文字の大きさ
大
中
小
151 / 500
8章
中敷きとクッキング
朝ご飯を食べると、イペラーさんから「昨日渡すの忘れてたよ」とお手紙を渡された。
部屋に戻って確認してみると、アーロンさん、ボンヘドさん、タルゴーさん、タルゴー商会のリシータさん、デタリョ商会のおじいちゃん、サルースさん、ブラン団長達からと大量だった。
「中敷き大好評だって」
〈まぁ、そうだろうな〉
「ん? もしかしてグレンも欲しかった?」
〈んん……あったら便利だと思うが……〉
「言ってくれたらよかったのに!」
〈言うタイミングがなかった! それに……セナは嫌なんだろ?〉
「水虫じゃないってパパ達が言ってたし、特には気にしないよ? グレンの足臭くないし」
〈なら、我にも作って欲しい〉
「ジルは?」
「以前はかゆかったりもしましたが、髪色が戻ってからは気にならなくなりました」
(覚醒したからかな?)
とりあえずグレンの中敷きも作ろうとグレンとジル以外コテージに移動した。
グレンとジルには中敷き用の布のおつかいをお願いしておいた。
『主様? それ、サンドスライムの核じゃなくない? それに、もうひとつのやつって前にタルゴー商会で買った板よね?』
「ふっふっふ。これは【スライム液】と【プラスラ液】だよ。グレンとジルには特別なの作ろうと思って」
クラオルが言っていたタルゴー商会で買った板はラバーソールみたいなちょっと弾力のある板。
スニーカーを作りたくて買ったんだけど、中敷きにも使えると思うんだよね。
日本の中敷きの記憶を頼りにみんなに協力してもらって成形していく。
素晴らしいポラルのサイズ計測能力で、ブーツの形状も足の形状もわかった。
エアインソールみたいにクッション性を出すのに【スライム液】と【プラスラ液】を使ってジェル性のクッションを作った。カットしたラバーソールの踵部分と足の指の付け根部分に穴を開け、そこに作ったジェルクッションを埋め込んでくっつける。
最後に【スライム砂】で作った中敷きをくっつければ完了だ。
ちゃんと土踏まずとかも山型に成形したから疲れ防止もバッチリのハズ!
ちょっと実験として、炭とダンジョンで入手したいい香りの草を混ぜ込んでみた。相殺されたら意味ないけど、もしかしたらいい匂いだけ残ってくれるかもしれない。
デタリョ商会のおじいちゃんから【グルスラ液】をもらっててよかった。大活躍だよ!
「できたー! みんなありがとう!」
『主様、自分のはいいの?』
「私のはパパが作ってくれたブーツだからか蒸れないし、疲れないんだよね。エルミスとプルトンはいる?」
《儂らは平気だ。精霊はそういう苦悩はない。同じく妖精もないハズだからキヒターも必要ない》
いいものができた! と、ルンルン気分で宿の部屋に戻って、お手紙の返事を書いた。手紙はイペラーさんにお願いしておく。
帰ってきたグレンとジルから布を受け取って再びみんなでコテージへ。
「グレンとジルのできたよ」
「僕のもですか?」
「うん。疲れにくくなるように作ったから、ジルも使うかなって思って」
「セナ様……」
「試してみて!」
グレンと感動してうるうるしてしているジルに中敷きを渡すと、グレンに〈不思議な形だな〉と言われてしまった。
〈おぉー! これは足が楽だ! ブーツも軽い!〉
「柔らかいのにしっかりしています」
「よかった! 一応軽量化も付与しているからラバーソールの重さは感じないと思うんだ」
〈いや、ブーツそのものが軽くなった〉
「はい。重さを感じないのに守られている感じがします」
まさか中敷きでブーツまで軽くなるとは思わなかったけど、喜んでくれているからよしとしよう!
午後まではグレン達が買ってきてくれた布で土踏まずがアーチ型のものや、魔物の毛を使ったクッション性のある物をモデルとして作った。
途中、手伝ってくれていたグレン達が〈我らのとは形が違う〉と不思議がっていて、「グレン達のは特別なんだよ」と説明しておいた。
◇
お昼ご飯を食べたらお迎えの馬車に揺られて商業ギルドへ。
ギルドにはなぜかアーロンさんがいた。なんでも見習い君に付いてきたらしいけど、私の予想では食べにきたんだと思う。
「あ! オジサン!」
「……おう」
「では、皆サマよろしいですカナ?」
オジサンに話しかけたらボンヘドさんが集まった人達に話し始めてしまった。
「こちらのセナ様が教えてくれマス。ここに集まった人達は口外しないと誓約書を交わしている人しかいませんですヨ。ではセナ様、よろしくお願いしマス」
「えっと……よろしくね?」
ボンヘドさんが私を紹介すると、オジサンはパクパクと口を開け閉めして驚いていて、他の人は胡乱げに見つめてきたり、動じなかったりとさまざまな反応をみせた。
「お帰りになりたい方は帰っても構いませんが、いらっしゃいますカナ?」
ボンヘドさんが声をかけると、悩む素振りを見せる人はいたけど実際に行動を移す人はいなかった。
おそらくアーロンさんがいるからだろう。
「じゃあ、まずドライカレーから説明していきますね。この粉を使います」
ドライカレー組はオジサンを含めて四人。
ボンヘドさんからの手紙で今回のレッスンでは配合から教えて欲しいと書いてあったので、そこから説明を始めた。
ベビーカステラ組は離れているので私の手元は見えない。教えている事実と、カレーの香りと、料理人の反応を見させて興味を持たせるんだって。
オーソドックスなドライカレーを作り終わったら試食タイム。
嬉々としてアーロンさんも寄ってきた。このレッスンのために今日はお昼ご飯を食べなかったらしい。
