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木森林木林

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ドン勝つ

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 ある時、シンギュラリティが起きた。

 
 つまり、科学がある一定のラインを超えることで、爆発的にあらゆる問題が解決したのである。


 人のように思考しているかのように錯覚するほどのAI。

 ほぼコスト0で食料を大量生産する工場、畑。

 リスクなしであらゆる病気を治せる医療法、

 リスクなしの人体改造、遺伝子改造。

 そして不老不死。


 不老不死ははじめ特権階級のものだけだったが、シンギュラリティによるコストダウンで、全ての人類、生まれてくるもの全てに不労処理が可能となった。

 自分の年を好きな風に調整したり、老化を止めたり、また逆に永遠に眠る、あるいは死ぬことを選択するものもあらわれていった。

 自らの死を選ぶ。つまり自殺であるが、しかし一般人が数千年も生きることは稀だった。

 生きるのが辛いというよりも飽きるというほうが正解だろうか。

 娯楽の発達も大きく発展はしたものの、やはり千年以上生きるとこれから何が起きるのかだいたい予想がついてしまうのだ。

 あるいは、自らが永遠に行き続けるということに、何か恐怖を感じたものも。

 いや、あるいは純粋に死んだらどうなるのかという好奇心からのものもいた。


 

 まあ、そんな感じで、数億年、数兆年、平和が続くとともに、あらゆることが変化していったが、全体の傾向として、人口は上下しながらも減少していくようだった。

 娯楽の発達で、あらゆる経験がつめることから、現実の恋愛に興味を示すものも次第に少なくなり、出生率も低くなっていった。


 そして・・・ついに人類の総人口は、数千人、数百人、ひいては数十人というところまで減った言ったのである。


 絶滅危惧かと言えばそうでもなく、人類が絶滅した後も、AIが遺伝子から再び人類を生み出すこともできる・・が、それに何の意味があるというのか。

 数十人、生き残った?ものにはある一定の共通点があるようだった。

 それは、独自の世界観や個性を持っていたことである。

 何故そうなのかは、用意の想像がつくだろう。この環境において、群れるということはもはや意味はない。蒸れなくても生きることができる。

 そして、新たな敵は、膨大な時間。

 何の目的や享楽を持たずに生存することは不可能だろう。

 だが、、人というものはおろかなのか。

 いや、それとも生きている意味がないと彼らは悟ったのだろうか。


 彼らはあるとき、戦争を始めた。


 初めは些細ないさかいだった。

 些細な口げんかをしたことが原因だった。


 だが、その小さな火種が、やがて大きな争いに発展したのである。


 それは、総人口数十人の中の大部分が参加した。

 中にはばかばかしい、狂ってると静観を決めるものもいたが、、彼らの争いに巻き込まれないように逃げることは難しかった。

 もはや成熟しすぎた科学力によってお互いの位置は把握されてしまうのである。

 追跡方法は、微弱な電波から、痕跡の追跡、ドローン、マイクロロボットなど、さまざまあった。

 こうして、狂ってるとしか思えない、何の意味もない戦争が始まったのである。

 

 その段階において、人口が数十人とだけあって、人ひとりに与えられた資源、科学力は膨大だった。

 ヒトガタロボ、あるいは獣がたロボだけでなく、バイオ動物兵器、金属腐食細菌や、島一つを作ったトラップ、山ほどもある空中戦艦、などなど・・命のないそれらは互いを破壊しあい、、そして、、


 最初の人の犠牲者が出た。

 勝ったものは、殺した者の科学力や資源を奪い、そしてまた他の人間を襲う。

 無論、奪ったことによるアドバンテージは無視することはできなかった。


 弱い勢力から奪わないと、対抗できないだろう。

 そして、同盟を結んだり、また裏切ったりしながら、どんどんただでさえ少ない人口は減っていき、ゼロへと近づいていく。


 そして・・最後の三人になった。


 ある場所で二つの勢力、人間が争っている。


 大量のロボや汚染空気やらバイオ生物やら放射能やら電波やらが互いにリソースを削りあっていた。

 それはAIによって統制されており、気を抜けば突破されてしまうだろう。

 だが、AIは戦略を実行するのみだが、しかしその意志を示しているのは生身の人間。人類だ。

 二人とも、お互いに戦争が好きなようで、彼らは多くの仲間を殺し、そして資源と科学を奪っていた。

 もはやお互いの戦力は地球を二分するもの。


 それは環境を激変させつつも、地球にダメージが残らないようにコントロールしている。


 そして、ついに・・

 ミリの差で、一方が一方の前線を突破し、そして、、


 ついに殺した。


 その頭首たる人間を殺したのだ。

 勝ったものは勝鬨を挙げた。

 そして、彼は次に最後の人を殺そうと思った。


 もはやそれはゲームでしかない。

 殺してどうしようなどと考えてはいなかった。

 ただ楽しいから殺す。ゲームを進行させる。それだけの理由。つまりは暇つぶし。

 だが、同時に、それはゲームではなく、自由度の高い現実だった。


「がっ・・」

 同時に彼は絶命する。


 事故ではない。これは他殺だった。


 他殺・・彼の他に人類はもう一人しかいない。


 そう、隠れて監視していたのだ。


 科学力を、兵器の隠ぺいとそしてスナイプだけに注ぎ込み、そしてたった今油断したところを殺したのである。


 そして、、たった一人、ただ一人で遊びたいだけのたった一人の人類は、ようやく静かになったと安心して息をついたのだった。

 
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