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再会
しおりを挟む驚愕の事実を知ったリチャードに夫人は「りのさんは小さくていらっしゃいますものねぇ」と言っただけだった。そして、傘の件は「薙刀を昔からやっていらっしゃったようですわよ。あの護身術が無ければ、今頃りのさんはどうなっていたか」その言葉で愕然とした。
『リッチが防戦一方とはね』
『煩いよ。僕だっていきなり傘が武器になって驚いたんだ』
『俺も驚くかな。でも、ご婦人方の防衛術にはもってこいだと思わないかい?』
確かに。日傘などはよく持ち歩くアイテムだ。
『りのさんは、お止めになったほうがよろしいと言っておりましたわ』
からからと楽し気に夫人が笑う。理由はりのから直接聞いた方がいいだろうと言われ、少し待つこととなった。
「奥様、ただいま戻りました」
「おかえりなさい。その様子だと、帰るつもりなのね?」
「はい。どちらにせよ一度戻らなくては。夫の墓前に花を手向けておりませんし」
「いつ頃なの?」
「十二月三十一日の出航です。今ですと裕仁皇太子殿下の欧州訪問後で色々と慌ただしいようですわ」
何を話しているかは、分からない。唯一分かる単語と言えば「ヒロヒト」。どこかで聞き覚えがある。
『おそらく日本帝国皇太子、裕仁親王のことだと思うけど。君の方が詳しいだろうに』
『……あぁ。その返礼で来年エドワード皇太子が日本に行く手はずになっている』
特に隠すことでもない。扉を開けたのは外交官の一人だった。
『再度紹介いたしますわね。こちらがリノ・サガワ。あちらがリチャード・イーストン様。……そして』
『僕の友人、マイルズ・ローリング。イギリス領事館駐在武官です』
『マイルズです』
『佐川りのと申します。大使ご夫妻のご厚意でこちらに滞在しております』
おそらく日本式のお辞儀なのだろう。ぺこりとりのが頭を下げた。
『よろしく』
先日見た時よりも小さく見えるりのの手を取る。……間違いなく、武人の手だ。
『鍛錬は欠かせませんか?』
『えぇ。大尉様も欠かしたことはございませんでしょう? ……きゃぁぁぁ!!』
そのまま手の甲に口づけをしようとして、身体が宙に浮いた。
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皇太子裕仁親王……昭和天皇のこと。皇太子時代に初の欧州訪問を果たす。1921年(大正十年)三月三日から九月三日の六か月に及んだ。最初はイギリスとフランスの二国のみの予定であったが、各国王室や在外公館からの訪問要請が相次ぎ、出航後も調整し続けていたという。六か月で訪問したのは五カ国にも及んだ。
エドワード皇太子……当時のイギリス帝国の皇太子。のちのエドワード八世。「王冠を賭けた恋」が有名。裕仁親王のイギリス訪問を受けて、翌年日本へ返礼として訪問。
因みに、大正十年の十一月付近だと思っていただければ。
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