くほどのことをした、アウグスト王子は一生許さない。
そう決心をして、そろそろ離れようとすると、くんっ、と裾を引かれる。弱々しい力。けれど、俺の心はギューーッと掴まれたかのようだった。
アルファに襲われたのだ。同じアルファの俺は、いない方がいい。そう、理性が言う。
(でも、ファルシュカの手は……俺を求めている)
それは、単なる兄貴分を慕う気持ちから、でもいい。
俺はローブを脱ぐと、毛布の上からファルシュカを覆うようにかけた。流石に一緒に寝るなど…………厚かましさを見せてはいけない。そう自制をしたのだ。
「悪夢からも、君を守れるように……」
あわよくば、俺の香りを身につけて。
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