53 / 120
天高く陰謀巡る秋
不穏な空気~園田side~
しおりを挟む
この話では珍しく他者視点の話です。
入れるかどうかを迷ったのですが、これが無いと話が進まない気がしたので。
龍雅視点ですらかけない話なので、こちらでUPします。
とりあえず暗いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
――人里離れた某所にて
「……失敗しおったか。使えぬやつめ」
忌々し気に老齢の男が呟いた。何のために色々と策を与えたか分かったものではない。
重役娘を暴走させたのも、この男である。性病持ちという一点だけが予想外だったといってもいい。
それなのに、である。離婚もせずに元さやに納まっているという。どこで計算を間違えたのか、と問いただしたくなってきた。
「大旦那様」
「この役立たずめが!」
報告に来た男、園田を老爺は怒鳴りつけた。
「最初からわたくしめは反対したはずです」
「貴様は職を失いたのか!?」
「失職は覚悟の上でございます。娘とも話し合った結果でございます」
「貴様の親族に至るまで、儂は許さぬぞ!」
「大旦那様、あなたは変わられた。今となってはただの老害にございます」
「儂が貴様を拾ってやったのに、なんだその言い分は!」
「はい。わたくしは大旦那様に拾っていただいて救われた命にございます。ですから、道を誤った時には、この命に代えてもお止めいたします」
周囲が怒りをぶつける中、園田は一歩も引かなかった。
「龍雅様をあのようになさったのは大旦那様でございましょう! それをお救いした方にかようなことを許せるわけがございません」
「出来損ないは、出来損ないなりに役立ってもらうだけのことではありませんか」
老爺近くに控える男が嘲笑うように言う。
「龍雅様は優秀にございます。我々とは違う人脈をお持ちで……」
「違う人脈? 厳原の役に立っておりますか? 役に立たぬ人脈など、無いに等しいのですよ」
その言葉に、園田以外の者たちが笑って同意した。
少なくとも……と園田は思う。明日 伽耶という人物を厳原に留め置いているのは、龍雅の功績である。厳原も太刀打ちできない家柄の出だ。明日はいつでも厳原を見限れる。それをしないのは、龍雅とその妻である麻帆佳がいるからである。
……麻帆佳と明日が「知人」であったのは偶然だ。しかも明日が大事にしている娘だという。それを知ったとき、園田は腰を抜かしかけた。
そして「あの店」で三年近くバイトを続けられるというのは、珍しい。特に女性は色目を使い、玉の輿を狙う。そんなことをしようものなら、即座にバイトはクビになる。
素直でいい子。いい子過ぎるのは、親族のせい。それが明日の評価だ。
それをこの老爺の前で言っていいものか、園田は悩んでしまう。おそらく老爺は「明日」と言っても分からないだろう。明日の旧姓を言わない限り。
「わたくしめはこれ以上の協力は出来ません。それを伝えに参りました」
その瞬間、園田は男どもに押さえつけられ、地下牢へと連れていかれた。
その後しばらく園田は龍雅の前に姿を現さなかかった。
入れるかどうかを迷ったのですが、これが無いと話が進まない気がしたので。
龍雅視点ですらかけない話なので、こちらでUPします。
とりあえず暗いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
――人里離れた某所にて
「……失敗しおったか。使えぬやつめ」
忌々し気に老齢の男が呟いた。何のために色々と策を与えたか分かったものではない。
重役娘を暴走させたのも、この男である。性病持ちという一点だけが予想外だったといってもいい。
それなのに、である。離婚もせずに元さやに納まっているという。どこで計算を間違えたのか、と問いただしたくなってきた。
「大旦那様」
「この役立たずめが!」
報告に来た男、園田を老爺は怒鳴りつけた。
「最初からわたくしめは反対したはずです」
「貴様は職を失いたのか!?」
「失職は覚悟の上でございます。娘とも話し合った結果でございます」
「貴様の親族に至るまで、儂は許さぬぞ!」
「大旦那様、あなたは変わられた。今となってはただの老害にございます」
「儂が貴様を拾ってやったのに、なんだその言い分は!」
「はい。わたくしは大旦那様に拾っていただいて救われた命にございます。ですから、道を誤った時には、この命に代えてもお止めいたします」
周囲が怒りをぶつける中、園田は一歩も引かなかった。
「龍雅様をあのようになさったのは大旦那様でございましょう! それをお救いした方にかようなことを許せるわけがございません」
「出来損ないは、出来損ないなりに役立ってもらうだけのことではありませんか」
老爺近くに控える男が嘲笑うように言う。
「龍雅様は優秀にございます。我々とは違う人脈をお持ちで……」
「違う人脈? 厳原の役に立っておりますか? 役に立たぬ人脈など、無いに等しいのですよ」
その言葉に、園田以外の者たちが笑って同意した。
少なくとも……と園田は思う。明日 伽耶という人物を厳原に留め置いているのは、龍雅の功績である。厳原も太刀打ちできない家柄の出だ。明日はいつでも厳原を見限れる。それをしないのは、龍雅とその妻である麻帆佳がいるからである。
……麻帆佳と明日が「知人」であったのは偶然だ。しかも明日が大事にしている娘だという。それを知ったとき、園田は腰を抜かしかけた。
そして「あの店」で三年近くバイトを続けられるというのは、珍しい。特に女性は色目を使い、玉の輿を狙う。そんなことをしようものなら、即座にバイトはクビになる。
素直でいい子。いい子過ぎるのは、親族のせい。それが明日の評価だ。
それをこの老爺の前で言っていいものか、園田は悩んでしまう。おそらく老爺は「明日」と言っても分からないだろう。明日の旧姓を言わない限り。
「わたくしめはこれ以上の協力は出来ません。それを伝えに参りました」
その瞬間、園田は男どもに押さえつけられ、地下牢へと連れていかれた。
その後しばらく園田は龍雅の前に姿を現さなかかった。
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる