転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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17章

昏睡

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 宿に戻ってきて一時間も経たないうちにあの男性騎士が手紙を届けにきた。思っていたよりも早いな。

「んん? ねぇ、私、ピーターって人が倒れた原因、鑑定かけないとわかんないよ?」
「あれ? そうなんですか? 箝口令敷かれたの知ってて俺呼んだんじゃないんですか?」
「あぁ、それは昨日あんなに慌ててギルドに呼びに来たのに、騎士団本部に変わった様子がなかったから、隠してるのかな? って思って」
「それだけで、ですか?」
「うん。ギルマスが副騎士団長って言ってたから、団員の士気に関わる~みたいな感じかなって」
「なるほど……」

 まぁ、プルトンから聞いた情報でわかってることの方が多いんですけれども。それは言ってはいけないし、大きな謎が残っているから直接鑑定と聴取をしたいところ。
 何かを考えながらうんうんと頷いている男性騎士に話しかける。

「すぐ行って大丈夫? なるべく早い方がいいと思うんだよね」
「あーっと……箝口令のことがあるんで、一時間……いや、三十分後でもいいですか? 人払いをして誰とも遭遇しないようにしたいので」
「大丈夫だよ。三十後に騎士団本部到着? それとも三十後に宿出発?」
「本部到着で」
「了解」

 急ぎ戻る騎士を見送った私達は軽く相談。プルトン情報を今一度共有と整理してからガルドさん達も一緒に騎士団本部へと赴いた。
 時間調整をしつつ集合場所に到着したのは予定時刻の一分前。そこにはゼーハーと肩で息をする男性騎士がいた。中腰で膝に手を当てて息を整えていらっしゃる。

「え、大丈夫?」
「ま、間に合って、よかったで、す……案内、しますね……こっち、です」

 ぜえぜえと息も絶え絶え。話すのも苦しそうである。全力疾走でもしたの?
 呼吸が整いきる前に歩き始めた男性騎士を慌てて追いかける。
 ちょっと休憩してからでもいいと思うよ? 人払いの都合上たいのかもしれないけど。

 以前サーシャさんが案内してくれた騎士像がある祈りの間は通らず、直接本部へと向かうみたい。
 建物の壁沿いを進み、裏というか横というか……柱の陰、さらに植物で隠されるように、シンプルなドアはあった。今まで見たよりはちょっとだけ小さめで、〝隠しドア〟まではいかないものの、マジで使われていなそうな〝裏口〟なんだろうな。
 ドアをくぐったあとは長い廊下を進み、何回も角を曲がり、階段を登り降り。途中から周囲の雰囲気が……学校のさ、特別教室のみの旧校舎(もしくは第二校舎)みたいな……ちょっと薄暗く、哀愁が漂っている感じに変わった。
 時間にして十分以上。ようやく目的地と思しき部屋の前へと到着した。人を避けるためとはいえ、かなりの大回りである。それだけ機密扱いなんだろね。

 騎士は……〝コンコン、ココココ、コッココン〟と、不思議なリズムでドアをノック。「大丈夫だ。入れ」とのサーシャさんの声が聞こえてからドアを開いた。
 部屋にあるベッドは六つ。この部屋で寝かされているのは一人だけ。カーテンはないものの、そこだけパーテーションで病人の顔が見えないようにされていた。手前側の奥のベッドなのはドアを開けただけでは視界に入らないように、ってところだろう。
 ベッド脇に立って私達を迎えたサーシャさんはプルトン情報通り覇気がない。ただ、聞いていたような虚ろな雰囲気ではなかった。

「今回協力してくれるとのこと、感謝する」
「サーシャさんの大事な人みたいだからね。内緒なら万が一にも人が入れないようにコレ使おうか」
「…………」

 マジックバックから出したように見せた結界石を見たサーシャさんは神妙な顔で頷いた。それを見たジルがサッと設置に動き出す。さすがジル。行動が早い。
 ドアは内開き。結界を張ってしまえばドアは動かない。私かプルトンの結界でもいいんだけど、アイテムを使った方がわかりやすいからね。

