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17章
薬は用法用量を守りましょう
これはサーシャさん達に聞かせない方がいい気がして、念話が可能なメンバーには念話、ガルドさん達には魔通を使って共有。ほぼ全員、私と同じ意見で「誰かにヤられたんじゃない(か)……?」と疑っている。
称号に熱血漢ってあったくらいだから、さぞかし熱い男なんでしょう。体育会系って合わない人は合わないよね……
《――っ!? セナ、触診だ! 触診した方がいい!》
「「「「!?」」」」
目の前に躍り出て声を張り上げたのはアルヴィン。こんなに慌てた様子のアルヴィンは初めてだ。精霊の声は精霊本人が認めた人にしか聞こえないため、サーシャさん達には聞こえていないハズ。バッチリ聞こえたガルドさん達は大声にビクッと反応したあげく、目をまん丸にさせていらっしゃるけれども。
「((触診?))」
《あぁ。セナのあのポーションでダメだとすると、この男に使われたのは特殊な毒である可能性が高い。しかも融解毒は体の中を溶かす危険な毒なのだ! 場所によってはすでに手遅れの可能性もある!》
「えっ!?」
サーシャさんに怪しまれないように念話で返したのに、内容に驚いて普通に声が出てしまった。そのせいで、後ろでサーシャさんと男性騎士が「なんだ?」とコチラを窺っているのがわかった。
ジルの祖先であるアルヴィンは私なんかよりも薬学や毒物に詳しい。契約者であるジルはもちろん、私もちょいちょい教えてもらっている。そんなアルヴィンがヤバいと言うならマジでヤバいに違いない。
振り返ってサーシャさんの名前を呼ぶ。
「サーシャさん! ちょっとこの人触るよ!」
「は……」
サーシャさんの返答を待たずして、かけられている布団を引っぺがす。
頭からチェックし、心臓を過ぎたところで息を吐いた。一番ヤバそうな部位は無事だと思っていいだろう。頭蓋骨内の脳がヤられていなければ、だけど。そのまま確認を続け、左足の太ももあたりで違和感を覚えた。太ももから足首にかけて……なんかブニブニしてる? 特に膝周辺とふくらはぎは水っぽいブニブニだ。左右の足を比べれば少し腫れているかな? ってくらいなのに。
「ここだ……腫れてるだけじゃなさそう。骨が心配だね」
腕を触っていたアルヴィンは私の声で足を確認して、一つ頷いた。
《そうだな、融解毒の影響は足だけのようだ。足ならばまだマシだ。クラオル、足を縛ってくれ。毒の進行を抑えたい》
『いいわよ。どのあたり?』
《んー……服が邪魔だな。脱がすか。ジルベルト》
「はい」
「え!? 脱がすの!?」
「「は!?」」
私の発言にサーシャさん達から驚きの声が上がるとほぼ同時に、クラオルが蔓を伸ばして二人をグルグル巻きに。サーシャさんは口を塞がれていないのに、男性騎士は猿轡状態である。
「いきます」
「なっ!? セナ! これはどういうことだ!」
《ふむ……上はここで……下はココだ》
「ん゛! ん゛ーーーー!」
『わかったわ』
私達が驚いている間にもジルがズボンを引っ張り下ろす。いきなりの所業に不満を露わにするサーシャさん達の声を無視して、クラオルとアルヴィンの会話は続いている。
上のYシャツはそのままに、ズボンを脱がされてトランクスのようなパンツにされた男性の足を診るアルヴィン。クラオルは指定された箇所である足の太もものキワと足首を縛った。
〈おい、うるさいぞ〉
「先ほども言いましたが、お静かに願います。セナ様の邪魔をしそうだったのでクラオル様が先手を打ったにすぎません。セナ様の優しさでこの人物を診て差し上げていることをお忘れなく」
「えっと……ジルの発言もグルグルもごめんね? 助けてあげたいから、ちょっと見守っててほしいな」
ジルの適当な理由付けに便乗させてもらう。今はクラオルが『フンッ』と鼻を鳴らすほど彼女達の拘束を解く様子がないのだ。様子を見てお願いしよう。
何故巻き巻きにしたのか理由を念話で聞いたところ……『脱がすって言ったときに男の方が主様に手を伸ばしてたのよ。間違いなく無駄に騒ぐ気だったわ』とのこと。ジルの説明は当たってたのか。そして多分っていうか確実に、騎士は「脱がす」って言葉に驚いただけだと思うよ……
