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本編
35 最終話
しおりを挟む結婚式の日。
ダリアローズには、レオナルドとの結婚式の手配をしていた経験があり、準備は急ピッチで進められた。レオナルドの時は全て『任せた』の一言だったため、ドレスについて、席次についても口と手を出してくるトリスタンに驚きつつも幸せを感じつつ、当日を迎える。
書面上ではすでに結婚して数ヶ月は経つが、この日を迎えたことで、ようやく新婚の気分となった。
トリスタンは日に日に甘くなり、今では甘く蕩けたような瞳でダリアローズを見つめている。白銀の髪をきっちりと結き、凛とした佇まいは厳しさすら感じるのに、ダリアローズがその腕に触れると、幸せそうに口元を綻ばせた。
「……貴方、幸せそうね?」
「ええ。ようやく貴女を俺のものだと、皆に知らしめることが出来ます」
背中側の、数百もの参列客をちらりと目配せして、トリスタンは得意気に笑った。この頃はトリスタンの表情の変化も容易に見分けがつくようになった。無表情に見えていた時は人ではないような気もしたが、実は結構可愛らしい所がある。
ダリアローズはまだ、トリスタンを好きとは言えていない。いつも恥ずかしくて捻くれた言葉になってしまうが、トリスタンには伝わっているだろうか。
「その代わり、貴方も私のものよ。浮気なんて許さないから」
「……ふふ、望むところです。どれだけ愛しているのか、今夜からしっかり教えてさしあげましょう」
「……」
ツンとしたままのダリアローズの耳が真っ赤に染まるのを、トリスタンは満足げに見つめた。
その晩、ダリアローズは、トリスタンがいかに中性的な美人であっても歴とした男であることを知ることになるのだが、今はまだ、心からふくふくと湧き上がる幸せを噛み締め、恥じらうように微笑む一人の少女。
華奢な肩には、あの黄金の丸いカナリアが止まり、動くたびに祝福の羽を散らせ、招待客へも幸せが伝播していく。
ダリアローズは『幸せを呼ぶ大聖女』と尊ばれ、夫から、民から、生涯溺れるほどの愛を注がれることとなったーーーーらしい。
本編・終
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