154 / 537
7章
プライドとストーキング
集合場所である門前に着くと、ギルマスとサブマスは既に到着していた。
ギルマスはバカでかいハンマー……槌を背中に背負っていて、戦う気満々らしい。
「じゃあ早速向かおうか。では、行ってくる」
門前にいたからてっきりサブマスも一緒なのかと思ったら彼は留守番らしく、無言で頭を下げた。
◇
ギルマスに続いて身体強化をしながら走る。とは言っても、岩山なのでジャンプしながらだけど。
「へぇー。身体強化も使えるのか。陛下が強いと言っていただけあるな」
〈無駄口はいい。それよりもっとスピードは出せないのか?〉
感心したように言うギルマスにグレンが小馬鹿にしたように言うと、ギルマスの癇に障ったのか「後悔するなよ」とスピードを上げた。
正直、ガルドさん達の身体強化の方が早いし、グレンはもちろん私もジルベルト君も余裕で付いていけるスピードだ。
ジルベルト君の様子を見ながら、豚肉料理のことを考える。
◇
ふと、魔物の気配が密集している場所を察知した。
でも何か様子がおかしい。数匹ではあるけど、気配が消えたり現れたりしている。
「((ねぇ、場所わかったんだけど、なんかおかしいよ))」
〈((何かってなんだ?))〉
「((気配が消えたり現れたりしてるの))」
〈なんだと!?〉
念話で話していたのに、前を走っていたグレンがグリンと私の方に振り向いた。
「な……なんだ?」
「いかがいたしました?」
ギルマスとジルベルト君に同じ説明をすると、「そんな報告は受けていない」とギルマスに返された。
ギルマスは信じていないようだけど、ジルベルト君は何か考え込んでいる。
うーん。こういうとき、ジルベルト君と念話できないのが残念すぎる!
そのまま走り続けていると、ギルマスは疲れからか汗を浮かべ始めた。
「スピード落としますか?」
「これくらい平気だ!」
(いや、全然平気そうに見えないから!)
このままだと着く頃には疲労困憊になって戦えないのが目に見える。グレンにスピードを落とすように言うと、〈だから言ったではないか〉と文句を言いながら速度を緩めてくれた。
ギルマスは「平気だと言っている!」と語気を強めるけど、流れる汗で説得力はない。
そうこうしているうちにオークの集落に到着すると、聞いていた三十匹なんて嘘もいいとこだった。
目視できるだけでも百は越えていると思う。
土地をいじったのか岩山のはずなのに大きく開けていて、わらわらとオークが密集しているのは気持ちが悪い。
「はぁ……はぁ……こんなに増えてるとは……」
〈邪魔だ。帰れ〉
――――ブヒィィィィィ!
〈チッ! 風か〉
一匹に目ざとく見つけられ、大声で鳴かれるとギロりとオーク達の視線が私達に集中する。私を凝視する目に熱が籠った気がして、瞬時にゾワァっと鳥肌が立った。
グレンは大剣を取り出し、ジルベルト君は向かってくるオークの目を弓で的確に射っていく。
ギルマスはハンマーを振るおうとしているけど、疲れから足元が覚束無い。これだと帰るに帰れなさそうだ。
オークは異世界物あるある通り、女が好きらしく、私とギルマスに向かってくる。
フラフラのギルマスのフォローをしながらオークを倒していく。
「ジル!」
弓から片手剣に替えたジルベルト君の死角から攻撃しようとしていたオークに、水魔法を叩きつける。
「ありがとうござっいます!」
「ヴブッ!」
ジルベルト君のフォローをしていると、後ろにいたギルマスが殴り飛ばされてしまった。
「あぁー! もう! みんな出てきてー! 素材確保討伐だよ!」
叫びながらみんなを呼ぶと、出てくるなり「わーい!」と喜びながらオークに向かって行った。
私はギルマスに群がろうとしているオークを氷漬けにして、グレウスに頼んで気を失ったギルマスに囲いを作ってもらった。
ジルベルト君のフォローに向かい、ジルベルト君が立て直したら、離れて水魔法で溺死させていく。
クラオルもグレウスもポラルも私から降りて戦闘に参加してくれているけど、ふと、ルフスはどうやって倒しているのかと思って見てみると、既に事切れたオークを足で掴んで持ち上げ、空から生きているオークにドスーンと落としていた。
あれは巻き込まれたくない。
ルフスもわかっているのか離れた位置を狙っているみたいなので大丈夫だとは思うけど。
半数は狩ったハズなのに、次から次へとオークが湧いてくる。
奥に見える洞窟に入ると気配が消え、外に出てくると気配が現れることがわかった。未発見のダンジョンだったらしい。
「わかった! 魔物大量発生だ! あの洞窟、ダンジョン!」