サーシャさんと男性騎士は「何をする気だ!?」と言わんばかりにギュッと顔を顰めたものの、言葉を発することはなかった。
《もう一度セナのポーションを飲ませてみよう。どうなるのかを見たい。先ほどと同じように起こして飲ませてくれ》
「ガルドさん達、支えるの頼んでいい?」
「あぁ」
「いいよー。せーの、よいしょーっ! おっと」
男性騎士、この力の抜けたグラグラ状態を表情も変えずに普通に支えてたのすごいな。
ガルドさんとジュードさんが件の人物の上体を起こして支えてくれたところで――「セナ様、それは僕が」と、持っていたポーションをジルに奪われた。
ジルの「セナ様に飲ませてもらうなど……烏滸がましいことこの上ない」という一言は聞かなかったことにします。聞こえていたんだろうガルドさんは一瞬顔を引き攣らせ、「おい、危ねぇ発言してんぞ」と言ってそうな視線を私に向けてくるし、ジュードさんは「ん゛っ」と噴き出しそうになるのを我慢していらっしゃったけれども。ウン、ワタシハ、ナニモ、キイテイナイヨ。
《セナもよく見ていてくれ。ジルベルト、こやつに飲ませろ》
「はい。では飲ませます」
ガルドさんの視線から顔を逸らしていた私にアルヴィンから真剣な声色で注意が入った。そうだ、ふざけている場合じゃない。
「ん? んんん?」
「どうした?」
「一瞬。一瞬だけだった」
「一瞬?」
「うん。少し効いたっぽいんだけど、すぐに戻っちゃった。蔓で縛ってるから効きにくいのかな?」
《いや、セナのポーションだ、縛った程度で影響が出たとは考えにくい》
縛ったことで毒の影響が抑えられるなら、ポーションの効果も抑えられるんでないの???
「少しでも効果があるなら、ポーションいっぱい飲ませるのは?」
『それはダメよ。主様のポーションは一般的なものよりはるかに効能が高いのよ? 影響が出るかもしれないわ』
「影響?」
《本来の治癒力がおかしくなり、傷の治りが恐ろしく速くなったり、逆にポーションなしでは治癒しなくなったり。本来の力以上に身体能力が上がるも、体がついていけずに壊れる……といった可能性も考えられる》
「え……私前にマジックポーション、ガブ飲みしてたよ?」
『主様は大丈夫よ。同じく、主様の魔力に慣れているガルド達やジルベルトも問題ないわ。その人の能力以上のポーションを過剰摂取した場合にそうなる可能性があるの』
「マジか……ポーションの飲みすぎって怖いんだね……」
ブルりと震えた私は、クラオルが『主様のポーションだからって言ったじゃない。いつもちょっとズレるんだから……』と私に視線を向けていたことに気が付いていなかった。
薬は用法用量を守らないとダメっていうのは、世界を跨いでも変わらないのか。ガルドさん達が大丈夫でよかった。
《特殊な毒だとして、臓器ではなく足が毒に侵されている点から考えると初動のポーションか? ……セナ、何か気になるところはないか?》
「うーん。気になるところねぇ……」
一番気になっているのは皮膚にはなんで影響がないの? ってことなんだけど、それは質問の趣旨とは異なるだろうし……
「あ……ちょっと思い付いたから、調べてみるね」
『え、ちょっと何する気?』
「さっきの予想がもし正解だった場合、足に一番影響が出てるってことは、毒ポーションをかけたってことでしょ? 飲んでたら足よりも内臓がヤられるハズだもんね。傷の血管から全身に毒が回りそうじゃない? だから足だけじゃなくて他の場所も毒にヤられてたらヤバいなって思ってさ。大丈夫かどうかを調べようと思って」
《なるほど。理にかなっているが、そのようなことが可能なのか?》
「多分?」
やったことがあるワケじゃないから、そうとしか言いようがない。ぶっつけ本番である。
手の平を伸ばし、集中してそこからを乗せた魔力を放出させる。イメージはスキャンだ。体の中ということを考えれば、レントゲンやCTの方が近いかも?
魔力に【探査】スキルを乗せたから、異常が起きているところが光ってくれるハズ!
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