ビジネス・オブ・異世界

松村レイ

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第一章 ラウス湖ビジネス編

第二話 ラウス湖の主 2

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 空中でモリを刺したオオメガトロと共にミリは湖に落下した。

 水柱が数メートル上がり、水の色は赤色に染まる。

「ミリー、大丈か?返事しろ。」

 最初に水面に上がってきたのは、モリを刺されたオオメガトロ。

 次にゆっくりとミリが上がってきた。

 急いでミリをボートの上に引きづり込んだ。

 「おい、起きろ、釣れたぞ。これで俺たち億万長者だ!」

 ハッと目を勢いよく開き、ミリが声に気付いて飛び起きた。

 「億万長者、億万長者!!」

 水面に視線を移し、ミリは自分の勝利を確信した。

 「よし、それじゃあ、おヒレにロープを絞ってボートで陸地まで運ぼう」

 再びミリに頼んで、オオメガトロの巨大な尾にロープをくくりつけさせた。

「今日はご馳走が食べられるぞ、ミリ」

 気づくとミリは再度眠りについていた。

 空を見上げると、すでに夕日が落ちかけて、ラウス湖の水面にオレンジ色の夕焼けが映し出されていた。

 陸地に着き、ミリを起こして、どうにか船をオオメガトロと共に湖の淵に固定した。

「今日はもう遅いからここでテントを張ろう」

「これ食べようよ、スズキ」

「ダメだ、売り物なんだから。食ったら報酬が減っちまう」

「少しなら大丈夫だよ、どうせ解体しないと運べないし」

 今回の俺は防御力がゼロに等しかった。

 ミリの言葉に脳が喜んでしまったらしい。

 この世界に来て早一年。

 包丁捌きはなかなかのものになっていた。

 オオメガトロの外皮は柔らかったが、巨大な体に解体には時間がかかった。

 この柔軟さがあの素早い動きを実現できるのか。

 身は鮮やかな赤身。

 一通り解体が終わった後、オオメガトロの一部を刺身にした。

「脂が乗ったいい刺身ができたぞ、ミリ」

 目の中に光が入ったかと思いきや、既に夜は明けて、太陽が湖から顔を出していた。

 あたりを見渡すと、ミリの姿はなかった。

 イビキの源泉を探すと、テントの中だった。

 なんとか睡眠から起こして、ミリと共に刺身を食す。

「うっま、売るのが勿体無いな」

「もうちょっと食べよ、スズキ。まだこんなにあるんだから!」

「うーん、まぁ、そうだな」

 その巨体からは想像できないような美味な身にしばらく舌鼓を打ちながら太陽が昇るのをただ見ていた。

 港に向かい、死闘の末釣り上げたオオメガトロを競に出した。

 結果は上々。

 90万ゼニーだった。

 当初は100万ゼニーの予定であったが、ミリの催促のお陰で、報酬はやや減った。

 しかし、これまでのビジネスの失敗による借金をなんとか返し終えることに成功。

「街に帰ったらなんかご馳走でも食うか」

「当たり前じゃん、ほぼミリちゃんのお陰なんだから」

 自分のことをちゃん付けで読むのに腹が立つも、正論に言葉が出なかった。

 『現在プラス30万ゼニー』
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