〈わかった!〉
『『『『はーい!』』』』
私が声を張り上げると、みんなが討伐のスピードを上げていく。
洞窟に近付くに連れてオークもレベルが高いのか、ガムシャラに向かってくるわけではなく、自分より弱い者に命令を下していた。
上司がいなくなれば統制も崩れるんじゃないかと、風魔法で首チョンパを狙ったのに部下オークを盾にして回避されてしまった。
私の失敗を嘲笑うかのようにニヤニヤしてくるのは腹が立ってくる。
「絶対やっつけてやる」
気合い充分に、イグ姐に打ってもらった刀を握りしめてオークに向かって走る。
部下オークの首を風魔法で飛ばし、驚愕に染まる表情の中ボスであろうオークにニッコリと笑いかけながらジャンプして刀で首を刎ねた。
「セナ様、ギルドマスターが気がついたようです」
「りょーかい!」
グレン達に残りの討伐をお願いして、ジルベルト君とギルマスの元へ向かうと「なぜこんなところに閉じ込めている!」と喚き始めた。
「あなたは状況がわかっておられないようですね。疲れ果ててロクに戦闘もできず、殴られて気を失ったんですよ? セナ様があなたを守るように囲いを作ったというのに……」
「すっ、すまない……だが!」
「セナ様を侮り、あまつさえ自分の能力さえも過信したあなたはオークに襲われた方が良かったのですか?」
「あぁー。面倒だから責任取ってもらおう。その前に……」
念話と指輪でウェヌスを呼んでギルマスを眠らせてもらう。
ウェヌスはちょうどお仕事真っ只中だったらしく、謝りながら戻っていった。
「あー、コホン。サブマスさーん! いるのはわかってるんで出てきてくださーい!」
「……バレていたのか」
なんでバレていないと思ったのか。ただ、スピードにも余裕で付いてきてスタミナもありそうなこのモヒカンサブマスの方が、ギルマスよりも強いんじゃないかと思う。
「バレバレです。ストーキングするなら気配や足音消した方がいいですよ」
「……そうだな。気をつけよう」
サブマスは私の言葉を噛み締めるように頷いた。
「この人責任取って持って返ってください。あと、聞いていたと思いますが、これダンジョンからの魔物大量発生なんで、念の為ダンジョンの中にも入ります。私達が街に戻るまで、どんなに権力がある人も立ち入らないようにしてください。もし入った場合、命の保証はできません。人質に取られても困りますし、遠慮なく言わせてもらうと邪魔です」
「……わかった。陛下にも連絡しておく」
「よろしくお願いします」
ジルベルト君は言いたいことがあったみたいだけど、私がまくし立てるようにサブマスに言うと言葉を飲み込んだ。
サブマスが眠っているギルマスを背負い岩山を降りていくのを見送って、私とジルベルト君は戦闘に戻った。
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
フェンリルに育てられた転生幼女は『創作魔法』で異世界を満喫したい!
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
旧題:フェンリルに育てられた転生幼女。その幼女はフェンリル譲りの魔力と力を片手に、『創作魔法』で料理をして異世界を満喫する。
赤ちゃんの頃にフェンリルに拾われたアン。ある日、彼女は冒険者のエルドと出会って自分が人間であることを知る。
アンは自分のことを本気でフェンリルだと思い込んでいたらしく、自分がフェンリルではなかったことに強い衝撃を受けて前世の記憶を思い出した。そして、自分が異世界からの転生者であることに気づく。
その記憶を思い出したと同時に、昔はなかったはずの転生特典のようなスキルを手に入れたアンは人間として生きていくために、エルドと共に人里に降りることを決める。
そして、そこには育ての父であるフェンリルのシキも同伴することになり、アンは育ての父であるフェンリルのシキと従魔契約をすることになる。
街に下りたアンは、そこで異世界の食事がシンプル過ぎることに着眼して、『創作魔法』を使って故郷の調味料を使った料理を作ることに。
しかし、その調味料は魔法を使って作ったこともあり、アンの作った調味料を使った料理は特別な効果をもたらす料理になってしまう。
魔法の調味料を使った料理で一儲け、温かい特別な料理で人助け。
フェンリルに育てられた転生幼女が、気ままに異世界を満喫するそんなお話。
※ツギクルなどにも掲載しております。
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。