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天高く陰謀巡る秋
大事な話し合いです
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……毎度思うのですがね。私、自分の足がありますよ。
そ・れ・な・の・に! 毎回旦那様に抱きかかえられての移動とは、これいかに? というやつです。
「私が麻帆佳に触れていたいから」
あっさりと返され、脱力したのは言うまでもなく。
とりあえずパンの耳でおやつを作りましょう。揚げて砂糖まぶすだけじゃつまらなくなっちゃったので。とりあえず、ケーキもどきを作っちゃえ! ということでキッチンで作業です。
オーブンで焼いている間に、旦那様を尋問です。
「旦那様、聞きたいことがあるのですが」
うふふふ。お互い話し合わないと分からないことが多いんでしたよね? 洗いざらい話して貰いますよ。
「……ということを千夏から聞いたのですが」
学校で千夏や花音から聞いた話をぶつけます。あら、旦那様。苦虫を嚙み潰したようなお顔になってますよ?
「会ったことのない親族のほうが多いだろうからね」
そうでしょうねぇ。でもね、それで済ませて欲しくないわけですよ。
「例えば、ですよ。私がどこからか色々と吹き込まれて、またあんな状況になっていいのであれば、黙ってていただいていいですよ。そのときは風吹さんも出てくると思ってくださいね」
「風吹?」
あ、旦那様は風吹さんをご存じありませんでしたか。
「とっても漢前な素敵な方です」
私も千夏も風吹さんを見るとうっとりしちゃいます。妹の花音はそれを生暖かい目で見るという、不思議な光景がよく繰り広げられております。
そうなんですよ。風吹さんは気が付けば周囲から「お姉さま」と呼ばれるほどの漢前。克人さんは最近女性に、恨みつらみを言われるようになったとか。
「……おとこ、まえ」
何ショック受けてるんですか。克人さんの恋人なのに。
「克人君ってそういう趣味?」
「え゛?」
どんな趣味ですか!? とりあえずこのままだと旦那様数発殴られますよ!?
「そういう事に差別意識はないけど、ちょっとびっくりした。うん」
「?」
意味が分からないのですが。
それは置いといて。
克人さんと私が出来てるかもしれないという、あり得ない情報を流している人に思い当たるのですか? と単刀直入に聞きましたとも。
「思い当たる人間は何人かいる。ただ、そいつがどうやって克人君の存在を知ったのかが気になる」
「私をバイト先やこのマンションまで送ってくれるからじゃないんですか?」
それにあのバイト先は克人さんの紹介ですし。
「……克人君の紹介なの初耳なんだけど」
「あそこのバイトって紹介制らしいんです。克人さんが就活するという時と、私の高校入学が重なりまして」
それがご縁で紹介してもらいました。中学在学中は新聞配達のバイトをしており、高校入ったらそれにプラスして……と考えていたのですよ。それを見かねた克人さんが紹介してくれて、マスターと奥さんに気に入って貰えてバイトすることになったのです。
おかげで私の食生活が上向きになり、新聞配達のバイトも辞めることが出来たので、体調を崩すこともなくなりました。
「……なるほど、ね。そのあたりも軽く知ってるやつが情報源という事かな。ということは、叔父もその中に含めていいのかもしれないな」
「旦那様?」
難しい顔してますよ。……って仕方ないですね。難しい話ですし。身内を疑うわけですし。
「克人君は誰の紹介?」
んなこと知りませんよ。本人に聞いてください。
そのあと、旦那様と色々とお話をしました。
「あの、ですね。旦那様」
とりあえず、怒っていいですか?
「旦那様と私の結婚、厳原家の方々から見たら面白くないに決まってますよね? 結婚の時あんたの使いはなんて言いました? 『厳原家はそちらからお嬢さんを出してくだされば、資金援助します』と『厳原ではそれで意見がまとまっております』だったはずですよ。従姉に行くかと思っていた結婚話が私に降ってきたわけですから、そのあたりは覚えてますとも。えぇ。金で買われたと思った言葉ですし。それを聞く限り、私としちゃ『愛人いても黙っていろ』とかそう取れたわけですとも。
それはいいとして。話聞く限り、この結婚反対されまくりですよね? しかも親族の殆どから。それで『総意』みたいな言い方しないでくれますかね。挙句の果てに、一番偉い人には全く話が通ってないとか、一体全体何を考えてるんですか。
そんな状態なら、その偉い人の口車に乗った女性が愛人騒動起こしてもおかしくないんですよ。というか、起こるべくして起きた出来事じゃないですか。
まだ言いたいことはありますが、とりあえずはこれくらいで納めます」
とりあえずほとんど息継ぎもしないで言ったら疲れました。
「……うん。ごめん。ただ、私のことは『出来損ない』って言ってたから、大丈夫かなって……」
大丈夫じゃないから、こういう事が起きるんですよね!?
