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魔族の作り方
しおりを挟むサトリという妖怪がいる。
人の心を読むことができる能力を持っているとされる。
それこそが・・何を隠そう、今、世界を滅ぼそうとしている魔族の祖先だった。
あるサトリは、その力が強すぎた。
周囲何万キロにいる全生命の思いを全て、一つ残さず聞き取ることができた。
そして、、考えていることだけじゃない。そのものの過去の記憶、そしてその親の記憶、、そのまた親の記憶・・と、代々受け継がれるDNAに内包された記憶までも読み取ることができた。
考えただけで、恐ろしい能力だ。
無論、読み取られる方が恐れるということではない。読み取るほう、そんな能力を持って生まれてきたその妖怪が不憫という意味だ。
人はキレイなものだけでできているわけでない。
自分勝手に他人を害する者。
殺したくなるほど怒りを感じる者。
多くの他人から多くのものを奪いのうのうと生きている物。
悲しみにくれ一ミリも動けないもの。
弱者・・強者・・奪うものと奪われるもの、そのどちらも負の感情。
その妖怪は、そんな濃密な負の感情を全て知っていた。
現在、そして過去に至るまで、人の歴史はそういったものだった。
奪い、奪われ、怒り、復讐、悲しみ、絶望。
たった数人の幸福のために、大勢を犠牲にして生きている老人。親族。
大勢のために白羽の矢が立った悲しき犠牲者。
そう言った歴史を、その妖怪は全て正確に知ることができた。
事実、そしてそれに内包された感情。そして痛みまでも・・。
故に、妖怪は、生まれたときからゆがんでいた。
それは、妖怪の中でも、トップクラスの危険な存在だった。
妖怪・・それは色々なものがおり、無害な者や危険なものもいたが・・
その中で一番危険な者とはいっても、それはせいぜい、民家におりてきたヒグマレベルの危険度だ。
だが・・サトリは違った。
その脅威度が、台風や地震レベルならば何よりよかっただろうか。
それは隕石レベル。人類を滅ぼしかねない危険な存在だった。
サトリは、長年かけて、あるスキルを習得した。
それは、自分の能力を他人にコピーペーストする能力だった。
つまり・・この術にかかったものは、サトリと同じ能力・・つまり、周囲数十キロの全生命の過去、現在におけるあらゆるデータを、一度に正確に、永遠に感じなければいけないということだった。
それで、まず初めにそのスキルにかかったものは、はじめはその能力の全知さに喜んだ・・が。
わずか一時間で死亡した。死因は自殺。無限大ともいえる憎悪、怒り、悲しみにショックを受け、自ら首を絞めたのだ。
その次のスキルにかかったものは、狂気に充てられて崖から落ちて死亡。
その次の次は、全ての悪意の情報を必死にとらえようとして心臓を動かすのを忘れ死亡。
その次の次の次は・・
と、何百人目かで、生き残った者がいた。
彼は、強い意志を持っていた。元々才能があるものだけ扱えるスキルだったのだろう。
そして、、彼は人間。
人に溶け込み、あらゆる手段を使い、あらゆる多くの人間を殺害した。
いや、彼だけではなかった。
何百人に一人、その能力に耐えられるものが居た。
その全員が、人を殺していった。
それも、、心が醜いものを殺していったのだ。
能力を使い、権力者になり、戦争、暗殺を起こしていき、あらゆる階級の人を殺していった。
平民を殺し、貴族を殺し、大統領を殺し、金持ちを殺し貧乏人を殺し、男を殺し女を殺していった。
負の感情は、殺すことでしか、平穏を得ることはできないからだ。
それにより、人口は減っていくが、ある時サトリの存在に気が付く。
サトリから力を得た人間は、武力的には強くはない。殺されていき、その血筋は脈々と受け継がれていった。
そして、、今も世界の怨念の声を聴いているのが魔族。
長年をかけて一族しか扱えないオーバーテクノロジー的な武力を携えていた。
彼らは人を滅ぼすだろう。世界から悲しみが消えない限り。
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