前世では最強勇者だった俺は転生失敗し最下層ゴブリンへとなったが全能力の引き継ぎに成功したことは黙っておこう。

松村レイ

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第1章 勇者ライオネル・ブラッド

第5話 決着

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「さぁ、次はお前の番だ。魔王。魔力の補給の時間は与えてやったぞ?」

二人の視線が今にも火花を散らしそうな強烈な雰囲気を醸し出していた。

「ここまでの其方の闘いぶり。見事。我の自慢の兵士たちをこうもあっさりと。しかし、ここで私がお前を倒せば勝利だ。これがゲーム。これが闘い。そしてこれが殺し合い。いいだろう。正面からかかって来い、

「望むとこだ」

 もう誰にも止められない。

 もう終わらない。

 終わらせるにはどちらかが死ぬことという一本道のみ。

 瀕死の兵士たちはただ自分の王の闘いを目で追うことしかできなかった。

 両者の武器がひしめき合って音を立てる。

「どうした、勇者よ。動きが鈍くなっているぞ」

「まぁな、でも、そちらこそ」

「いや、私には部下という仲間がいる。彼らが作った時間を無駄にはせん」

 その時、一瞬勇者の足元が揺らめいた。

 その隙を魔王は見逃さなかった。

「下手を打ったな、勇者よ。
食らうが良い。我がオリジナル能力アビリティ重力制御グラビゼイション』!」

 次の瞬間、魔王の突き出した手のひらに向かって空間の重力が一斉に集中。

 これはもちろんライオネル・ブラッドも同様。

 そして動揺。

 ライオネルの体は制御不能で魔王の懐に吸い込まれていく。

 すかさず魔王は魔法光沢を得た剣を前に突き出した。


「ここで終わりだ。最強勇者ライオネル・ブラッド。これからは我ら魔王軍がこの世界を蹂躙する時だ。」


 勇者の腹めがけて光り輝く劔が一直線に向かう。

「く、この引力。やはり魔王の力か‥」

「は、は、は。死ね、勇者よ!!!」

 魔王の突き立てた刃がライオネルの腹部に突き刺さる直前、勇者ライオネルは笑った。

 次の瞬間、傷を負った魔王の精鋭部隊が目にしたのは魔王の持っていた筈の魔法光沢を得た剣を腹部に突き刺し、血を流す魔王の姿だった。

「き、貴様。何をした?勇者ぁぁ。」

 血反吐を吐きながら瀕死の魔王は言った。

「まぁ、色々魔法にもあるんだわ。その中の一つの俺のオリジナル能力アビリティ『魔法生成』を使ってお前と俺の立ち位置を逆にする魔法を作っただけだ。赤児でもわかる事だろ?」

「は、は、は。あの一瞬でそのようなことを‥全くお前こそここにいる誰よりも化け物に近いのではないのか?勇者ライオネル・ブラッドよ」

「ふん、認めたくないが、たしかにそうと言えるな」

「食えん男め。」

 そう言って魔王は息を引き取った。

「あぁ、そう言えばあんたの名前聞き忘れていたわ。まぁいい。どうせ死人なんだからな。すぐに酒と共に俺の頭から洗い流されるだろうし。」

「カルバイン様だ。」

 倒れたリザードマンが言った。

 「そうか、カルバインという名か!殺した敵の名前をいちいち覚えていられんと思っていたが、これも何かの縁。この男の雄姿に答えてお前ら魔王軍精鋭隊は生かしておこう。」

 そういうと、結界は解け始めた。

 辺りはそこら中に穴が空き、変わり果てた魔王城だった。

「よし、帰るか。」

一言言い残し、勇者は英雄剣トラスコードを肩に背負い、魔王城を後にした。
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