3 / 12
吟遊詩人、旅する
欲望の果て1
しおりを挟む山賊を狩り終えれば、あとはここを離れるだけだ。首から上だけ近くの集落へ持っていけばいい。残りは魔獣の餌だ。
「さて、これに食らいつく『欲』のある者はいるかな?」
吟遊詩人は独り言ちる。
山賊の持っていた麻袋、首を入れてゆっくりと歩きだす。
二つほど無人になった集落を通り過ぎ、寂れた集落へたどり着いた。
ここは吟遊詩人が通り過ぎた集落から逃げてきた者たちが住まう場所。そして山賊の脅威にさらされていた。
そんな集落に住む者たちへ、吟遊詩人は狩りとった首を差し出した。
分かる者には、何なのか分かったようだ。
集落あげての祭りと化した。
他人の死を喜ぶとは。人間とは強欲なものだとつくづく思う。そして、己たちで狩ればいいものを。
一人の村人が言った。
「山賊は魔獣も狩ってくれたから」
だから何だ? 魔獣を狩ってもらうのはありがたかったから、不便なのを受け入れてでも山賊にいて欲しかったのか?
「これで村さえ襲わなければ……」
なんとも強欲な。吟遊詩人はくつりと笑った。
それは冒険者の仕事であって、山賊の仕事ではない。そして、冒険者を雇えばいいだけのこと。それをこの集落と、領地は怠っただけのことだ。
そういえば、と吟遊詩人は思い出した。
噂の「呪われた」領主とやらの領地だったと。
あの無責任な男ならば、報酬をケチって討伐依頼など出さないだろう。税収だって、代理人がやるものだと思っている男だ。
「いやぁ、吟遊詩人様のおかげで助かりました!」
口々に村人が礼を言う。
「礼で腹は膨れぬ」
吟遊詩人は冷たく突き放した。
吟遊詩人の曲にも歌にも報酬が付いて回る。もちろん、魔獣狩りや、山賊狩りにも報酬はつきものだ。
「だって、山賊たちの首を町のギルドに持っていけば……」
「それまで私に無一文でいろ、と。この集落はそう言うわけだ」
「ここにはそんな金はないよ!」
「私の知ったことではない」
かたん、と吟遊詩人は席をたった。
宿屋の親父が言う。「宿代と食事代はせめてものお礼です」と。
「この先、何度こちらに宿泊なさろうとも、吟遊詩人様とご一緒の方には宿代も食事代もいただきません。それが今、私にできる礼です」
親父だけが割を食っていた。
他の村人は何かをしようとすらしなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる