その冬の匂いは

朱井葵

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02 手袋

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学校へ向かうバスの中、私は立ちながら参考書を読んでいた。

読んでいた、というよりは、
これといってやることも無いので、とりあえず字面を追っているだけだった。


ーーーu公園前、止まります。


運転手の声がして間も無くバスは停車し、
プシューっと音を立てて扉が開いた。

参考書を左手に持ったまま右手で定期券を取り出し、運転手に感謝を告げてバスを降りる。

暖房のガンガンに効いた車内とは異なり、外は極寒だった。


「さむーー、手袋手袋、、、」


スクールバッグに参考書を仕舞い、その中のどこかにある手袋を探す。


ぽろっ、、、、


「あっ」


見つけて引っ張り出そうとした拍子に、手袋の片方だけが地面に落ちてしまった。


私が手を伸ばして拾おうとすると
それより先に別の手がそれを拾い上げた。


「はい、どうぞ。」


拾ってくれたのは同じ高校の指定コートを着た見覚えのある男の子だった。

何年生なのかも分からないし話したこともないが、毎朝同じバスになる男の子だ。


「ありがとうございます。」

「いえ、あの、、、」


彼が言葉を選んでいるように見えたので次の言葉を待っていたが、

そのまま特に何も言わずに口を閉ざした。


「???」

「いや、なんでもないです、、、すみません、それじゃあ!」

「えっ」


私に手袋を渡すと、にこりと笑って早足で去っていく。


本当はバス停の向い側にあるコンビニで温かいミルクティーでも買いたかったのだけれど、

彼がそちらへ向かって行ったので、再び顔を合わせるのもなんだか気まずいような気がしてコンビニへ行くのは諦めた。
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