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第1章 勇者ライオネル・ブラッド
第1話 最強
しおりを挟むよく人々はこんな事を口にする。
勇者ライオネル・ブラッドは最強勇者だと。
たしかに、全能力を得た。
人生に一生困らないであろう金も手に入れた。
尽きないであろう女も。
最早、俺の前に現れるモンスターは一匹としていない。
これでラストだろう。
ライオネルは魔城の前で立ち尽くしていた。
空は暗く、彼の心も荒んでいた。
満たされない欲は彼の心も真っ黒に染め上げた。
魔城の前の一本橋には勇者ライオネルの周りを魔王の護衛であろう多種のモンスターが取り囲んでいた。
勇者は臆する事なく、というよりは無関心といったほうが無難かもしれない。
片手に持った最強勇者の印である英雄剣トラストコードは常に下を向いたまま相手の出方を待っていた。
「勇者よ、お前がどんなに強くてもこれだけの軍勢相手に逃げられると思うなよ」
「逃げる?あぁ、逃げたいよ。こんな世界。欲は満たされたんだ。さっさとお前らを片付けて家の俺特注のふかふかベットに寝っ転がって女と寝るんだ。それが唯一の至福。まぁ、それも飽き始めているんだがな…」
周囲を取り囲む魔獣は困惑していた。
これだけの軍勢に囲まれながらもすでに帰った後の計画を練っている勇者に寧ろ恐怖を抱いていた。
「全知全能?あぁ、そうさ。俺は現世における全ての能力を得た。だけど、つまんないんだよ。こんな世界は。お前らに原因があると思っているが、それは置いとこう。
さぁ、かかってこいよ。お前ら倒さなきゃ、今、王国で女でも抱いてるであろう糞デブ大王になんて言われるか分からないからな」
「言われなくても分かってるわ。皆の者、かかれぇ」
数千を超える大群衆がひとりの人間に一斉に襲い掛かった。
「能力『身体強化』」
と唱えた勇者の身体は筋肉が何倍にも増し、巨大化した。
英雄剣トラストコードを片手で軽々と持ち上げ、魔獣たちをなぎ払った。
「能力『魔力付与』」
英雄剣が光を帯び、膨大な魔力が剣を包み込む。
「こいつ、一体いくつ能力を持ってるんだ?」
魔獣たちが騒ぎ出す。
魔城の門付近にたどり着くと、固く閉ざされた巨大な門が姿を現した。
「めんどくせーな、これ壊すのは肩こりそうだがパパッと終わらせたいし、あれ使うか。多少痛みは伴うがなんとかなるだろ」
勇者ライオネル・ブラッドはその場に座り込んだ。
「なんだ、あいつ。急に座り込みやがって。
もしかしたら、疲れたんじゃないか?いや、そうに違いない。これだけの連戦で流石の最強勇者様であっても疲れるはずだ。野郎ども、今が好機だ。勇者の首を打ち取れ!」
再度一斉に襲いかかる敵を尻目にただ瞑想していた。
地面に垂直に刺さる英雄剣トラストコードの様子を見る限り、攻撃することは不可能。
誰もが勇者の最後を悟った。
次の瞬間。
「能力『自爆』」
勇者がこう唱えた直後、ライオネルの体が風船のように膨らんだかと思いきや、大きな爆発音とともにその身が爆弾と化し、吹っ飛んだ。
あまりの激しさに魔城にかかる一本橋が大破。
巨大な門もいとも簡単に砕け散った。
魔城内の最後の砦である護衛達は唖然とした。
「あいつ、自爆したぞ」
「これで終わりということか?」
護衛達が歓喜に沸いていると、あの懐かしい声が聞こえてきた。
「お前ら、フラグ立ててどうすんだよ。
まぁ、もともと死ぬ気は無かったんだけど…」
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