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第36話
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休憩時間の魔王様のからかい事件の後も、性懲りも無くメイドさんも打ち合わせをしてはからかい続けた。
だが不思議なことに、魔王様の仕事ペースがいつもの数十倍にも上がっていたらしい。これも作戦のうちで僕らの手柄、ということにしておこう。
けれどまぁ、もう万策尽きた。
「壁ドン床ドンしたし、ラッキーすけべ展開をも装い成功した……」
「不意な身体接触や意味ありげな言葉回しもしましたしねぇ……」
「……搾り粕しか出ないぞ」
「絞り出してくださいアッシュさん」
押して押して押しまくり、もう魔王様もなんか身構えている。警戒心MAXだし、悪戯を仕掛けるにも今やれば失敗しそうだ。
ど~すっかなぁ……。
魔王部屋の前の廊下にて壁にもたれかかり、腕を互いに組んでいた。
「うーん、今日はもういいんじゃないか?」
「……ふむ、成る程」
「十分信頼されたが、警戒度がさらに高まったのも確かだ。そこであえて何もせずに普通に過ごせば良い」
「そして魔王様が勝手に自爆、と……。素晴らしいですアッシュさん」
「んじゃそういうわけで。僕の休憩時間終わるし行ってくる」
正直言えば、今日はもう疲れた。休憩時間になればあの厄介メイドが話しかけてきてズイズイ迫ってくる。そして最後には魔王様に叱られる。
だから自然体でで行こうか……。
###
―魔王視点―
……今日は疲れたような気もしたが、満たされたようなか気がしたような……。なんだか不思議な1日であった。
「ふぅ……」
一旦ペンを机に置き、一息吐いた。
アッシュとメイドが手を組んでいたらしく、今日はとんでもない1日であった。あ、あんなことやこんなことまで……!
(~~っ! お、思い出しただけで顔が赤く……っ!! いかんいかん! 今は仕事に集中だ)
ペチペチと自分の頰を叩いて気合いを入魂し、再びペンを持って仕事を進め始める。すると、ドアの向こうから問題な奴が現れた。
「魔王様ー」
「っ!? こ、今度はなんだアッシュっ!」
「いえ……今日はもう何もしませんよ。コーヒー淹れてきました」
「あ、あぁ。有難う」
アッシュ……。リーヴェ王国へのお忍び視察の際に合間見えた、我と互角に渡り合える人物。
単純に強さに惹かれて引き抜こうとした結果、我があたふたしてしまうという体たらくを見せつけてしまったがな……。
『職場体験をしてみてから考えてくれ』と言ったが、アッシュは……。
「アッシュ、お前は魔王軍に属するつもりはないのだろう?」
「……へぇ? どうしてそんなことをお思いで?」
「魔王の勘、だな」
「勘は恐ろしいですね。まぁ、はい。魔王軍には就職しないつもりです」
……腹が立つ。我を……我をこんなにもおかしく狂わせるだけ狂わせ、この場を立ち去ろうなど。腹が立つが、心は虚ろに向かっていきそうだ。
「一応聞いてみるが、何故だ?」
「うーん、そうですね……内緒、というわけで」
「っ、そ、そうか」
ニヤリと不敵に笑ってみせるアッシュにドキリと心臓が跳ねる。もう我は、彼の一挙手一投足が気が気でないのだ。
甘く優しい言葉を投げかけ、我より強く、我の趣味を応援し、少女漫画に出てきそうな言動をするコイツは……!
「魔王様? ……おでこ熱いですね。風邪ですか?」
「~~っっ!?!?」
今も見てみろ、おでこをくっつけて体温を確認しだすではないか。
こんなの……こんなの!
(――好きにならないわけがないだろうが……っ!!)
けれどもし、勇者側についてしまったら最悪な結果が訪れることは確かだ。我を敵対し、憎悪の視線を送られるのだろう。
そんなことをされたらもう……生きていけないかもしれない。それくらい、我の心はアッシュに弄られ、改造された。
それくらい我は、アッシュが好きだ。
いいや……言葉にしないから言えるが、もう大好きだ。
――例え離れていても繋がる、確かなものが欲しい!!!
(腹を、括るしかない……)
「? 魔王様?」
「な、なんでもない。大丈夫だ!」
「そうですか」
明日、やってやろう。
職場体験最終日、我はやってやるぞ!!
(……覚悟しておくが良いぞ、アッシュ!)
「……?」
察しが良いらしいアッシュも、明日やるつもりのとんでもないことは予想できまい!