「ジルありがとう。さて、その人に鑑定かけてもいい?」
「あぁ。頼む」

 サーシャさんが避けたところでくだんの彼に近付いて確認。布団から出ている顔は顔色が悪いくらいで眠っているだけに見える。犬耳さんってことは獣族だ。
 鑑定は……


  【ステータス】

【名前】 ピーター・ボールドウィン
【種族】 狼族
【年齢】 34歳
【職業】 副騎士団長
【レベル】 49
【状態】 毒・昏睡
【スキル】 剣術・槍術・棍術・槌術・格闘術・風魔法・雷魔法・乗馬・解体・罠感知・危険察知・魔力制御・身体強化・獣化じゅうか
【耐性】 物理攻撃耐性・魔法攻撃耐性・毒耐性
【称号】 サーシャの幼馴染・ヴィルシル国パソヴァルの街副騎士団長・熱血漢・子供達の英雄ヒーロー


 おぉ! かなり前に見たフレディ副隊長よりステータスが上だ。スキルも多い。犬だと思ったけど狼さんだったのか。勘違いしてごめんよ。そしてサーシャさんの幼馴染だったのね。納得。
 プルトン情報通りに【状態】が毒。耐性を持っていることを考えると……対応できない毒だったか、それを上回るほどの強烈な毒だったか、ってところ?

「この人、毒に冒されてるね」
「毒ですか!?」
「なんで……」
「んーと……あった、あった。はい、サーシャさん。コレ、毒消しポーション。飲ませてあげて」

 騎士が体を支え、サーシャさんが彼の口にポーションを流し込む。昏睡と書かれているだけあって目を覚ますことはないが、少量ずつのポーションは飲み込んでいる。
 この世界って意識なくても飲むのがすごいよね。誤嚥しないんだよ。地球だったら点滴一択じゃない?
 なんてことを思いつつ、再び寝かされた彼に鑑定をかけ直した。

「んんん? このポーションじゃダメだった? 毒全般に効くハズなんだけどな?」
「え……そんな……」
「なんとかならないんですか!?」
「お静かに。セナ様の考察の邪魔をしないでください」

 いつもならすぐ効果が出るのに、【状態】の鑑定結果に変化はナシ。ソイヤ村で怪しい【腐食毒】も治した毒消しポーション。さらにいえばアルヴィンに付き合ってもらって効能が上がった上位版である。
 プルトンの《毒なのは確定なんだけど、なんか変な感じがしたのよねー。現場にも毒になる要素なんてなかったし……》というセリフの違和感の正体がコレ?

「サーシャさん、そもそもなんでこうなったの?」
「――っ! まずは騎士団の話からしよう。先日話した通り、不法入国者や魔物を警戒している」

 目を合わせて問いかける。サーシャさんはハッとした様子で語り始めた。
 不法入国者のチェックのために騎士団は二人一組で国境沿いの見回りをしている。昨日ギルドに呼びに来た女性騎士ともう一人の男性騎士の二人で国境の見回りをしていた。そこへピーターさんがやってきて「異常はないか?」と声をかけた。ピーターさんは自身の仕事の合間に個人的に様子を見に行っているらしい。で、会話をしている最中、突如ピーターさんが男性騎士を突き飛ばした。次の瞬間、岩が真上に落ちてきた。本来岩の下敷きになるところだった男性騎士は無事だったが、庇ったピーターさんが下敷きに。ポーションで傷を治したハズなのにピーターさんは目を覚まさなかった。ピーターさんを慕う騎士は多く、目を覚まさない理由がわからないため、それぞれの任務に影響が出ないように騎士団長が箝口令を敷いた。サーシャさんが戻ってきていることを知ったあの女性騎士がサーシャさんを呼びにきた……ということだった。
 うん。プルトンから聞いた情報と差異がないね。そして落ちた岩を見に行ったものの、毒物らしきものは見当たらなかったと。

「うーん……もう一回鑑定してみるね」

 頼むぞ、鑑定クン!
 目にを込めて、【状態】を注視する。以前グレンが眠り病になったときと同じように、モヤモヤと文字が変わっていった。

【状態】 麻痺毒・神経毒・融解毒にて昏睡

 えぇ!? 三種類の毒!? これ、毒盛られたんじゃないの???

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感想 1,813

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みんなの感想(1813件)

りん♪
2025.11.15 りん♪

更新ありがとうございます♪
嬉しいです♪

解除
マキ
2025.10.15 マキ

身長が伸びないはもしかして寿命が長いから成長が遅いとかかな?
そうだった場合いつ気付くんだろう?
漫画5巻予約しました。

解除
ニャルソック

たくさん追加されてて、余計に嬉しかったです。
またまたお風呂分を買うのを忘れたので、もう一冊買います‼️

解除

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