達観した紫の上と、年上旦那様

神月 一乃

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天高く陰謀巡る秋

嵐の前の静けさです

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 そんなことがあってから。

 私の朝は今まで以上に早くなりました。理由は一つ。旦那様の部屋で寝るようになったからです。
 何故かと申しますと……「致さなくても一緒に寝たい」と旦那様がのたまいやがりまして。拒否ろうとしたら「じゃあ、私が麻帆佳の部屋に行く」と。
 いや、あのね。私の部屋のベッド、シングルですか。旦那様の部屋のベッドのように広くありませんが。
 そう反論したものの旦那様はその斜め上をいく発想をしやがりましたよ。
「じゃあ、麻帆佳をぎゅーっと抱きしめて眠るから。それでも狭かったら、私の上で寝ればいい」
 そういう問題じゃなーーい。懐かしのちゃぶ台返しがしたくなるようなことを言いやがり、そそくさと私が部屋で寝ようとしたら本気で実行しかけたために、妥協しました。
 ……えぇ。妥協しましたとも。致す回数を減らしてもらいました。勉強とバイトに支障をきたすとか一応、難癖つけさせていただきまして、不服そうにしておりました。
「じゃあ、麻帆佳が次の日バイトじゃない日で、生理来ていない日、そして私が出張じゃない日は付き合ってね」
 生理の日までいつの間にか把握してるしーー! 避妊しないしーー! と怒ってもどこ吹く風ですよ。……まったく。
 翌日が土日でバイトない日は、起き上がれないくらいですが、それ以外は一応眠いながら起きれます。
 そのまま着替えすると旦那様がにやにや見ており、恥ずかしいので自分の部屋で着替えです。
 そして朝食作りが始まるわけですよ。時間食うったらありゃしない。

 千夏と花音に言わせると「惚気のろけ」になるそうなので、あまり愚痴れません。

 それはともかく、今日の朝食と昼食はロールサンドイッチです。賞味期限ぎりぎりの食パンを大量に購入してきたので、作りやすいものにしようかと。
 鳥ハムOK、レタスOK、バターOK、他もよしっと。デザートもこれで作れるので一石二鳥。いや、旦那様が食べない分も秘書の皆様に食していただけますので、一石三鳥ですね。言うと不機嫌になるので、言えませんが。
 パンの耳は帰ってきたら揚げて砂糖をまぶしちゃいましょう。手軽なおやつです。

「おはよう、麻帆佳」
「おはようございます。旦那様」
 最近は起きて自分でコーヒーを淹れるようになりました。コーヒーの濃さとかって好みありますもんね。ちなみに私は緑茶派です。
「……やけに多くない?」
 量をみた旦那様が呟きます。なので、秘書の方~というのは隠して、理由を伝えますと苦笑しております。
「高部あたりが喜びそうだな」
 お子さんのお弁当にもいいですからね。

 最近では、高部さんも克人さん――正確には千夏と克人さんのお母さんですけどね。料理のことを聞きたいんだそうです――とメル友になったとか。なので、私からこういったレシピが来るのも大歓迎なんだそうです。中学生から幼稚園児までのパパ、半端ないな! と親友たちと話しております。

 と、それはさておき、私の分数本を残して、全部旦那様が持って行ってくれました。今日はバイトの日なので、いつものごとく旦那様がバイト先でご飯食べるんでしょうね。
 なんだかんだ言って、夏くらいの平和な日が三週間ほど続いております。


「あ、お姉ちゃんが言ってたけど、すっごく煩いのが周りにいるって」
 昼時、スマホのメールを見た花音がそんなことを言い出しました。
「兄貴からも来たよ。そろそろ動きそうだから、麻帆佳に注意促しとけって」
 千夏まで。一体次は何が来るんでしょうか。
「……次は隠し子かな」
「をい」
 ぼそりと呟いた私に、二人から突っ込みが入りました。
「ほかに何があると」
「そのあたり旦那に聞いとけ。兄貴の話だとあんたの会ったことのない親族がわらわら出てくるみたいだし」
 ほうほう。そのあたりも旦那様に聞いておきますか。前回のようになりたくなければ、洗いざらい話して貰うようお願い・・・しましょうか。
「麻帆佳、それお願い・・・|やない、脅し・・や」
 花音さん、それは何のネタですか?


 そういえば、私たちの話を聞いたクラスメイトが「麻帆佳に彼氏できたの!?」と興味津々で聞いてきましたね。「旦那様」と答えたにも関わらず、「旦那呼びするくらいラブラブなんだねーー」と。だから旦那様だといってるでしょうが、という突っ込みを入れる気力もないくらいに、話が盛り上がっておりました。
 ……まぁ、いいですけどね。


 もちろん、これが嵐の前の静けさというやつなんだというのは、身をもって思い知らされましたとも。
 愛人騒動なんてまだ可愛いと思える大騒動が待っているとは、思いもよりませんでした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最近は美味しい麻帆佳の晩御飯を食べるために、早めに帰ってくる龍雅さん。
夕方までに出来なかった仕事で持ち帰れるものは持ち帰って仕事をするようになりましたし、他人に割り振れるものは割り振るようになりました。

その影響を誰よりも受けたのは藤城さんです。「仕事人間(注:以前の龍雅さん)が消えた!」と大慌て。
今までと違い、秘書後進を育てるのも仕事に。
藤城「俺の仕事増やすなーー!!(怒り)」
明日「今までのツケよ。仕事できないからって放置していたのが悪い」
藤城「俺のせいなの!?」
明日「君と高部君ね。あの子たち(藤城たちが「使えない」と判断していた秘書のこと)は絶対に私に聞いてこないもの」
藤城「なんで!?」
明日「今まで厳しく接していたからじゃないかしら」
藤城「高部に聞きに行かないって納得いかん!」
明日「だって、龍雅君が出張以外は、高部君がつきっきりでしょ。それとも交代して、龍雅君の砂糖はいた上に甘すぎる惚気聞きまくる?」
藤城「……遠慮します」
……ちなみに藤城さんは恋人募集中の独身ですww
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