達観した紫の上と、年上旦那様

神月 一乃

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天高く陰謀巡る秋

不穏な空気~園田side~

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 この話では珍しく他者視点の話です。
 入れるかどうかを迷ったのですが、これが無いと話が進まない気がしたので。
 龍雅視点ですらかけない話なので、こちらでUPします。
 とりあえず暗いです。

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 ――人里離れた某所にて
「……失敗しおったか。使えぬやつめ」
 忌々し気に老齢の男が呟いた。何のために色々と策を与えたか分かったものではない。
 重役娘を暴走させたのも、この男である。性病持ちという一点だけが予想外だったといってもいい。
 それなのに、である。離婚もせずに元さやに納まっているという。どこで計算を間違えたのか、と問いただしたくなってきた。
「大旦那様」
「この役立たずめが!」
 報告に来た男、園田を老爺は怒鳴りつけた。
「最初からわたくしめは反対したはずです」
「貴様は職を失いたのか!?」
「失職は覚悟の上でございます。娘とも話し合った結果でございます」
「貴様の親族に至るまで、儂は許さぬぞ!」
「大旦那様、あなたは変わられた。今となってはただの老害にございます」
「儂が貴様を拾ってやったのに、なんだその言い分は!」
「はい。わたくしは大旦那様に拾っていただいて救われた命にございます。ですから、道を誤った時には、この命に代えてもお止めいたします」
 周囲が怒りをぶつける中、園田は一歩も引かなかった。
「龍雅様をあのようになさったのは大旦那様でございましょう! それをお救いした方にかようなことを許せるわけがございません」
「出来損ないは、出来損ないなりに役立ってもらうだけのことではありませんか」
 老爺近くに控える男が嘲笑あざわらうように言う。
「龍雅様は優秀にございます。我々とは違う人脈をお持ちで……」
「違う人脈? 厳原の役に立っておりますか? 役に立たぬ人脈など、無いに等しいのですよ」
 その言葉に、園田以外の者たちが笑って同意した。

 少なくとも……と園田は思う。明日 伽耶かやという人物を厳原に留め置いているのは、龍雅の功績である。厳原も太刀打ちできない家柄の出だ。明日はいつでも厳原を見限れる。それをしないのは、龍雅とその妻である麻帆佳がいるからである。
 ……麻帆佳と明日が「知人」であったのは偶然だ。しかも明日が大事にしている娘だという。それを知ったとき、園田は腰を抜かしかけた。
そして「あの店」で三年近くバイトを続けられるというのは、珍しい。特に女性は色目を使い、玉の輿を狙う。そんなことをしようものなら、即座にバイトはクビになる。

 素直でいい子。いい子過ぎるのは、親族のせい。それが明日の評価だ。

 それをこの老爺の前で言っていいものか、園田は悩んでしまう。おそらく老爺は「明日」と言っても分からないだろう。明日の旧姓を言わない限り。
「わたくしめはこれ以上の協力は出来ません。それを伝えに参りました」

 その瞬間、園田は男どもに押さえつけられ、地下牢へと連れていかれた。


 その後しばらく園田は龍雅の前に姿を現さなかかった。
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