「やはりセナのドライカレーが一番美味いな」
「それはどうも」
〈セナ! 我も食べたい!〉
「いいよ。パンもいる?」
勢いよく頷いたグレンにパンと一緒にカレーを渡してあげる。ナンもクラオルファミリー達のために量産したときに一緒に作っておいたんだけど、今回はアーロンさん達もいるためおあずけ。
じゃないと、ナンもレシピ登録! なんてことになりそう。他にもやりたいことがあるので、自分達で開発してくれたらいいなと思う。
試食は好評で、「美味しい」と褒めてもらえた。「アレンジ可能レシピだから自分が美味しいと思う野菜やお肉を入れてみて」と伝えると、帰るか迷っていた料理人さんの目付きが変わった。
試食が終わったら実際に作ってもらう。
カレー組に作ってもらっている間に、ベビーカステラ組のところへ。ちなみにオジサンはベビーカステラの説明も聞くらしい。
「お待たせしました。こちらは甘いものでベビーカステラです」
たこ焼きピックのレシピ登録を忘れていたので十本ほど作っていたんだけど、ベビーカステラ組はオジサンと見習い君含めて五人だった。
ベビーカステラ組はたこ焼き器を買わないとダメなんだけど、このたこ焼きピックはどうしようか……
餞別としてあげてもいいんだけど、モメそうな気がするんだよね……
カレーほど材料の説明に手間取らなくて済み、すぐに焼き始められた。
丸くするのに二つを合体させ、たこ焼きピックでクルクルと返していく。
焼きあがったら試食。これもアーロンさんとグレンが食べに寄ってきた。
たこ焼きピックを渡してベビーカステラ組にも作ってもらう。
カレー組の方に戻ると、早速質問が飛んできた。
一人の質問に答えるとあっちこっちから質問されててんやわんや。ちょこまかと部屋の中を走り回って教えるはめになった。
オジサンはカレーを作りながらベビーカステラも作っていて、私より器用だと思う。しかもカレーもベビーカステラも教えている人の中ではダントツに上手かった。
レッスンが終わったころには私は疲労困憊。
たこ焼きピックは商業ギルドにレシピ登録となり、私が作ったやつは回収になった。私的にはあげてもよかったんだけど、グレンいわく、私が作ったせいで私の魔力が込められているらしい。
新しいたこ焼きピックが出来上がるまでお城で食べられないことを知ったアーロンさんがぶぅたれてたけど、グレンに「目の前でセナがケガをさせられたのに何もしていなかったんだろ? むしろ殺されずに済んでよかったと思え」と威圧されて泣く泣く了承していた。
アーロンさんのせいじゃないし、あのときのグティーさんも故意じゃないのに……
疲れている私は帰りの馬車の中でウトウト。宿に着くころには爆睡していた。
感想 1,821
あなたにおすすめの小説
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
由香神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
お飾り継母のはずでしたが、冷酷侯爵家の幼女たちが離してくれません
五十嵐紫義母と異母妹に虐げられながら生きてきた子爵令嬢セシリアは、ある日突然、“氷の侯爵”と恐れられる辺境侯爵レオンハルトへ嫁ぐことになる。
それは愛のない政略結婚——のはずだった。
けれど侯爵家で待っていたのは、冷たい侯爵ではなく、母を亡くして寂しさを抱えた幼い姉妹だった。
「……おかあさま、いなくならない?」
夜泣きをする次女ミーナ。
無理に大人びようとする長女リリア。
セシリアは戸惑いながらも、温かな食事を作り、小さな手を握り、少しずつ姉妹との距離を縮めていく。
やがて冷え切っていた侯爵家に、笑顔とぬくもりが戻り始める。
しかしその裏では、亡き前妻の死にまつわる秘密と、侯爵家を狙う陰謀が静かに動き出していた——。
これは、“お飾りの継母”として嫁いだ女性が、不器用な侯爵と幼い姉妹に愛されながら、本当の家族になっていく物語。
悪役令嬢の幼女時代に戻ったので、お兄様を救います ~断罪回避より家族優先です!~
由香断罪され、すべてを失った悪役令嬢ルシア。
死んだはずの彼女が目を覚ますと、そこは五歳の頃の世界だった。
今度こそ病弱なお兄様を救い、家族の破滅を回避したい!
幼女になった元悪役令嬢が、前世の知識を武器に運命へ立ち向かう家族愛たっぷりの逆行ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
最強の魔王ですが、転生したら公爵家の愛され幼女でした ~平和に暮らしたいだけなのに、家族も王子様も聖獣も過保護すぎます~
由香かつて世界を統べた最強の魔王。
長き眠りの果てに目覚めると、公爵家の五歳の令嬢リリアーナへと転生していた。
今度こそ平穏な人生を送ろうと決めたのに、父も母も兄たちも超過保護。
さらには王子や聖獣まで集まり始めて……?
本人は世界最強なのに、なぜかみんなに守られてばかり。
愛され幼女が巻き起こす、勘違いだらけのほのぼのファンタジー!
旦那様には好きな人がいる
えくれあ私の旦那様である、テオドール・セルヴァン侯爵様には好きな人がいる。
それは、幼馴染であり、王太子妃でもあるマチルダ様だ。
お二人は、いつもとても仲睦まじいご様子で、そんな叶わぬお二人の恋をそっと見守るのが私の日常だった。
そんなある日、夜会にめったに顔を出さない王太子殿下に、ダンスに誘われて。それがきっかけで、私の日常は少しずつ変化し始めた。