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17章
事件の予感?
しおりを挟む掘り起こしてすぐの畑は使えない。数日待ってから使うんだって。パンのベンチタイムみたいなもんかね?
畑を作ったおかげか、私達に対するおばさま衆からのあたりが以前にも増して柔らかくなった。毎夜、宿に各家庭の夕飯のお裾分けが届けられるほど。お昼ご飯に誘ってくれた人も。チーズ料理以外のものもあって、素直に嬉しかった。
サーシャさんと代理人を交えて正式に契約書も交わしたし、おばさま達から個人的にホプコン類も売ってもらえたし、おじさん達に頼んでいた大量のチーズとミルクもゲット。
村長からは「村の問題を早期解決してくださりありがとうございます」というお礼と共に全員分の麦わら帽子を渡された。村長の奥様のお手製だそうです。服に似合うかどうかは置いておいて、夏の大陸に行ったときに重宝しそうなのでありがたい。
◇
やることを終えた私達はなんやかんや延泊していたヨムソ村を出発。サーシャさんと代理人がいるのでもちろん馬車だ。
サーシャさんは馬車があることにホッとしていたし、代理人は「こちらが商会長が絶賛していた馬車ですね!」と興奮しきりだった。
騎士は馬車に乗り、お馬さんには並走してもらっている。今回もルフスに回復をお願いしてはいるものの、休憩を随所で取る予定である。なんでかって、私達がいなくなった後に同じように走れって言われたら可哀想だからね。
代理人がうるさいとグレンはジルのいる御者席についたので、道中の魔物は彼らにお願いした。
街に到着後、私達はそのまま商業ギルドへ。応接室でヨムソ村でのことや馬車内での話を商業ギルド長に報告していたんだけど……そこへ見たことのない女性騎士が慌てた様子で駆け込んできた。
「サーシャ様!! ピーター様が、ピーター様が……! 大至急騎士団本部へ来てください!」
「「!?」」
今にも泣き出しそうな女性騎士からピーターと発せられた途端、ガタンと立ち上がったサーシャさんは「失礼する!」と私達に向かって宣言し、行動を共にしていた男性騎士共々、走り去ってしまった。
一瞬の出来事に残された私達は呆然とするばかり。そんな沈黙を破ったのは代理人だ。
「あの……ピーター様って?」
「あ、えっと……副騎士団長のことかと」
あの慌てようはその副騎士団長に何かあったに違いない。そしてサーシャさんの友人か兄弟か……知人以上の関係であることも簡単に察せられる。
プルトンに頼もうかと思ったら、すでに向かったあとだった。行動が早い。
「心配だけど私達が首を突っ込んでいいのかわからないから、話をまとめちゃいましょうか」
「あ、はい!」
途中だった報告を済ませたら、次はジルが村に出発した後に届いた大量のモロコンの受け取り。そして今回の協力者達に買取り代金とお礼のポップコーンを送る作業だ。
モロコンはギルドの倉庫を四つも埋め尽くすほどの大量加減だったし、ポップコーンを送る作業は量というよりも送り先が多くて時間がかかった。
タルゴーさんが声をかけていたらしく、ガルドさんと再会したベヌグの街のネルピオ爺までモロコンを送ってくれていたからね。
ようやくひと息つけたときにはすでに夜の帳が下りており、外はかなりの暗さ。
大変な作業を手伝ってくれていたギルド職員もご飯を食べるどころじゃなかったので、調理室を借りて夕飯作り。私が作ったものはダメだとグレンが断固拒否するので、ジュードさんが作ったコンソメスープがギルド職員に配られた。
サーシャさんの家にお邪魔していいのかわからず、私達は商業ギルドが手配した宿へ。
プルトンからの報告を聞きたかったのに『もう寝る時間よ!』と結託され、私は早々に寝かしつけられた。
◇ ◆ ◇
朝のルーティンや朝食を済ませた私達が向かったのは騎士団本部。プルトンいわく、サーシャさんは家に帰っていないらしいので。
ただならぬ様子だったのに、騎士団本部はそこまで慌ただしさがない。箝口令でも敷かれたのかも。
見かけた騎士に声をかけたら、以前救援物資の確認のときに鉱石を担当していた人だった。ちょうどいいとあの男性騎士を呼んでもらうことに。
「お待たせしました」
「はーい。お兄さん、呼んでくれてありがとう」
