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第二章 二回目の学園生活
21 マルセルク side
しおりを挟むそして悪夢は訪れる。
「お、お、王太子殿下……!」
「どうした、騒がしい」
「あっ、あっ、アンッ……~~!」
「はぁ、はぁ、はぁ」
侍従が血相を変えてやってきた。部屋には、マルセルクと、フィル。それからマルセルクの側近二人もいた。久しぶりの行為に興奮し、朝も夜も構わず交わっていた所だった。
「ど、どどうかこちらに……!」
侍従は混乱しながらも、――こんな享楽に耽っている部屋で話していい事ではないと――マルセルクだけを扉の方に誘導しようとした。
面倒くさそうに起き上がったマルセルクは、雑に素肌の上にガウンを羽織る。
その間にもフィルは他の男二人から上へ下へ注ぎ込まれて恍惚とした顔をしていた。
「……ふっ、エロいな。さすがフィルだ」
「アンっ、も、マルも……っ!」
「後でな。言伝を聞いてからだ」
マルセルクには特殊な性癖があることを、そろそろ認めなければならなかった。
それは複数人で事に及ぶことだ。
他人がフィルを犯しているのを見るのも興奮するし、自分が犯しているのを見られるのにも興奮する。一番は、大勢を相手にしても善がっているフィルの、うっとりとしたどこか幼い顔が、何よりもマルセルクを滾らせた。
リスティアを誰よりも愛している。それは間違いなく、永遠に、だ。
何も身体を重ねるだけが愛ではない。リスティアが発情期で辛い時だけ、抱けば満足なのは、大事にしている崇高な愛だから。例えプラトニックでも、愛はリスティアに捧げている。
しかしマルセルクの凶暴な性欲を満たすのには、フィルと仲間と共に交わる必要があった。
婚姻からフィルが確実にマルセルクの子供を孕み、産むまでの丸三年、我慢していたのだ。
そして男児を得、身体を回復させたフィルを見れば、あの性欲が爆発してしまった。
(この男を誘う下品なフェロモンが、何よりも効く。抱けば抱くほど馴染んでいく気がする)
一晩で何回も、何人をも咥え込む行為で喜べるのは、フィルの才能に他ならない。これは、決して愛する、儚く純粋で綺麗なリスティアに向けることは出来ない、穢れた欲望。
何故なら、対象がリスティアならば誰の目にも触れさせたくないし、肌に触れさせるのも我慢がならない。その点、フィルならいくらでも構わなかった。何なら、秘密裏にフィルを餌にし接待させることで、外交をスムーズにするという計画すらあった。
(フィルも喜ぶ仕事の上、国の利益にもなる。もう少し顔を広げさせてから、な)
リスティアが発情期だと聞いたが、今回は我慢をしてもらおうと思っていた。何故なら、婚姻してから三年もの間、マルセルクはこの狂乱の宴を我慢していたのだ。もう少し堪能させてくれれば、次の発情期には必ず相手をする心づもりだった。
だが、それは二度と叶わない。
「……リスティアが、死んだ……?」
「は、はいっ!い、い、今、現場を保存して調査中ですが……お、恐らく、自害、かと」
すぐさまリスティアの部屋へと走った。
いつもより長く感じる距離を全速力で走れば、薬師団長や魔術師団長も既に駆けつけており、その騒めきの中心には――――
「リスティアッ!!」
妻が、死んでいた。
番にしか分からない、リスティアの甘く、優しく、蕩けるようなフェロモンのうっすら漂う部屋。
予定にはない礼服を身につけ、折目正しく寝台の中心に座り、喉笛を見事なまでに掻き切って。
その真っ白な死に顔は、笑っていた。
まるで、苦から解放されたかのように。
「……なんだ、これは……」
(リスティアが、自ら死を選んだ……?)
違うと思いたいのに、生々しいまでの記憶が、そうさせてくれない。
冷たく硬くなったリスティアの体と、ぬるりとした血の感触が、手に染み付いているようで。
そこを見れば、ただ、真っ黒のインクが付いていた。
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