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執事トーナメント

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「ば、とる」



 ひと際こぶりな会場、それを多くの人たちが厳粛に見守っていた。


「はい、というわけでやってきました!!執事トーナメント!!」

「今回はどんな戦いを見せてくれるんでしょうか。期待がモテますねぇ」

 そう、このトーナメントは、全国の執事たちが戦うというものである。
 
 古来より執事はバトラーと呼ばれていたわけがこれだ。執事は戦うことによってしか自らのレーゾンデートルを保てないのである。
 
 現在金持ちのアレをしているのは、隠れ身のと言ってもよいだろう。
 
「がんばるぞい!!」

 執事初心者の僕がこのトーナメントに参加したのは、この大会で優勝して、おふくろの病気を治すために大金を手にするためである。
 
 そして第一回戦。
 
「ふぉっふぉっふぉ」

「(ぐっ・・つよそう)」

 初老の男性。年のわりに背筋はピンと立っており、常に薄く笑っている。だがその眼は全く笑っていない。
 
 典型的な執事タイプ。この形態の執事は万の数ほどいるだろう。しかしこれほどのオーラ。これは上位レベルと言っても過言ではない。
 
「いつでもかかってきなさい」

「ぐっ・・」

「では・・ファイっ!!」

 僕は手に持った十得ナイフを構える。典型的な執事七つ道具の一つだ。これによって全ての人体の急所を網羅できるというすごいアイテムで、チンピラ程度なら瞬殺できるが、しかし相手に全く隙は無かった。
 
「うぉおおおおおお!!」

 しかしこちらにも負けらえない理由がある。突進して急所を突く。だが、
 
 
 カキーン!!

 その手袋を駆けた手が素早く動き一撃を止めた。そして逆に反撃されて吹っ飛ぶ。
 
「ぐわー!!」

「ふふふ、お若いの。筋は良いが、まだまだですな」

 そして、どこからともなくワインの瓶を取り出してきた。
 
「では、今度はこちらから。ビンテージワイン、六兆三全憶年ものですな」

 飛ばす!!
 
 僕はぎりぎりで見切り交わした。と思った瞬間。
 
(六兆億年・・?!そんなに発行させたら内部で物質発酵が進んで・・ばくk発・・!1)

 そう閃いた、瞬間
 
「ぐわー!」

 爆発。一瞬の閃光とともに爆炎が舞う。
 
「終わり・・ですな」

 だが、油断しているときこそ、敗北している。そのことわざ通り、彼は次の瞬間、致命的な隙をさらしたのだ。
 
「なっ・・??」

 爆炎の中から飛び出してきた僕に驚愕する執事。
 
 そう、爆発の瞬間、僕は執事服を脱いで防御壁がわりにしていたのである。
 
「くらぇええええええええええええ!!!」

「ぬぅ・・!!」

 そうやって執事の腹筋の隙間を縫って、十得ナイフを突き刺した。
 
 もはや戦闘不能だろう。
 
「終わり・・です」

「ふふふ、お若いの。なかなか血気盛んでいらっしゃる。
 その度胸に免じて、一つ教えてあげましょう。
 この大会、執事皇帝(バトルエンペラー)の末裔が散開しておる」
 
「なkっ・・・?」

 執事皇帝。それは血塗られた執事の歴史の中でもひときわ異彩を放つというd円説の存在だ。
 
「決勝まで残るのなら・・いずれ戦うこともあるまいて・・ごふっ」

 そして、それが彼の最後の言葉となった。
 
 どがーん!!
 

 執事は敗北すると爆発する。それは体内の執事エネルギーの暴走によってなると言われているが、定かではないのちに消滅しそうな設定だった。
 
 しかし、「(執事皇帝・・・その事実が本物なら・・)」

 僕の因縁の相手、そして偉大なしつじだった父親が行方不明になったその陰にその執事皇帝の影がちらついていたのだ。

 この大会ひと際大波乱が起きそうな予感である。

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