「でも、あの人の許可を取ってたら、麻帆佳と一緒にいれなかった」
そんな辛そうな顔で言わないでください。私も水速の家から出して貰えて助かってるんです。
辛気臭い空気の中、オーブンから音が。どうやら出来上がったようです。
「とりあえず食べながら、どうするか考えましょう!」
それから数日。
毎日話し合って、これからどう動くかを旦那様と相談しました。
そ・れ・な・の・に! 毎回旦那様に抱きかかえられての移動とは、これいかに? というやつです。
「私が麻帆佳に触れていたいから」
あっさりと返され、脱力したのは言うまでもなく。
とりあえずパンの耳でおやつを作りましょう。揚げて砂糖まぶすだけじゃつまらなくなっちゃったので。とりあえず、ケーキもどきを作っちゃえ! ということでキッチンで作業です。
オーブンで焼いている間に、旦那様を尋問です。
「旦那様、聞きたいことがあるのですが」
うふふふ。お互い話し合わないと分からないことが多いんでしたよね? 洗いざらい話して貰いますよ。
「……ということを千夏から聞いたのですが」
学校で千夏や花音から聞いた話をぶつけます。あら、旦那様。苦虫を嚙み潰したようなお顔になってますよ?
「会ったことのない親族のほうが多いだろうからね」
そうでしょうねぇ。でもね、それで済ませて欲しくないわけですよ。
「例えば、ですよ。私がどこからか色々と吹き込まれて、またあんな状況になっていいのであれば、黙ってていただいていいですよ。そのときは風吹さんも出てくると思ってくださいね」
「風吹?」
あ、旦那様は風吹さんをご存じありませんでしたか。
「とっても漢前な素敵な方です」
私も千夏も風吹さんを見るとうっとりしちゃいます。妹の花音はそれを生暖かい目で見るという、不思議な光景がよく繰り広げられております。
そうなんですよ。風吹さんは気が付けば周囲から「お姉さま」と呼ばれるほどの漢前。克人さんは最近女性に、恨みつらみを言われるようになったとか。
「……おとこ、まえ」
何ショック受けてるんですか。克人さんの恋人なのに。
「克人君ってそういう趣味?」
「え゛?」
どんな趣味ですか!? とりあえずこのままだと旦那様数発殴られますよ!?
「そういう事に差別意識はないけど、ちょっとびっくりした。うん」
「?」
意味が分からないのですが。
それは置いといて。
克人さんと私が出来てるかもしれないという、あり得ない情報を流している人に思い当たるのですか? と単刀直入に聞きましたとも。
「思い当たる人間は何人かいる。ただ、そいつがどうやって克人君の存在を知ったのかが気になる」
「私をバイト先やこのマンションまで送ってくれるからじゃないんですか?」
それにあのバイト先は克人さんの紹介ですし。
「……克人君の紹介なの初耳なんだけど」
「あそこのバイトって紹介制らしいんです。克人さんが就活するという時と、私の高校入学が重なりまして」
それがご縁で紹介してもらいました。中学在学中は新聞配達のバイトをしており、高校入ったらそれにプラスして……と考えていたのですよ。それを見かねた克人さんが紹介してくれて、マスターと奥さんに気に入って貰えてバイトすることになったのです。
おかげで私の食生活が上向きになり、新聞配達のバイトも辞めることが出来たので、体調を崩すこともなくなりました。
「……なるほど、ね。そのあたりも軽く知ってるやつが情報源という事かな。ということは、叔父もその中に含めていいのかもしれないな」
「旦那様?」
難しい顔してますよ。……って仕方ないですね。難しい話ですし。身内を疑うわけですし。
「克人君は誰の紹介?」
んなこと知りませんよ。本人に聞いてください。
そのあと、旦那様と色々とお話をしました。
「あの、ですね。旦那様」
とりあえず、怒っていいですか?
「旦那様と私の結婚、厳原家の方々から見たら面白くないに決まってますよね? 結婚の時あんたの使いはなんて言いました? 『厳原家はそちらからお嬢さんを出してくだされば、資金援助します』と『厳原ではそれで意見がまとまっております』だったはずですよ。従姉に行くかと思っていた結婚話が私に降ってきたわけですから、そのあたりは覚えてますとも。えぇ。金で買われたと思った言葉ですし。それを聞く限り、私としちゃ『愛人いても黙っていろ』とかそう取れたわけですとも。
それはいいとして。話聞く限り、この結婚反対されまくりですよね? しかも親族の殆どから。それで『総意』みたいな言い方しないでくれますかね。挙句の果てに、一番偉い人には全く話が通ってないとか、一体全体何を考えてるんですか。
そんな状態なら、その偉い人の口車に乗った女性が愛人騒動起こしてもおかしくないんですよ。というか、起こるべくして起きた出来事じゃないですか。
まだ言いたいことはありますが、とりあえずはこれくらいで納めます」
とりあえずほとんど息継ぎもしないで言ったら疲れました。
「……うん。ごめん。ただ、私のことは『出来損ない』って言ってたから、大丈夫かなって……」
大丈夫じゃないから、こういう事が起きるんですよね!?
「でも、あの人の許可を取ってたら、麻帆佳と一緒にいれなかった」
そんな辛そうな顔で言わないでください。私も水速の家から出して貰えて助かってるんです。
辛気臭い空気の中、オーブンから音が。どうやら出来上がったようです。
「とりあえず食べながら、どうするか考えましょう!」
それから数日。
毎日話し合って、これからどう動くかを旦那様と相談しました。
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