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7章
国王情報
しおりを挟むグレンは昨日あんなに食べたのに朝ごはんもバッチリ入るらしい。驚きの胃袋に「本来はドラゴンだもんね」と納得せざるを得ない。
朝ごはんを食べている宿泊客は私達以外に二組しかいなかった。昨日騒いでいた冒険者達も宿泊しているらしいけど、いっぱい飲んでたみたいだしまだまだ起きてはこなさそう。
「お食事中失礼いたします! セナ様にお手紙が届いております」
食後の果実水を飲んでいると、昨日宿の手配をしてくれた兵士さんがお手紙を届けてくれた。
見てみるとアーロンさんから。内容は――この街の近くに怪鳥の巣があるということと、もし可能ならば指名依頼を受けて欲しいということ。もちろん断っても構わない。ただ、詳細は冒険者ギルドで聞いて欲しいと締めくくられていた。
アーロンさんから依頼のお願いは正直意外。
心配そうに見つめるグレンとジルベルト君にも手紙を見せてあげると、グレンも意外そうに片眉を上げた。
〈これは本物か?〉
「本物だと思うよ。アーロンさんの魔力感じるから。どっちみち冒険者ギルドに行かなきゃと思ってたから、話聞くだけ聞いてもいいかもしれないね」
〈ふむ。怪鳥と言うからには肉だろう。肉なら構わん〉
お肉じゃなかったら受けたくないのね……まぁ、私も面倒なのはパスしたいけど。
◇
冒険者ギルドの応接室で待っていると、入ってきたのは胸当てを装着している小麦色の日焼けが活発そうに見えるナイスボディなお姉さんと、モヒカン頭でワイシャツがピッチピチのゴリマッチョだった。
お姉さんはダークエルフでギルマス、ゴリマッチョはサブマスらしい。
よく見るとエルフ特有のとんがった耳の持ち主だった。日焼けかと思ったお姉さんの肌は生まれつき。ダークエルフは小麦色がデフォルトなのかと思ったら、人によって違うらしい。ただ濃淡はさまざまだけど、色が付いていることが多いんだそう。
「話しを聞きにきてくれて助かるよ。早速なんだけど、オークの集落を殲滅して欲しいんだ」
「オークですか?」
「そう、オークだ。巣が山ん中にできているのが発見されたんだよ。幸い、まだ街に被害はないんだけど、いつ女子供が襲われるかわからないんだ」
〈怪鳥じゃないのか?〉
グレンが私達が思っていた疑問を投げかけると、ギルマスとサブマスに揃って首を傾げられた。
てっきり怪鳥を狩る依頼だと思っていたけどどうやら違うらしい。
「怪鳥も生息はしているが、そこまでの脅威じゃない。まぁ、狩ってもらえれば助かるが……」
「ちょっとよろしいでしょうか? セナ様にお手紙が届きましたが、冒険者ギルドから口利きをお願いしたのですか?」
ジルベルト君がギルマスを真っ直ぐに見つめて問いかけると、ギルマスはため息を吐いた。
「誤解させて申し訳ない。この国では重要なことは国に報告しているんだ。今回のように討伐隊を組むことになりそうな事案の場合、近くの街から兵士を派遣してもらうことも多い。被害を最小限に抑えるためだ。貴殿のことは元々通達されていた。街に入った時点で国に報告したときに、もしかしたら貴殿が狩りに行きたいと言うかもしれないと連絡が返ってきたんだ。貴殿が向かうなら討伐隊は必要ないからと」
なるほど。ただ依頼を受けないか?と聞くよりは、私達が食いつくだろう怪鳥の話題を出したってことかな? 多分商業ギルドのレシピ登録とかで私が料理することを知ってのことだろうなー。
「もちろん、嫌なら断ってくれ。ただ……討伐隊を編成しなきゃならないから、なるべく早く答えを出してもらいたい」
「集落って規模はどれくらいなんですか?」
「調べた結果、オークキングがいることはわかっている。細かい生息数はわからないが三十匹程だと報告を受けた」
「なるほど。豚肉山盛りかぁ~。何作ろうかな?」
〈豚丼だな!〉
オークキングがどれくらいの強さかわからないけど、30匹くらいなら大丈夫そう。
私と同じく、グレンの頭の中は豚肉料理で埋めつくされているらしい。以前とは違って豚丼の発音もできるようになっていた。
お肉を買うお金をケチるワケじゃないけど、自分達で狩れるなら狩った方がお得だなと思ってしまうのは仕方ないと思う。私が貧乏性だからかもしれないけど。
「……受けるのか?」
「え? 受けない方がいいんですか?」
「いや……ここまで幼いとは思っていなかったからな……陛下に言われたから聞いたが、断られると思っていた。ギルドランクもEだと聞いているしな」
だから部屋に入ってきたとき一瞬驚いた顔したのか。納得。
「あぁー、なるほど。ランクに興味ないんですよね。子供が高ランクだと目立ちそうですし。ちなみに怪鳥のことを聞いても?」
「あ、あぁ。怪鳥は美味いし毛皮も高額で取り引きされているが、凶暴なためあまり狩られていない。滅多に山から降りてこず、特に被害はないからそのままになっている。が……本当に受けるのか?」
どうせなら鶏肉もゲットしたい。ピリ辛じゃない鶏ガラスープを作りたい。
これは両方狩るしかない!
