その冬の匂いは

朱井葵

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07 憧れの人【晴】

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学校が終わって、僕はそのままバイト先へ向かった。

学校前のu公園からバスに乗って30分。
そこから更に徒歩で10分のところにあるコンビニ。

最近はすっかり寒くなって
その徒歩10分が地獄だ。

さらに今日といえば手袋を忘れてしまったので、
バイト先についた頃には指先が赤くかじかんでいた。

コンビニ指定の制服に着替えて、
すでにレジに並んでいたお客さんの対応をしている間も
レジのボタンを押す指にあまり感覚は無かった。


「ーーーいらっしゃいませ、こんばんはー。」

ピッピッ、、、

「合計3点で、529円ですー、、、600円お預かりします。、、、、71円のお返しです。

ありがとうございましたー。
またお越しくださいませー。」


いつも通り、特にバイトにやる気も何も無かった。

ただ今日の僕は、いつもよりは少しだけーーー
いや、結構かもしれないーー機嫌は良かった。


今朝、憧れの先輩の手袋を拾った。


ーーーーいや、別にそれだけなんだけれど。


それだけ、のことだけど

僕にとっては幸せな出来事だった。


4月に高校に入学してから、いつもギリギリのバスに乗って登校していたのだが

ある夏の日、早起きした僕がいつもより早めに乗ったバスで彼女を見つけた。


さらさらの髪の毛が、読書をする眠そうな目が、
降車する時に告げる「ありがとうございました」の声が

彼女の全てが魅力的で


衝撃的だった。


一目惚れなんてしたこともなかったけれど、
彼女の全てから僕は目が離せなかった。


それからというもの、朝になると死ぬ気で目を覚ましてそのバスに乗るようになった。

話すことはなかった。
触れることもなかった。

だけど、彼女を一目見れただけで僕の一日は幸せになったのだ。


ありがたいことに学校は同じで、
使うバス停も一緒だったので、学校帰りにもバスが同じになることも度々あった。

ただ最悪だったのは、
学年が違うことだった。


僕がいくら憧れても憧れても
彼女と知り合いになることは叶わなかった。

彼女は二年生で、僕は一年生だ。


同じ学年であれば、いつか同じクラスになることや
友達伝に友達になることだってできただろうに。

学年の違う僕たちが知り合いになるためには

僕がーーー突然話しかけるしかなかった。


何度も何度も話しかけてみよう!と試みては

ナンパだと思われたらどうしようとか
嫌われたらどうしようとか

そんなことを考えて諦めていた。


しかし今日

とうとう彼女と言葉をかわすことができたのだ。
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