【完結】あなたが幸せなら、僕も幸せ……?

カシナシ

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 療養中の僕の部屋にきてくれたルドルクス様は、僕の体調を確認した後、ふっと暗い顔をされた。


「危惧していた――――君が白竜人の因子を持つことを、アウグストのや……殿下のせいで、知られてしまった」


 僕の特異体質――――毒に強く、治癒能力が高い――に気付かれたのか。第一王子殿下に動きがあるらしい。なんでも、僕の情報について探りを入れてきているのだとか。

 それが、ルドルクス様は懸念で懸念で仕方ないらしい。にぎにぎと、拳をつくったり、長いお指を曲げ伸ばしをして、落ち着かない様子だ。


「あいつは……俺と、同い年で。苦労人で、いい奴なんだ。領地がリンドバーグでなければ、きっと側近になっていた。婚約者がいないのもあいつのせいではなく――――」

「ご友人、なのですか?ルド様の」

「ああ……幼馴染と言っていい。今も時折会って話す。彼の元婚約者について、君はどれほど知っている?」

「あ……ええと、伝え聞いた程度ですが……」


 レオンハルト・クリューゲル第一王子殿下の婚約者である公爵令嬢。黙々と王太子妃教育をこなし、模範的で理想的なご令嬢で、レオンハルト殿下もそれはそれは気にかけて大事になさっていたらしい。


 しかし、15歳。デビュタントを終えた公爵令嬢は、突然『思い出したの!』とのたまい、高位令息たちを次々と誘惑するようになった。


 その変貌ぶりは、まさに『別人に乗り移られた』かのようだったと。


 それまで凛としていた公爵令嬢の影はなかった。そして、お互いに思いやり合っていたはずのレオンハルト殿下に対しては『どうせ貴方は私を捨てる』と言い、本人曰く、“コンカツ”を始めたのだとか。


 当然、王子と婚約している令嬢が、そんなことを許されるはずがない。


 レオンハルト殿下は彼女に自宅謹慎……静養を申し渡したが、幼き頃からの従者まで誘惑した時に、決断なさった。


 彼女は、心の病にかかったのだと。


 そうして修道院へ輸送……する途中で、公爵令嬢は駆け落ちし、行方不明となっている。レオンハルト殿下はその際の疲労が身に染み、しばらく婚約者は要らないといい……現在。


「言いたくはないが、ファルシュカ。君は、……選べる立場にある」

「……」

「ひとつは、カイロス殿下と再び婚約する。その場合、王家からは新たな爵位を得て、新しい屋敷に住めると思う。君を冷遇する父親と、弟君とは離れられる……」


 カイロス殿下と、再婚約?

 ぴんと、来なかった。侯爵家ではない、新しい家。お父様も、エリュカも居ない家で、カイロス殿下と、二人で暮らす……?

 僕の反応を見ていたルドルクス様は、あまりに読み取れなかったのか、続けることにしたようだ。


「もうひとつは、アウグスト殿下の妻となる。公爵夫人となれるし、彼自身有能な外交官だ。やったことは許されないと思うが……計画的ではなかったことから、まだ、犯罪者ではない」


 それは、嫌だな。僕がジュースを被ったのは偶然だったし、アウグスト殿下は確かに、軽い気持ちで覗いただけなのだろう。

 フェロモンで攻撃しても、僕は理性を手放さなかった。それに強姦ではなく、頸を噛もうとはしても実際には噛んでいない。未遂に終わったことで、アウグスト殿下は罪には問われなかった。

 でも、ああいうことを突発的にやってしまう人は……嫌だな。僕の思いっきり顰めた顔を見て、ルドルクス様は『そうなるよな』と苦笑した。


「そしてもう一つは、レオンハルト殿下と。正直、彼に欠点は見当たらない。俺は、彼とファルシュカの、相性は良いと思う」


 相性が、良い?

 ルドルクス様の言葉に、勝手に傷つく自分がいる。ルドルクス様がそう言うならそうなんだろう。そう受け止めれば良い。

 なのに、どこかで憮然としてしまう自分がいる。


「あの、本当に、相性が良いと……思って、いらっしゃるの、ですか?」


 単語を噛み噛みしながら問う。 

 言葉通りの意味じゃないことは、口に出してから気付いた。


 僕の頭の中は、『ルド様との相性には、言及しないのですか?』とか、『もしかして、悪いのです?それならそうとはっきり仰ってください……!!』などが飛び交っていた。
 けれど、僕は大人だ。口にしない分別はある。


「謝罪をするために、近々訪問するらしい。………………会う、か?」

「……はい。会います」


 僕の言葉に、ルドルクス様は一瞬瞼を伏せた。

 どうして、そんな顔をするのだろう。会わせると提案したのは、貴方なのに。












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