緊張、不安、焦燥……様々な思いを抱えたまま、我は明日に向けて業務をこなすのであった。
だが不思議なことに、魔王様の仕事ペースがいつもの数十倍にも上がっていたらしい。これも作戦のうちで僕らの手柄、ということにしておこう。
けれどまぁ、もう万策尽きた。
「壁ドン床ドンしたし、ラッキーすけべ展開をも装い成功した……」
「不意な身体接触や意味ありげな言葉回しもしましたしねぇ……」
「……搾り粕しか出ないぞ」
「絞り出してくださいアッシュさん」
押して押して押しまくり、もう魔王様もなんか身構えている。警戒心MAXだし、悪戯を仕掛けるにも今やれば失敗しそうだ。
ど~すっかなぁ……。
魔王部屋の前の廊下にて壁にもたれかかり、腕を互いに組んでいた。
「うーん、今日はもういいんじゃないか?」
「……ふむ、成る程」
「十分信頼されたが、警戒度がさらに高まったのも確かだ。そこであえて何もせずに普通に過ごせば良い」
「そして魔王様が勝手に自爆、と……。素晴らしいですアッシュさん」
「んじゃそういうわけで。僕の休憩時間終わるし行ってくる」
正直言えば、今日はもう疲れた。休憩時間になればあの厄介メイドが話しかけてきてズイズイ迫ってくる。そして最後には魔王様に叱られる。
だから自然体でで行こうか……。
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―魔王視点―
……今日は疲れたような気もしたが、満たされたようなか気がしたような……。なんだか不思議な1日であった。
「ふぅ……」
一旦ペンを机に置き、一息吐いた。
アッシュとメイドが手を組んでいたらしく、今日はとんでもない1日であった。あ、あんなことやこんなことまで……!
(~~っ! お、思い出しただけで顔が赤く……っ!! いかんいかん! 今は仕事に集中だ)
ペチペチと自分の頰を叩いて気合いを入魂し、再びペンを持って仕事を進め始める。すると、ドアの向こうから問題な奴が現れた。
「魔王様ー」
「っ!? こ、今度はなんだアッシュっ!」
「いえ……今日はもう何もしませんよ。コーヒー淹れてきました」
「あ、あぁ。有難う」
アッシュ……。リーヴェ王国へのお忍び視察の際に合間見えた、我と互角に渡り合える人物。
単純に強さに惹かれて引き抜こうとした結果、我があたふたしてしまうという体たらくを見せつけてしまったがな……。
『職場体験をしてみてから考えてくれ』と言ったが、アッシュは……。
「アッシュ、お前は魔王軍に属するつもりはないのだろう?」
「……へぇ? どうしてそんなことをお思いで?」
「魔王の勘、だな」
「勘は恐ろしいですね。まぁ、はい。魔王軍には就職しないつもりです」
……腹が立つ。我を……我をこんなにもおかしく狂わせるだけ狂わせ、この場を立ち去ろうなど。腹が立つが、心は虚ろに向かっていきそうだ。
「一応聞いてみるが、何故だ?」
「うーん、そうですね……内緒、というわけで」
「っ、そ、そうか」
ニヤリと不敵に笑ってみせるアッシュにドキリと心臓が跳ねる。もう我は、彼の一挙手一投足が気が気でないのだ。
甘く優しい言葉を投げかけ、我より強く、我の趣味を応援し、少女漫画に出てきそうな言動をするコイツは……!
「魔王様? ……おでこ熱いですね。風邪ですか?」
「~~っっ!?!?」
今も見てみろ、おでこをくっつけて体温を確認しだすではないか。
こんなの……こんなの!
(――好きにならないわけがないだろうが……っ!!)
けれどもし、勇者側についてしまったら最悪な結果が訪れることは確かだ。我を敵対し、憎悪の視線を送られるのだろう。
そんなことをされたらもう……生きていけないかもしれない。それくらい、我の心はアッシュに弄られ、改造された。
それくらい我は、アッシュが好きだ。
いいや……言葉にしないから言えるが、もう大好きだ。
――例え離れていても繋がる、確かなものが欲しい!!!
(腹を、括るしかない……)
「? 魔王様?」
「な、なんでもない。大丈夫だ!」
「そうですか」
明日、やってやろう。
職場体験最終日、我はやってやるぞ!!
(……覚悟しておくが良いぞ、アッシュ!)
「……?」
察しが良いらしいアッシュも、明日やるつもりのとんでもないことは予想できまい!
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