「オークの集落と、怪鳥の巣の場所を教えてください」
「オークの集落は案内しよう」
〈いらん。邪魔だ〉
「貴殿らの強さは知らないが、邪魔にはならないつもりだ」
グレンがピシャリと拒否したのに、ギルマスは引いてくれない。
岩山ならネラース達も楽しめると思ったんだけど……どうしようかな……
〈我らのスピードに着いてこられるのか?〉
「ムッ。山岳地帯で育った者の足腰をナメないでもらいたい。貴殿らよりは慣れている」
ギルマスは譲る気がないみたいなので私達が折れるしかない。
アーロンさんに筒抜けだから、手のうちを見せたくはなかったんだけど……ま、こういうこともあるよね。
怪鳥の巣の場所だけ聞いて、目的だったタルゴーさんへの手紙を送り、ギルドを後にした。
◇
昨夜食べたグレープフルーツを買おうと、宿の人に聞いたお店に向かう。
途中、食欲をそそるスパイスの香りに誘われて、食堂で美味しい鹿肉のスパイス炒めをいただいた。
ハーブとスパイスのお店にも寄り、スパイスを購入。この街で売っているハーブとスパイスはキアーロ国で見たことがないものも多かった。トウモロコシのヒゲにしか見えないものから、完全に月桂樹そのままのものまであり、鑑定を駆使して一人で盛り上がった。
お目当てのグレープフルーツのお店では、昨日私に食べさせてくれたおじさんが忙しそうに在庫を出していた。
「おっ! 昨日の子じゃねぇか! なんだ? オレに会いにきてくれたのか?」
「こんにちは! 昨日食べたやつ美味しかったから買いにきたの」
おじさんは手を止めて笑顔を見せてくれる。
「おっ! 嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか! こっちも食ってみるか? おーい! ナイフ持ってきてくれー!」
「ちょっと! こっちだって忙しいん……ってお客さんかい?」
中から顔を出したおばさんは私を見て目をパチクリさせたあと、ニッコリと微笑んだ。
「あーら! やだよ~。こんな可愛い子達がうちの店にきてくれるなんて! こっちにお座りよ! 兄ちゃんもね」
おばさんは有無を言わさず私とジルベルト君の手を引いて店先にある木箱に座らせ、果実水まで出してくれた。
おじさんはおばさんが持ってきたナイフでメロンサイズの白いグレープフルーツを剥いてくれている。
「剥けたぞー!」とおじさんに渡された白いグレープフルーツを食べてみると、これも甘くて美味しい!
日本の果汁100%のグレープフルーツジュースよりも甘く、香りとちょびっとだけくる苦味がまた堪らない。
「そうか! ウマいか! 坊主もあんちゃんも食ってみろ!」
「はぁ~。また美味しそうに食べてくれるねぇ!」
「昨日のは赤グレフルっつーんだが、これは白グレフルだ。ピンクグレフルもあるからな! ちょっと待ってろ」
おじさんとおばさんが笑顔で私達に試食させてくれ、いくらデザートは別腹だと言ってもおなかはパンパン。
「美味しかったー! ご馳走様でした!」
「ご馳走だなんて嬉しいねぇ!」
そういえば食後の挨拶はしないんだったっけ……まぁ、いいように解釈してもらえたみたいだからいいか。
「これ、三種類売ってもらえるだけ売って欲しいの!」
「これをか? すごい量になっちまうぞ?」
「うん! 大丈夫なの! お金もちゃんと払うよ!」
ポンポンとマジックバッグを叩いてみせると、納得してくれたらしい。
おじさんとおばさんが流れ作業で渡してくれるメロンサイズのグレープフルーツを無限収納にしまっていく。
「んーと、一つ銀貨2枚だから……全部で……」
「各50個で全部で150個だから、一つ銀貨2枚だとすると30万ゼニで大金貨3枚だよ」
「おぉ! 計算が早ぇな!」
金貨と大金貨どちらがいいか聞くと、金貨だと言われたので金貨30枚を渡す。
ちなみにこれは近くのダンジョン産らしい。なくなる前にそのダンジョンに入りたい。
「こんなに買ってくれるなんて! おまけだよ!」と、おばさんからオレンジと桃をプレゼントしてくれた。
おなかがパンパンな私は苦しさからグレンにお願いして、抱っこで宿まで運んでもらった。
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