「いえいえ。では自分は失礼しますね」
去っていく騎士を見送り、顔馴染みになった男性騎士に向き直ると同時に手の中の結界石を見せる。
「――! お願いします」
「はーい。……これで漏れないから安心して。サーシャさんに会いたいんだけど、あの騎士さんに頼まない方がいい感じでしょ?」
「……ははっ。お見通しってやつですね……」
力なく笑う騎士は顔色がよくない。ピーターって人のことが心配なんだろうな。
「取り次げないなら伝言頼んでもいい? 『サーシャさんが望むなら、可能な限り協力するよ』って」
「……かしこまりました」
男性騎士に泊まっている宿を教え、私達はひとまず宿に戻ることに。サーシャさん宅じゃないことに驚かれたけど、サーシャさんに招かれてないのに勝手に泊まれないよ。
◆ ◇ ◆
セナ一行が騎士団本部を出たのを見送った男性騎士はサーシャのいる第五医務室へと足を急がせた。第五医務室は普段使われていないため、少々奥まったところにある。隔離とまではいかないが、助かる見込みの少ない重病者や重傷者に使われてきた部屋だった。
ドアの前で息を吐き、ドアをノック。しかし返事がなかったため、ドアを無断で開けた。
サーシャは一人の男性――ピーターが寝かせられているベッド脇のイスに座っていた。寝ていないことが虚ろな目元から容易に想像が可能な風貌だ。
男性騎士はサーシャしかいないことにホッと胸を撫で下ろし、声をかけた。
「サーシャ様」
「……なんだ」
「セナ様が訪ねて来られました」
「……」
「『サーシャさんが望むなら可能な限り協力するよ』とのことです」
「なんだと?」
瞳に光が宿ったことで話を聞く気があることを察した騎士はここぞとばかりに説明に力が入る。
「こちらの事情を把握しているようで、サーシャ様を呼び出すのではなく、俺に伝言を託していきました」
「セナがこの状況の原因をわかっているということか?」
「それはどうかわかりません。セナ様はあのドラゴンでキューマレ国の海辺の街に向かう予定だったそうです。それを知った殿下や宰相に『せめて国内にしてくれ』と止められたと。セナ様本人が何かしたというよりも、昨日のギルドでの様子から調べたんじゃないんですかね? どうやってかは想像もつきませんけど」
「……」
セナと会った際、騎士が顔色を悪くしていたのは「なんで箝口令敷いたの知ってるんだよ! 怖ぇよ!」と不気味がったからである。とはいえ、騎士はセナが何かしたとは考えていなかった。むしろあのセナの様子はこちらを慮っていたように見えたからだ。拒否するなら決して立ち入らないよ、と。
騎士の言葉を受け、サーシャは少し冷静になった。
そうだ。セナが今回の件を引き起こしたとは考えにくい。タルゴー商会をこの街にオープンするのにあたり、貧民や孤児、ケガなどで働き口がない人を雇えないかと交渉していたくらい心根が優しいのだ。それにしても……旅の途中で寄ったのだろうとは思っていたが、ドラゴンで隣国に向かう気だったのか……止められるのも当然だろうに。
そう思った瞬間、アデトアからの手紙の一文がサーシャの頭の中をよぎった。
――とりあえず常識的なようで常識がない――
言い得て妙だ。人並み以上の頭のよさ故だろうか。人の機微には敏感なのにところどころ抜けている、というかズレている。
「ハッ……そうだな。彼女は人の不幸を喜ぶタイプではない」
「セナ様は薬草に詳しく、見つけるのもお手の物だ、とヨムソ村でジュード様が話していましたし、協力してくれるというのならばお願いするのも一つの手かと」
「現状打つ手がないんだ。頼めるだけ頼んでみよう」
「サーシャ様はピーター様が心配でしょうから、手紙書いてくれれば届けますよ。泊まっている宿聞いたんで」
「ん? うちに泊まっているんじゃないのか?」
「それ、俺も聞いたんですけど、『招かれてないのに勝手に押しかけるなんて迷惑でしかないでしょ? 使用人の人が困っちゃうじゃん』って言ってました」
「なるほど。そこは一般的なんだな……」
手紙を書き始めたサーシャを見て、騎士は安堵した。憔悴していた先ほどよりも、サーシャに少し生気が宿ったように見受けられたからだ。
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