文字の大きさ
大
中
小
163 / 502
9章
ベヌグの街
盗賊に遭遇してそれを生け捕りにして近くの街に送り届けたり、寄った街のギルドや領主にしばらく滞在して欲しいって言われたりと、いろいろあったけど……概ね順調に進んでいる。
ベヌグに近い街にも寄ってギルドに問い合わせして来ていないことを確認したし、ドナルドさんからの情報でもまだガルドさんはベヌグの街にいるらしい。
私達はもうすぐ日が暮れる夕方にベヌグの街に着いた。
ベヌグの街は、国境からほど近い。キアーロ国側とは違って隣国との境界には山が連なっていて、万里の長城みたいな壁はなかった。周りは草地で王都周辺みたいに荒野じゃない。
宿を手配してくれると兵士さんが言うのを断って、私達はそのまま冒険者ギルドへ。
受け付けのお兄さんにガルドさんのことを聞くと、なぜか応接室に案内された。
待っている私達の前に現れたのは背が高くてガタイのいいおじいちゃんだった。二メートルは軽く超えていると思う。
「すまん、待たせたの。ワシはこのギルドのマスター、ネルピオじゃ」
〈ほう。巨人族か〉
「よくわかったの。とは言っても血は薄いがな。して、お前さん達の名前を聞いてもよいかの?」
「私はセナ。こっちがグレンでこっちがジルだよ」
私が紹介すると、「やはりそうじゃったか」と呟いた。
そんな神妙な顔される覚えはないんだけど、歓迎はされていないっぽい? 兵士さん達はウェルカムムードだったんだけど……
「黒煙のパーティは何かしたのか? ワシには優しい男にしか見えなんだが」
「へ? どういうこと?」
「担当した職員の話では、ギルドのカウンターでお前さんに類似している特徴の少女のことを聞かれた。名前は知らんと言っておったらしいから報告するか迷ったんじゃ。そしたら王都からの連絡で、街を出そうなら知らせろと言われての……手配でもされているのかと思うたが、捕まえろとは言われておらん。街での動向も探ったが怪しい素振りは見せん。ギルド員には“高ランク冒険者だから街から旅立ちそうな報告しろ”としか言うておらんから、こちらは怪しまれておらんとは思うが……」
私が説明を頼まなかったせいで、とんでもない誤解が生まれていた。
ガルドさん、マジで本当にごめんなさい!!!
「違う、違う!! ガルドさん達、黒煙のパーティは私の命の恩人なの!」
「恩人?」
「そう!」
呪淵の森で助けてもらったこと、私が記憶喪失でステータスがおかしかったこと、魔物に襲われたときに離れ離れになってしまったことをちょっとボカしながら説明した。
「そうじゃったのか……」
「誤解させてごめんなさい。行動を制限させるのも悪いし、アーロンさんの名前出したら大事になっちゃう気がして伝えるの止めてもらったの……」
「アーロン陛下か……なるほどの。そうじゃの。その気持ちもわかる。じゃが、本人達に伝えずともギルドだけに伝えるのも手じゃぞ。まぁ、今回はお前さんのことも通達がきていたから、お前さんを助けたとなれば英雄扱いになったかもしれんがな。お前さんはこの国のギルドでは有名じゃ」
「ごめんなさい」
「よいよい。ワシとサブマスしか知らんからの。ワシの考えすぎでよかったわい。それに……お前さん会うのがちょっと怖いんじゃろ?」
「うっ……」
「ホッホッホ。伊達に生きておらんからの。悩め、悩め。若いっていいのぉ。ワシのことはじいでよいぞ」
「ネルピオ爺?」
「ホッホッホ。うむうむ。ひ孫のようじゃ」
ネルピオ爺は連絡不足の私を怒るワケではなく、朗らかに笑った。
ネルピオ爺が言うには、三、四日に一度ガルドさんのみが街に訪れて簡単な討伐依頼を受けているらしい。
パーティへの指名依頼もあったらしいんだけど、ガルドさんは「今は受けられない」と断ったそう。パーティ内でのケンカなんかはよくあることだからと詳しくは聞かなかったらしい。
「街には泊まってないの?」
「動向を探ったときは、泊まったり泊まらなかったりじゃな。泊まらなくても次の日には街に来ていたりしたからの……二日前に来たからそろそろ来る頃じゃと思う」
「じゃあ今日は街に泊まろうかな? さっき兵士さんが宿を手配してくれるって言ってくれたのを断っちゃったんだよね」
「ワシが紹介してもよいが、兵士が言ったのならその兵士に頼んだ方がよさそうじゃの。おそらく陛下からのお達しじゃろうから」
「わかった」
兵士さんの好意を無駄にしないようにと、ネルピオ爺が気をきかせてくれた。
何か情報があったら教えてくれることを約束して、私達がお暇しようとすると、引き留められた。
「そうじゃ、そうじゃ。薬草を持ってたら納品してくれんかの?」
「なんの薬草?」
「サヴァ草とジメ草とクロバ草が足りないんじゃ」
「クロバ草は数が少ないかな。他二つは持ってるから大丈夫だよ。どれくらいいる?」
「お前さんの薬草はS判定と聞いておるからの……50本とかあるかの?」
「大丈夫だよ」
各薬草を50本ずつ出すとものすごく驚かれた。二種合わせて50本のつもりだったらしい。しかもキヒターが収穫してくれたやつだから普通の薬草より大きいため、特S判定だと言われた。
買い取り金額の都合上20本ずつになり、残りは回収することになった。
◇
ギルドを出て、先程宿の手配をしてくれると言っていた兵士さんに宿の手配をしてもらった。
宿は貴族が泊まりそうなくらい上流階級向けの宿に見えたけど、お客さんは冒険者が多いらしい。Cランク以上の冒険者御用達の宿だと兵士さんから説明された。衛生的で特に女性ウケがいいんだそう。
宿はメイド服を着た猫族と思われる少年と少女がパタパタと動き回っていた。
黒猫少年と三毛猫少女っぽくて大変可愛らしい!
可愛いさに悶えながら応対を期待していたのに、私達の応対は奥から出てきたおばさまだった。内心ガックリしちゃったのは言うまでもない。
部屋食が可能らしいのでお願いして、私達は部屋で明日からどうするかを話し合う。
「明日は街の中プラプラしようか?」
〈宿でギルドからの連絡を待たなくていいのか?〉
「それも考えたんだけど、みんなヒマでしょ? だから朝、昼、夕方ってギルドに顔出そうかなって思って。それとも自由行動にしようか?」
「僕はセナ様と共にいたいです」
〈我も一緒にいる。(そのガルドというやつも我らが見極めねば)〉
「ん? グレン、ごめん。小さくて聞き取れなかった」
〈まだよくわからん街だからな。我らが守ってやる〉
「ふふっ。ありがとう。みんな一緒だと心強いよ」
そんな危険はないと思うんだけど、振り回してる私を心配してくれているみんなは優しい。
(その優しさに甘えすぎないようにしないとね)
ご飯を食べ終わると早々に、グレンに抱っこされてベッドに連れていかれた。
ガルドさん達のことを考えて眠らなさそうだと思われたらしい。
グレンとジルに挟まれて、胸元にはクラオルとグレウス。もうすぐ会えるかもしれないとソワソワしていたのに、優しい暖かさに包まれてすぐに眠りに落ちてしまった。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。