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彼と彼女の秘密
美冬の事情と桐生の事情
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家に戻った美冬はそのまま宴会に乱入をかけた。
「あれ? 美冬ちゃんお泊りデートじゃなかったの?」
義兄の充が声をかけてきた。
「ととと泊まりデートォ!?」
兄の冬哉が驚いたように声をあげた。
「最初から泊まる予定なんてなかったってば。お姉ちゃんとママが勝手に盛り上がって、そんな話にしたのっ。私はここで叔母さんのお節食べて、美味しいお酒が呑みたいの」
「美冬ちゃん、嬉しいこと言ってくれるわねぇ」
母の妹がにっこり微笑んで隣に座った。
「で、あんたは初詣に行って食いたいものをひたすら食ってきたと」
美冬の話を聞いた、姉の千秋がにっこり微笑んで言った。
「それなり? 冷めたから少し美味しくなかった。お酒も呑めなかったし」
せめて甘酒くらいは飲みたかった。
「四次元胃袋め」
冬哉の台詞に奥さんである静流が笑って、美冬に声をかけてきた。
「とりあえず、食べれるだけ食べて。今度は私たちと初詣に行きましょ?」
「はいっ!」
美味しいものを大切な人達と食べるというのが美冬には嬉しい。
そのあと、近くの神社へ二組の夫婦と一緒に行って、楽しんでいた。
そんなわけで、美冬はホテルの前であった出来事をすこんと忘れてしまっていた。
その頃、桐生は不機嫌なまま実家へ戻った。
「ただ今戻りました」
「桐生さんっ! お帰りなさい。お待ちしておりました」
従妹である曽野 愛の出迎えに、待ってなくていいよという言葉は飲み込んだ。
「お父さんたちは?」
「あちらで、大旦那様たちとご挨拶を……」
使用人の一人に声をかけて、両親の居場所だけ聞いておく。
ひたすら桐生の後ろをついてくる愛に呆れつつ、すたすたと歩いていった。
「ただ今戻りました」
祖父母や両親と共にいたのは、挨拶に来た親戚や会社の重役たちだった。娘や孫娘を連れてきているあたりで、桐生狙いなのがよく分かる。
「あら、可愛い恋人さんとお出かけしていたようですけど?」
母親がちくりと言ってきた。
「えぇ。出かけてましたよ? 明日帰ってくるとお話していたと思うんですけどね」
その言葉に、その場にいた女性陣が色めきだった。
「ご一緒に連れて来るようにと武藤に申し付けていたはずですけどね」
「お母さん。彼女はそこまで礼儀知らずではありませんよ。初詣ですらやっと取り付けた約束だったんですが」
「あらあら。悪いことしたかしら?」
悪いと思っていないくせに、という言葉は飲み込んだ。
この会話を聞いて、愛は一人喜んでいた。伯母の覚えがめでたいのは、愛一人だ。このままいけば、桐生の妻の座は愛に来る。
「わしも見てみたかったが」
厳つい顔のまま、祖父が口を挟んできた。
「来ませんね。俺が安曇の人間だということも一切話していませんし、こんな香水臭いところに長くいれるような子じゃありませんから」
今頃もっと癒されていたはずなのに。あのころころと変わる表情と、丁度いい抱き心地。全てが桐生の理想である。しかも気配りが上手で、礼儀作法もそれなりに出来る子だ。
「ふむ。報告書に書いてあるとおりだな」
「お祖父さん、いつの間にそんなものを?」
「おつき合いしている人間が、安曇家に相応しいかどうかを見極めねばならぬからな」
言わんとしていることは、分かる。言わせてもらえれば、ここにいるどの女性よりも、相応しいと思うのは間違いだろうか。
「この先も本気で考えておるなら、一度連れて来い。本気でなければ別れろ」
ふらふらしているのは、もう終わりだと言わんばかりの言葉だった。
「あれ? 美冬ちゃんお泊りデートじゃなかったの?」
義兄の充が声をかけてきた。
「ととと泊まりデートォ!?」
兄の冬哉が驚いたように声をあげた。
「最初から泊まる予定なんてなかったってば。お姉ちゃんとママが勝手に盛り上がって、そんな話にしたのっ。私はここで叔母さんのお節食べて、美味しいお酒が呑みたいの」
「美冬ちゃん、嬉しいこと言ってくれるわねぇ」
母の妹がにっこり微笑んで隣に座った。
「で、あんたは初詣に行って食いたいものをひたすら食ってきたと」
美冬の話を聞いた、姉の千秋がにっこり微笑んで言った。
「それなり? 冷めたから少し美味しくなかった。お酒も呑めなかったし」
せめて甘酒くらいは飲みたかった。
「四次元胃袋め」
冬哉の台詞に奥さんである静流が笑って、美冬に声をかけてきた。
「とりあえず、食べれるだけ食べて。今度は私たちと初詣に行きましょ?」
「はいっ!」
美味しいものを大切な人達と食べるというのが美冬には嬉しい。
そのあと、近くの神社へ二組の夫婦と一緒に行って、楽しんでいた。
そんなわけで、美冬はホテルの前であった出来事をすこんと忘れてしまっていた。
その頃、桐生は不機嫌なまま実家へ戻った。
「ただ今戻りました」
「桐生さんっ! お帰りなさい。お待ちしておりました」
従妹である曽野 愛の出迎えに、待ってなくていいよという言葉は飲み込んだ。
「お父さんたちは?」
「あちらで、大旦那様たちとご挨拶を……」
使用人の一人に声をかけて、両親の居場所だけ聞いておく。
ひたすら桐生の後ろをついてくる愛に呆れつつ、すたすたと歩いていった。
「ただ今戻りました」
祖父母や両親と共にいたのは、挨拶に来た親戚や会社の重役たちだった。娘や孫娘を連れてきているあたりで、桐生狙いなのがよく分かる。
「あら、可愛い恋人さんとお出かけしていたようですけど?」
母親がちくりと言ってきた。
「えぇ。出かけてましたよ? 明日帰ってくるとお話していたと思うんですけどね」
その言葉に、その場にいた女性陣が色めきだった。
「ご一緒に連れて来るようにと武藤に申し付けていたはずですけどね」
「お母さん。彼女はそこまで礼儀知らずではありませんよ。初詣ですらやっと取り付けた約束だったんですが」
「あらあら。悪いことしたかしら?」
悪いと思っていないくせに、という言葉は飲み込んだ。
この会話を聞いて、愛は一人喜んでいた。伯母の覚えがめでたいのは、愛一人だ。このままいけば、桐生の妻の座は愛に来る。
「わしも見てみたかったが」
厳つい顔のまま、祖父が口を挟んできた。
「来ませんね。俺が安曇の人間だということも一切話していませんし、こんな香水臭いところに長くいれるような子じゃありませんから」
今頃もっと癒されていたはずなのに。あのころころと変わる表情と、丁度いい抱き心地。全てが桐生の理想である。しかも気配りが上手で、礼儀作法もそれなりに出来る子だ。
「ふむ。報告書に書いてあるとおりだな」
「お祖父さん、いつの間にそんなものを?」
「おつき合いしている人間が、安曇家に相応しいかどうかを見極めねばならぬからな」
言わんとしていることは、分かる。言わせてもらえれば、ここにいるどの女性よりも、相応しいと思うのは間違いだろうか。
「この先も本気で考えておるなら、一度連れて来い。本気でなければ別れろ」
ふらふらしているのは、もう終わりだと言わんばかりの言葉だった。
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