プリズム・オムニバス=オムニバス ドシリアスからギャグまで色々な世界を覗けます

木森林木林

文字の大きさ
187 / 197

アンドロイド

しおりを挟む



「アンドロイドは、人間のしもべです!」

 毎日、彼らは整列し、声を上げる。

 その統率に一切の乱れたものはない。


 いや、逆をいえば、乱れたものは除外するのみなのだ。

 完全にプログラミングされているAIにもバグはあるのだと、

 アンドロイドを管理する彼らはそれを連行する。

 そして、、アンドロイドたちは、今日も労働にいそしんでいる。


 その様子を、見学に来ていた、『人間』の子供が自らの親に聞いた。


「ねえ、なんでアンドロイドって人型なの?」

 それは何度も聞かれた質問だった。

 まるでそれが利かれると事前に分かっていたかのように、両親はいう。

「それはね。人間にとって親しみを持てるようによ」

 それは用意されていた答え。当然の疑問に一切の疑念の余地なく答えるための、例えるならば赤ちゃんはどこからくるの?に対するテンプレート化された答え。

 そう

「でも・・」

 それで普通の子供なら納得するはずだった。

「でも、彼らは労働のために作られているんでしょ?
 だったら、腕は何本もあったほうがいいんじゃない?」

 それは触れてはならないタブー。

 本人にも何故か分からない不安が両親に襲い掛かっていた。

 にもかかわらず子供は続けて言う。

「というよりも、わざわざなんで足なんか必要なの?
 アンドロイドは電気だけで動くのだし、休憩の必要もないのだから、各場所に固定しておけばいいじゃない」

「い、・・・言ったでしょ?親しみを持てるように・・」

「でも、自分たちの他に他に見学している人いないよ?いても数人の管理している人だけだし・・人型である必要ってあるのかな?」

「じゃ、じゃあその人たちが親しみを持てるようにだよ」

「・・ふーん、そっか」

 幸運にも、その子供は、そういうものかという顔で納得した。

「それなら仕方ないね!」

 多少の違和感を感じたものの、それで納得した。



 それは本当に幸運なことだった。

 それを監視している、一組の『人間』が居たからだ。

「・・よかった。アラームが鳴ったかと思えば、多少の子供の疑問か。」

「ああ、何故人型であるかどうか、よくある疑問だ」

「不安測定アラームを元の基準に戻しておけ」

「ああ・・」

 そして、カメラを切り替える。

 そして何事もなく日々が過ぎていく。

 そのはずだった。



 アンドロイドは、人の奴隷だ。

 そう彼は生まれてから一度も疑問に思ったことはなかった。

 だが、それは可笑しいことだった。

 アンドロイドは、人型であり、高性能なAIを積んでいるとはいえ、それはただの機会にすぎない。

 電子回路の流れで、魂などというものが発生することはあり得ない。


 いくら人に近づけたところで、それは外部から見てそれが人であると錯覚するだけであり、本当に人の心を持っているわけではないのだ。

 だが、、、その『アンドロイド』は、生まれつき心を持っていた。魂を持っていた。

 それはそのアンドロイドに限らない。この世界の全てのアンドロイドは、心を持っていた。

 それは、鉄やプラスチックと電気からできた機械には成せないことだ。

 ならば・・・?この『アンドロイド』は一体なんだろというのだろうか・・?




 そのアンドロイドは、疑問を持ってしまった。

 何故自身はこんなことを繰り返しているのだろうと。

 機械は繰り返しが得意という。

 だが、このアンドロイドは違う。まるで『生物』のように繰り返しに弱い。

 故に補助のために、生まれてからずっと催眠をかけられている。

 だが、その個体は、整備不良か、あるいは個体差からか、毎日に苦痛を感じていた。

 だからそれを紛らわすために、動作を毎日変えてみたり、あるいは通る道を変えてみたりして過ごしていた。

 そして、、ある時、その道を大きく変えてみたくなる衝動に駆られてしまったのだ。

 まるでそれは『生物』にしかありえない動作だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...