悪役令嬢は、もう推しません

カシナシ

文字の大きさ
35 / 42
本編

35 最終話

しおりを挟む



 結婚式の日。

 ダリアローズには、レオナルドとの結婚式の手配をしていた経験があり、準備は急ピッチで進められた。レオナルドの時は全て『任せた』の一言だったため、ドレスについて、席次についても口と手を出してくるトリスタンに驚きつつも幸せを感じつつ、当日を迎える。


 書面上ではすでに結婚して数ヶ月は経つが、この日を迎えたことで、ようやく新婚の気分となった。


 トリスタンは日に日に甘くなり、今では甘く蕩けたような瞳でダリアローズを見つめている。白銀の髪をきっちりとゆわき、凛とした佇まいは厳しさすら感じるのに、ダリアローズがその腕に触れると、幸せそうに口元を綻ばせた。


「……貴方、幸せそうね?」

「ええ。ようやく貴女を俺のものだと、皆に知らしめることが出来ます」


 背中側の、数百もの参列客をちらりと目配せして、トリスタンは得意気に笑った。この頃はトリスタンの表情の変化も容易に見分けがつくようになった。無表情に見えていた時は人ではないような気もしたが、実は結構可愛らしい所がある。

 ダリアローズはまだ、トリスタンを好きとは言えていない。いつも恥ずかしくて捻くれた言葉になってしまうが、トリスタンには伝わっているだろうか。


「その代わり、貴方も私のものよ。浮気なんて許さないから」

「……ふふ、望むところです。どれだけ愛しているのか、今夜からしっかり教えてさしあげましょう」

「……」


 ツンとしたままのダリアローズの耳が真っ赤に染まるのを、トリスタンは満足げに見つめた。


 その晩、ダリアローズは、トリスタンがいかに中性的な美人であっても歴とした男であることを知ることになるのだが、今はまだ、心からふくふくと湧き上がる幸せを噛み締め、恥じらうように微笑む一人の少女。


 華奢な肩には、あの黄金の丸いカナリアが止まり、動くたびに祝福の羽を散らせ、招待客へも幸せが伝播していく。

 ダリアローズは『幸せを呼ぶ大聖女』と尊ばれ、夫から、民から、生涯溺れるほどの愛を注がれることとなったーーーーらしい。






 本編・終






しおりを挟む
感想 141

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。

五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」 婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。 愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー? それって最高じゃないですか。 ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。 この作品は 「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。 どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

処理中です...