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7章
プライドとストーキング
しおりを挟む集合場所である門前に着くと、ギルマスとサブマスは既に到着していた。
ギルマスはバカでかいハンマー……槌を背中に背負っていて、戦う気満々らしい。
「じゃあ早速向かおうか。では、行ってくる」
門前にいたからてっきりサブマスも一緒なのかと思ったら彼は留守番らしく、無言で頭を下げた。
◇
ギルマスに続いて身体強化をしながら走る。とは言っても、岩山なのでジャンプしながらだけど。
「へぇー。身体強化も使えるのか。陛下が強いと言っていただけあるな」
〈無駄口はいい。それよりもっとスピードは出せないのか?〉
感心したように言うギルマスにグレンが小馬鹿にしたように言うと、ギルマスの癇に障ったのか「後悔するなよ」とスピードを上げた。
正直、ガルドさん達の身体強化の方が早いし、グレンはもちろん私もジルベルト君も余裕で付いていけるスピードだ。
ジルベルト君の様子を見ながら、豚肉料理のことを考える。
◇
ふと、魔物の気配が密集している場所を察知した。
でも何か様子がおかしい。数匹ではあるけど、気配が消えたり現れたりしている。
「((ねぇ、場所わかったんだけど、なんかおかしいよ))」
〈((何かってなんだ?))〉
「((気配が消えたり現れたりしてるの))」
〈なんだと!?〉
念話で話していたのに、前を走っていたグレンがグリンと私の方に振り向いた。
「な……なんだ?」
「いかがいたしました?」
ギルマスとジルベルト君に同じ説明をすると、「そんな報告は受けていない」とギルマスに返された。
ギルマスは信じていないようだけど、ジルベルト君は何か考え込んでいる。
うーん。こういうとき、ジルベルト君と念話できないのが残念すぎる!
そのまま走り続けていると、ギルマスは疲れからか汗を浮かべ始めた。
「スピード落としますか?」
「これくらい平気だ!」
(いや、全然平気そうに見えないから!)
このままだと着く頃には疲労困憊になって戦えないのが目に見える。グレンにスピードを落とすように言うと、〈だから言ったではないか〉と文句を言いながら速度を緩めてくれた。
ギルマスは「平気だと言っている!」と語気を強めるけど、流れる汗で説得力はない。
そうこうしているうちにオークの集落に到着すると、聞いていた三十匹なんて嘘もいいとこだった。
目視できるだけでも百は越えていると思う。
土地をいじったのか岩山のはずなのに大きく開けていて、わらわらとオークが密集しているのは気持ちが悪い。
「はぁ……はぁ……こんなに増えてるとは……」
〈邪魔だ。帰れ〉
――――ブヒィィィィィ!
〈チッ! 風か〉
一匹に目ざとく見つけられ、大声で鳴かれるとギロりとオーク達の視線が私達に集中する。私を凝視する目に熱が籠った気がして、瞬時にゾワァっと鳥肌が立った。
グレンは大剣を取り出し、ジルベルト君は向かってくるオークの目を弓で的確に射っていく。
ギルマスはハンマーを振るおうとしているけど、疲れから足元が覚束無い。これだと帰るに帰れなさそうだ。
オークは異世界物あるある通り、女が好きらしく、私とギルマスに向かってくる。
フラフラのギルマスのフォローをしながらオークを倒していく。
「ジル!」
弓から片手剣に替えたジルベルト君の死角から攻撃しようとしていたオークに、水魔法を叩きつける。
「ありがとうござっいます!」
「ヴブッ!」
ジルベルト君のフォローをしていると、後ろにいたギルマスが殴り飛ばされてしまった。
「あぁー! もう! みんな出てきてー! 素材確保討伐だよ!」
叫びながらみんなを呼ぶと、出てくるなり「わーい!」と喜びながらオークに向かって行った。
私はギルマスに群がろうとしているオークを氷漬けにして、グレウスに頼んで気を失ったギルマスに囲いを作ってもらった。
ジルベルト君のフォローに向かい、ジルベルト君が立て直したら、離れて水魔法で溺死させていく。
クラオルもグレウスもポラルも私から降りて戦闘に参加してくれているけど、ふと、ルフスはどうやって倒しているのかと思って見てみると、既に事切れたオークを足で掴んで持ち上げ、空から生きているオークにドスーンと落としていた。
あれは巻き込まれたくない。
ルフスもわかっているのか離れた位置を狙っているみたいなので大丈夫だとは思うけど。
半数は狩ったハズなのに、次から次へとオークが湧いてくる。
奥に見える洞窟に入ると気配が消え、外に出てくると気配が現れることがわかった。未発見のダンジョンだったらしい。
「わかった! 魔物大量発生だ! あの洞窟、ダンジョン!」
〈わかった!〉
『『『『はーい!』』』』
私が声を張り上げると、みんなが討伐のスピードを上げていく。
洞窟に近付くに連れてオークもレベルが高いのか、ガムシャラに向かってくるわけではなく、自分より弱い者に命令を下していた。
上司がいなくなれば統制も崩れるんじゃないかと、風魔法で首チョンパを狙ったのに部下オークを盾にして回避されてしまった。
私の失敗を嘲笑うかのようにニヤニヤしてくるのは腹が立ってくる。
「絶対やっつけてやる」
気合い充分に、イグ姐に打ってもらった刀を握りしめてオークに向かって走る。
部下オークの首を風魔法で飛ばし、驚愕に染まる表情の中ボスであろうオークにニッコリと笑いかけながらジャンプして刀で首を刎ねた。
「セナ様、ギルドマスターが気がついたようです」
「りょーかい!」
グレン達に残りの討伐をお願いして、ジルベルト君とギルマスの元へ向かうと「なぜこんなところに閉じ込めている!」と喚き始めた。
「あなたは状況がわかっておられないようですね。疲れ果ててロクに戦闘もできず、殴られて気を失ったんですよ? セナ様があなたを守るように囲いを作ったというのに……」
「すっ、すまない……だが!」
「セナ様を侮り、あまつさえ自分の能力さえも過信したあなたはオークに襲われた方が良かったのですか?」
「あぁー。面倒だから責任取ってもらおう。その前に……」
念話と指輪でウェヌスを呼んでギルマスを眠らせてもらう。
ウェヌスはちょうどお仕事真っ只中だったらしく、謝りながら戻っていった。
「あー、コホン。サブマスさーん! いるのはわかってるんで出てきてくださーい!」
「……バレていたのか」
なんでバレていないと思ったのか。ただ、スピードにも余裕で付いてきてスタミナもありそうなこのモヒカンサブマスの方が、ギルマスよりも強いんじゃないかと思う。
「バレバレです。ストーキングするなら気配や足音消した方がいいですよ」
「……そうだな。気をつけよう」
サブマスは私の言葉を噛み締めるように頷いた。
「この人責任取って持って返ってください。あと、聞いていたと思いますが、これダンジョンからの魔物大量発生なんで、念の為ダンジョンの中にも入ります。私達が街に戻るまで、どんなに権力がある人も立ち入らないようにしてください。もし入った場合、命の保証はできません。人質に取られても困りますし、遠慮なく言わせてもらうと邪魔です」
「……わかった。陛下にも連絡しておく」
「よろしくお願いします」
ジルベルト君は言いたいことがあったみたいだけど、私がまくし立てるようにサブマスに言うと言葉を飲み込んだ。
サブマスが眠っているギルマスを背負い岩山を降りていくのを見送って、私とジルベルト君は戦闘に戻った。
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