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本編

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 エリオットは、熱く長い夜を与えてくれた。

 くらくらとする意識の中、走った痛みは多分、初めてだったからだろう。でなければ、この腰の奥から響く痛みとか、違和感だとかを知っているはずだもの。
 見知らぬ男ではなく、幼馴染である、気心の知れたエリオットで初めてを体験できた事が、僕は嬉しかった。










 無情にも、僕は平民として士官することになってしまった。平民出身の文官はごく少数いるものの、大抵は誰かの後ろ盾や推薦を受けて王城にいる。だから、僕のように、何の後ろ盾もない平民がどうなるのかと言うと。

「やめっ……」
「ん?何か聞こえたか?」
「いいえ、何にも~?」

 王子の側近でもある騎士団長令息のクインに、後ろ首を掴まれて固い寝台に押し付けられている。ぺちょぺちょと背中を舐められているその間に、もう一人が僕の下半身をいじくっていた。

 どうしてこうなったのかって、膨大な執務に疲れて仮眠室で一瞬寝ている所を、襲われていた。

「クイン様!できました」
「おう、じゃあ、少し待ってろ」
「はぁい」
「やめて下さい……っ!」

 うつ伏せに押さえつけられたまま、無理やり、挿入される。
 細長い銀の尻尾はピンと立ち上がるが、すぐに掴まれてゾワリと吐き気を誘う。裂けるような痛みと、違和感と、嫌悪感が入れ混じり、唇を噛み締めると血の味がした。

「クイン様、まだですか~?」
「ふっ、はぁ、ああ、待てよ、もう一度だ。こんなすごい身体だと、一度じゃおさまんねぇ」
「ええーっ、ずるいですよぉ」
「お前はこっちでいいだろ?」

 騎士見習いの若い子だ。と言っても少年というよりはもう立派に男で、期待に目をギラギラさせて、僕の頭を掴んだ。

「ほらっ、ちゃんと咥えて」
「はーっ、あ、あ、いい。すごくいい!あのシオンを好きに出来る日が来るなんてな」

 格好の、餌食だった。
 口にも後ろにも、男のモノが入っている。

 ……こうなるのを、僕は予感していた。だって王子の婚約者として登城する時、いつも下卑た視線を浴びていたから。その時は立場があったから、ひと睨みするだけで蹴散らすことが出来たが、今ではこのザマ

「あら?お楽しみだったの、シ、オ、ン?」

 そこに現れたのは、婚約期間三日で婚姻し、王子妃となったアレアリア妃だった。











 アレアリア嬢は、元平民の男爵令嬢。僕の逆で、平民にも関わらず11歳という遅い年齢で魔力覚醒、『光魔法』という、治癒を使える貴重なスキルを発現した。
 それでエッラ男爵の養女となり、貴族令嬢としての礼儀を学んだはずなのだが、僕から見れば、平民そのものの自由奔放な振る舞い。光魔法のスキルだって、他の治癒者と比べて魔力押しの、稚拙な技量。医療について学ぶ意欲もないため、軽くて単純な傷しか治せない。……これは僕が負け惜しみで言っている訳ではなく、学園の成績によって証明されている。


 そんな彼女に対し、僕は度々教育的指導をしてきた。かなり、とっても、オブラートに包んだ表現で、優しく、穏やかマイルドに、だ。


 多数の男子生徒とあらゆる場所で性的なまぐわいをしているため、『お前は獣か学園の風紀を乱さないでください』とか。
 廊下や階段を走ってスカートを翻し、頻繁にぶつかっては同情を誘って接触相手を貶める、もしくはしがみ付いて医務室に持ち込むので、『当たり屋なら外でやれ淑女らしい落ち着きを持って下さい』とか。

 儀式を受けずとも子を孕める女性は、数が少ないということもあり、ちやほやされる傾向にあった。それを差し引いても、彼女は自由すぎた。

 女子生徒や、僕のように猫耳のついている男子生徒は、アレアリア嬢に迷惑をしていると、僕に言ってくる。彼女らの婚約者が、アレアリア嬢に籠絡されてしまって困っている、と。別に僕の味方をしている訳ではなく、王子の婚約者たるもの、あれを制御しろ、ということで。

 けれど、僕がそういった指導をすることは、何故か『嫉妬によるもの』とされてしまった。それで、もう放っておくことにした。

 その結果、アレアリア嬢は増長した。

 僕の体から検出された媚薬は、エッラ男爵領でのみ流通しているやや甘味の薄い、酒に混ぜると全くの無味となる高価なものだった。そして消えた男は、僕の記憶が正しければ、エッラ男爵の営む商会で限定発売している、香水の匂いがしていた。

 これらは確実な証拠では無い。だが、アレアリア嬢か、彼女のご実家が、僕を嵌めた可能性が高いのだ。












 犯されている僕を見て、アレアリア妃は嬉々として近づいてくる。

「クイン、アレアの方に来ないと思ったら、そっち~~?」
「チッ……、そりゃ、もうアレアリア、になっちまっただろ?だから、」
「そう。ふうん。良いんじゃなぁい?だってその人、あたしたち王家のモノなんだし~」

「それはいい!ナイスだぜ!」

 クインはより一層、強く僕の尻に押し込んだ。圧迫感で、苦しくて、うずくまりそうな所を、尻尾を引っ張られて仰反る。顔の横にはまだアレアリア妃がいて、僕は強く睨んだ。

「もちろん、クインだけじゃなくて、他の人たちもね。使いたい人は、みんな使って良いの。あはっ!そうレギアス様にも言っておくから!明日には、いっぱいお仕事増えて大変かもね、シ、オ、ン」
「……っ、ご……」

 口に溢れた臭くて苦いもの。当然吐き出そうとする僕に、無理やり突っ込んでくるものだからうっかり噛んでしまうと、見習い騎士は悲鳴を上げて腰を引いた。

「なっ!なんてやつだ!ぼくの、ぼくのを噛んだ!」
「シオン、駄目だろ?」
「こいつ!」
「おい、殴るな!俺はシオンの見た目は気に入っているんだから。……そうだな、シオン。次にやったら、その白くて綺麗な歯を全部抜いてやる。……次からは、大人しく受け入れるよな?」
「……っ、はい……」

「あははっ!きったなぁあい!あ、そうそうこれ、あたしの課題なんだけどさ、ちょっと多くって。シオン、代わりにやっといて。それを言いにきたの。二日後に要るから」
「……………………はい」

「返事が遅いよ?ねぇ、あんたも大好きな盛ってあげようか?そうしたら、気持ちよくなれるね?」
「っ、結構です!」


 アレアリア妃は意味深にそう囁くと、どさりと書類を置いていった。文官の仕事?なにそれ、だ。
 レギアス殿下の執務も、アレアリア妃のやるべき課題も含められた仕事。文官って何?便利屋?
 机に向かえる時間は夜、皆が寝る時間にしか与えられない。つまり、僕に睡眠時間はほとんど無いのだ。

 抵抗をしても、嘔吐をしても、僕は誰よりも身分が低い。かつて僕と話をすることさえ憚られた男爵令息であっても、僕を自由に使うことが出来る。

 そう聞いた王城の、その中でも選りすぐりのクズ共が、僕を犯しに訪れる。

 執務室は僕とのヤリ部屋に変わり、日増しに人数は増えていく。コトが行われるのは奥の仮眠室で、終わって主部屋に戻れば、待機している男で溢れかえるくらいに。

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