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彼と彼女の秘密
休憩中の爆弾発言
しおりを挟む客への挨拶回りも終わり、少しばかり休憩となったころ。
美冬たち三人で少しばかり話をしようということになった。
「そういや、今回珍しく都築の奥様にお連れ様がいらしたな」
「安曇家のご長男。家柄・学歴等々ハイスペックね」
どんな客人が来ていたかなど話をしない、千秋と冬哉が今回ばかりは珍しく話し出した。
「へぇぇぇ」
「美冬は興味ないのね」
「美形じゃおなか膨れないし。酒の肴になるだろうけど、記憶するほどじゃないし」
それに美形は桐生で間に合っている。
「美冬らしいな」
そんなことを言いつつ、冬哉が美冬の頭を撫でてきた。
「お兄ちゃんはすぐ子ども扱いする」
「いや、安心してるだけ」
意味の分からない美冬はむっとするしかない。確かに周囲に「お子ちゃま」扱いされやすい美冬だが、ある程度周囲の空気を読むことは出来ている……はずだ。
課長以上の娘や孫がいる世代に、娘同然、孫同然に可愛がられていようとも。
「美冬!!」
どうしてここで、桐生(?)の声が聞こえてきたのか、全く分からない。
「美冬。あの方、知り合い?」
千秋が驚愕した顔で訊ねてきた。
「会社の先輩の同級生で、一応付き合っている人」
「お前が一番でかい厄介ごと釣りあげるの、忘れてた!」
美冬の言葉に反応した冬哉が叫んだ。厄介ごととは、これ如何に。
「知らないようだから言っておくけど、あの方がさっき話していた安曇家のご長男だからね」
「……はぃ?」
美冬の口から出たのは、そんな間抜けた言葉だけだったという。
うん、確かに運転手らしき人いたね。そして坊ちゃまって言われていたね。普段のスーツもオーダーメイドっぽいいいやつだと思っていたけど、今日のスーツはいつも以上にいいやつだわ。
そんなことを思いつつ、美冬は遠い目をした。
「先ほど、祖母たちの席でお会いしましたね。安曇 桐生と申します。美冬さんと将来を視野に入れお付き合いさせていただいております」
いつの間に将来まで!? 美冬は開いた口が塞がらない。
「特大爆弾キタ―――!!」
冬哉が叫んだ。
余談だが。
冬哉の「特大爆弾」発言で、何かを察したらしい喫煙所の集団は「誰が仲人を務めるか」という内容で大いに盛り上がっていたという。
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